日本には3月決算の企業がたくさんあります。そのため、3月に株主優待の権利確定日を設定している企業が非常に多いです。株主優待を目的に株取引をしている人にとっては、3月はもっとも気合いの入る月なのです。

そこで今回は、3月につなぎ売り(クロス取引)をするときの注意点と私が厳選したおすすめ銘柄を紹介します。あなたが株主優待品を選ぶときに参考にしてみてください。

※ つなぎ売り:株式の「現物買い」と「空売り」の両方を注文すること。現物買いで株主の権利を確保し、「空売り」で株価の値下がりによる損失をカバーできるので、実質的に手数料のみで株主優待を入手できる。詳細は下記の記事をご覧ください。

株主優待をタダ取り!つなぎ売り(クロス取引)の方法と注意点


つなぎ売り(クロス取引)をするときの注意点

つなぎ売りにはいくつかの注意点があります。主な注意点は「逆日歩(ぎゃくひぶ)の発生に注意する」「手数料よりも価値のある株主優待を選ぶ」です。

また、3月特有の注意点として「事前準備が必要」「月末以外に権利確定日を設定している企業がある」などがあります。以下、順に説明していきます。

逆日歩の発生に注意する

逆日歩とは「空売りをしたときに発生する可能性がある追加の手数料」です。空売りをする人があまりに多いときに発生することがあります

逆日歩は、「いつ」「どれくらいの金額」で発生するかわかりません。そのため、場合によっては大きな損失を招くことがあります。

例えば、過去に音通(銘柄コード:7647)を空売りした人に90,000円の逆日歩が課されました。音通の株主優待は、3,000円相当の商品(そうめんギフトなど)なので、「90,000円の逆日歩を支払って3,000円の商品を手に入れた」という状況になったのです。

このような事態を避けるためにも、逆日歩には細心の注意を払う必要があります。そして、逆日歩を避けるためには、一般信用売り制度信用売りの特徴を把握しておく必要があります。なぜなら、空売りをするときは「一般信用売り」と「制度信用売り」のどちらかを選ぶことになるからです。

一般信用売り 制度信用売り
メリット 逆日歩が発生しない <一般信用売りのデメリットがない>
・どの証券会社でも利用できる
・空売りできる銘柄の種類が多い
・空売りできる注文数に限りがない
・貸株料(手数料の一種)が一般信用売りよりも安い
デメリット <制度信用売りのメリットがない>
・一般信用売りができる証券会社はSBI証券など数社に限られる
・空売りできる銘柄の種類が少ない
・空売りできる注文数に限りがある
・貸株料が制度信用売りよりも高い
逆日歩が発生するリスクがある

「一般信用売り」で空売りをすれば、確実に逆日歩の発生を回避できます。そのため、上述のようなデメリットはありますが、初心者には一般信用売りを強くおススメします。

一方、空売りに慣れている人は制度信用売りを利用しても構いません。

ただ、制度信用売りをするときは貸借倍率(信用買い残高と信用売り残高の比率)を見て、空売りをしている人が少ないことを確認するようにしてください。企業規模なども影響するため一概にはいえませんが、貸借倍率が3.00以上なら逆日歩が発生するリスクは低いでしょう。

手数料よりも価値の高い株主優待を選ぶ

つなぎ売りをすると「現物買い」と「空売り」の両方の売買手数料がかかります。そのため、株主優待の価値がある程度高いものを選びましょう。ちなみに、私は以下の基準で銘柄を選ぶようにしています。

  • 基準①:株主優待の価値が2,000円以上
  • 基準②:株主優待の価値が購入価格の1%以上

※ 両方を満たせば「お得」、片方のみ満たせば「まあまあお得」と判断しています

「株主優待を入手したけど手数料のほうが高かった」ということにならないよう、どちらかの基準を満たす銘柄を選ぶようにしましょう。

3月特有の注意点:対象企業が多いため事前準備が必要

3月に株主優待の権利確定日を設定している企業は700社以上あります。つなぎ売りが可能な企業に絞っても550社以上です。このように対象企業が多いため、以下のような事前準備をしておきましょう。

早めに銘柄選定を行う
対象企業が多いため、3月は他の月に比べて銘柄選定に時間がかかります。なるべく早めに候補となる銘柄を選びましょう。

資金を用意しておく
株主優待があまり設定されていない月(4月や5月など)の場合は、「資金はあるけど、魅力的な株主優待がない」という状況になることがあります。

しかし、3月はそのような状況になることはありません。むしろ、「ほしい株主優待がたくさんあるけど、資金が足りない」という状況になります。さまざまな株主優待を入手したい人は、事前に資金を準備して証券口座に入金しておきましょう。

手数料プランを変更しておく
証券会社によっては、「1回の注文ごとに手数料を支払うプラン」と「1日定額の手数料プラン」の2つのプランが用意されています。そして、1日の注文金額が大きい場合は「1日定額プラン」のほうが安くなることが多いです。

ただ、注文金額と手数料の関係は証券会社によって異なります。あなたが使用している証券会社の手数料プランを確認した上で、必要に応じて事前にプランを変更しておくとよいでしょう。

3月特有の注意点:月末以外に権利確定日を設定している企業がある

ほとんどの企業は権利確定日を月末に設定しています。そのため、その3営業日前が権利付き最終日(この日に株を保有しておけば株主優待をもらえる)になります。通常は、月末の26日前後が権利付き最終日になります

ところが、下記のように月末以外に権利確定日を設定している企業があります。

銘柄 権利確定日 優待内容
カワチ薬品(2664) 3月15日 5,000円分の買い物優待券
マルサンアイ(2551) 3月20日 1,500円相当の自社製品(豆乳、味噌など)
アジュバンコスメジャパン(4929) 3月20日 5,000円相当の自社商品(シャンプー、トリートメントなど)
石塚硝子(5204) 3月20日 1,000円分のクオカード
エムケー精工(5906) 3月20日 長野リンデンプラザホテル無料宿泊券(2枚)
アルインコ(5933) 3月20日 1,000円分の全国共通商品券(VJAギフトカード)
ヤマナカ(8190) 3月20日 1,500円相当の自社商品(食料品)
セキド(9878) 3月20日 買い物割引券(5%割引×5枚)
ハチバン(9950) 3月20日 2,500円分の優待食事券

これらの株主優待がほしい場合は、3月15日または20日の3営業日前に株を保有しておかなければなりません。間違って3月26日頃に株を買っても株主優待はもらえないので、注意してください。

3月のおすすめ銘柄

最後に、3月のおすすめ銘柄を紹介します。

食品や優待食事券など

■ カッパ・クリエイト(7421)

優待内容 3,000円分の株主優待ポイント
私の取得歴 なし
コメント ステーキ店「宮」や居酒屋「甘太郎」などのコロワイドグループ店舗で「1ポイント=1円」として使える

■ ドウシシャ(7483)

優待内容 2,000円相当の手延べそうめん
私の取得歴 あり
コメント 夏前に届くので、時期的にもちょうどよい

■ アイコム(6820)

優待内容 3,000円相当のグルメギフト
私の取得歴 あり
コメント フルーツがメインのカタログギフト。いずれのフルーツもお得感満載だったので、私の妻は大喜びでした。

■ 松屋フーズ(9887)

優待内容 優待食事券10枚
私の取得歴 なし
コメント 「松屋」「松のや」「松乃家」「チキン亭」で使える食事優待券。主要メニューから1品選択できる。

■ TSテック(7313)

優待内容 3,000円相当のグルメギフト
私の取得歴 あり
コメント 私はアイスクリームセットを選んびました。子供も喜んで食べてました。

■ 伊藤忠食品(2692)

優待内容 3,000円相当のセレクトギフト
私の取得歴 なし
コメント 50種類の食品の中から選べる

■ 伊藤ハム米久HD(2296)

優待内容 5,000円相当の自社グループ商品(ハム詰め合わせなど)
私の取得歴 あり
コメント 大きなハムの詰め合わせが届くので、料理が少し大変。事前に奥様に相談することをおススメします。

カタログギフト

■ エクセディ(7278)

優待内容 3,000円相当のカタログギフト
私の取得歴 なし
コメント 食品や日用品などさまざまな商品の中から選べる

クオカードや商品券など

■ プレサンスコーポレーション(3254)

優待内容 2,000円分のVisaギフトカード
私の取得歴 なし
コメント 株価が安いので優待利回り(株価に対する優待の価値)は高い

■ タチエス(7239)

優待内容 2,000円分のクオカード
私の取得歴 あり
コメント クオカードは人気があるので、一般信用売りでつなぎ売りをする場合は早めに注文したほうがよい(一般信用売りには空売りできる注文数に限りがあるため)

■ ユニゾホールディングス(3258)

優待内容 3,000円分のUCギフトカード
私の取得歴 なし
コメント 株価が安いので優待利回りが高い

■ 興銀リース(8425)

優待内容 3,000円分の図書カード
私の取得歴 あり
コメント 株価はあまり高くないので、普段Amazonで本を買っている人にもおススメ

■ JSP(7942)

優待内容 3,000円分のクオカード
私の取得歴 あり
コメント クオカードは人気があるので、一般信用売りでつなぎ売りをする場合は早めに注文したほうがよい。私はつなぎ売りではなく現物株を保有して取得したことがあります。

■ 全国保証(7164)

優待内容 3,000円分のクオカード
私の取得歴 あり
コメント クオカードは人気があるので、一般信用売りでつなぎ売りをする場合は早めに注文したほうがよい

その他(日用品や航空券など)

■ エレコム(6750)

優待内容 ・1,000円分のクオカード
・2,000円相当の自社製品(PCサプライ製品、デジタル機器関連製品)
私の取得歴 あり
コメント クオカードだけでなく自社製品ももらえるのでかなりお得。私は夜にランニングをすることがあるので、「ネックストラップ付きハンズフリーライト」を選んびました。

■ 日本航空(9201)

優待内容 ・株主優待券(国内線50%割引)
・JALパックツアー7%割引券
私の取得歴 あり
コメント とても人気のある株主優待。早めにつなぎ売りをしないと一般信用売りができなくなってしまう。

■ ANAホールディングス(9202)

優待内容 ・株主優待券(国内線50%割引)
・自社グループ優待券(ホテル宿泊料やツアーなどの割引券)
私の取得歴 あり
コメント とても人気のある株主優待。早めにつなぎ売りをしないと一般信用売りができなくなってしまう。

■ ソフトバンクグループ(9984)

優待内容 ・自社携帯電話、タブレット利用料金6ヶ月割引
・インターネット基本料金6ヶ月間無料など
私の取得歴 なし
コメント ソフトバンクユーザーにはかなりお得

■ オリエンタルランド(4661)

優待内容 1デーパスポート(定価7,400円)
私の取得歴 あり
コメント ディズニーリゾートで使える1デーパスポート。株価が高いのである程度資金が必要だが、とてもお得感のある株主優待。

まとめ

  • つなぎ売りをするときは「逆日歩が発生しないように空売りする」「手数料よりも価値のある株主優待を選ぶ」などに注意する。
  • 3月特有の注意点として、「対象銘柄が多いので事前準備が必要」「月末以外に権利確定日を設定している企業がある」などがある。

今回は、3月につなぎ売りをするときの注意点とおすすめ銘柄を紹介しました。3月は株主優待を設定している企業が非常に多いです。あなたが求める株主優待を配布している企業もあるはずなので、ぜひあなたも3月のつなぎ売りに挑戦してみてください。