投資信託の購入方法は「積立投資」と「一括投資(一括購入)」に分けられます。

積立投資は、毎月一定の金額をコツコツと投資するスタイルです。購入時期を分散することによって、高値で買ってしまうリスクを下げることができるので、積立投資は「投資経験があまりない人」や「長期で運用できる人」にベストの投資方法です。

一方、一括投資の場合は、一度にまとまったお金を投資信託に投じます。そのため、「ある程度投資経験がある人」や「効率よく運用するために多少のリスクは許容できる人」に適しています。

今回は、投資信託に一括投資するときの注意点について解説していきます。一括投資は積立投資に比べてリスクの高い投資方法なので、大損しない商品を選ぶことが重要です。

一括投資するときの注意点

冒頭に述べたとおり、一括投資は積立投資よりもリスクの高い投資方法です。そのため、投資経験が浅い人は一括投資ではなく積立投資を選択するようにしてください。

一方、投資経験のある人で多少のリスクを許容できる人は、一括投資にチャレンジしてもよいでしょう。積立投資に比べて、最初から大きな資金を投資できるので、運用効率は一括投資のほうが高くなります。

ただ、一括投資するときは「金融ショックが起こっても暴落しない仕組みがあるか?」という視点で商品を選ぶ必要があります。つまり、一括投資をする際は、より慎重に投資先の商品を選ばなければならないのです。

■ 積立投資の場合は、基準価額(投資信託の価格)が暴落しても気にしない
積立投資は、毎月淡々と一定の金額を投資するスタイルです。そのため、基準価額が暴落しているときは、むしろ「安く買えるチャンス」なのです。この時期に安く買うことが将来の大きなリターンにつながるため、積立投資に関しては、「暴落しない仕組み」は必要ありません。

ただし、長期的に資産価値が上昇する投資信託(国際分散投資が可能な投資信託など)を選んで積立投資する必要があります。

それでは、「暴落しない仕組み」にはどのようなものがあるのでしょうか? 一例として、私が実際に一括投資した投資信託の特徴を以下に示します。

<私が一括投資した投資信託>

  • 投資信託①:キャッシュポジンションを50%まで取ることができる(株価の下落局面で現金の保有比率を上げられる)
  • 投資信託②:日経平均先物などを売り建てできる(株価の下落局面でも利益を得られる)
  • 投資信託③オルタナティブ投資を行う(株や債券以外のものにも投資する)
  • 投資信託④:先進国の大型ディフェンシブ株(景気変動の影響を受けにくい株)へ投資する


④に関しては、金融ショックが起こると基準価額が大きく下落する可能性があります。しかし、①~③を組み合わせることによって、全体として資産価値が目減りしくい組み合わせになっていると思います。

今回は、これらのうち「③オルタナティブ投資」について解説していきます。

オルタナティブ投資とは

オルタナティブ(alternative)は「代わりのもの」「代替」という意味の英単語です。この意味から派生して、オルタナティブ投資は「株式や債券などの伝統的な投資対象とは異なるもの(代わりのもの)に投資すること」を意味します。

具体的な投資対象は以下のとおりです。

<オルタナティブ投資の投資対象>

  • REIT(不動産投資信託):不動産を証券化して売買できるようにしたもの
  • 実物不動産
  • プライベート・エクイティ:未上場企業の株式のこと
  • ヘッジファンド:富裕層の資金を運用する投資信託。手数料や成功報酬が高いかわりに、どのような市場環境でも利益を上げることが求められる。
  • コモディティ(商品):原油、金、トウモロコシ、大豆など
  • ワインや美術品

なかには、聞いたことのない投資先も含まれていると思います。また、私も含めて多くの人は、プライベート・エクイティ(未上場株)やヘッジファンドなどに通常は投資できません。

ただ、「オルタナティブ投資を行う投資信託(オルタナティブファンドといいます)」を購入すれば、これらの投資先に間接的に投資することができます。このように、オルタナティブファンドには「一般の個人投資家が投資できないものに投資できる」という特徴があります。

そして、株や債券以外の複数の投資対象に分散投資できるので、株価が低迷している時期でも、その影響をあまり受けずに利益を追求することができるのです。

アメリカの名門大学におけるオルタナティブ投資

オルタナティブ投資は日本ではあまり馴染みがありませんが、海外ではそれほど珍しくありません。特に、アメリカの大学では積極的にオルタナティブ投資が行われています。

イェール大学やスタンフォード大学などの名門大学は、卒業生や関係者から寄付金を集めています。そして、オルタナティブ投資を中心とした資産運用を通じて、これらの資金を増やして大学運営に回しているのです。

米国のエンダウメント


実際、これらの大学は長年に渡って非常に良好な運用成績を残しています。

イェール大学が2017年に発表した資料には、イェール大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)、スタンフォード大学などの運用成績が記載されています。それによる、これらの大学の過去20年間における年間平均利回りは10%を超えているのです(参考資料:イェール大学資料)。

オルタナティブ投資は日本ではあまり知られていませんが、アメリカの名門大学では大きな実績を残している投資手法であることを理解しておいてください。

オルタナティブファンドの例と注意点

ここまでの説明で、投資信託の一括投資先としてオルタナティブファンドが魅力的であることがわかったと思います。

そこで、オルタナティブファンドの例をいくつか紹介しておきます。

<オルタナティブファンドの例>

  • GCIエンダウメントファンド [GCIアセット・マネジメント]
  • 国際オルタナティブ戦略QTX-ウィントン・アルファ・インベストメント・オープン [三菱UFJ国際投信]
  • ダイワ/JPMオルタナティブ戦略オープン(ダイワ投資一任専用) [大和投資信託]

※ [ ]内は運用会社
※ 私はGCIエンダウメントファンド(安定型)に投資しています
※ ダイワ/JPMオルタナティブ戦略オープンは証券会社と投資一任契約を結ばないと買えません

オルタナティブファンドの例を紹介しましたが、「ここで紹介されているから」という理由だけで、これらの投資信託は買わないようにしてください。

資産運用では、「よくわからないものには投資しない」という考えが重要です。オルタナティブファンドの仕組みは複雑なので、投資する際は、ファンドの仕組みをしっかりと理解して納得した上で投資するようにしてください。

また、オルタナティブファンドは仕組みが複雑なので、他の投資信託と比べて手数料(信託報酬)が高くなりやすいです。そのため、実際に投資するときは、手数料にも注意して商品を選ぶようにしましょう。

また、オルタナティブファンドはあくまで「投資信託に一括投資する際に、資産全体の値動きを安定させるためのもの」という位置づけです。資産運用の中心となる投資対象は、基本的には「株・債券・不動産」の3つだけであることも合わせて理解しておいてください。

まとめ

  • 投資信託に一括投資するときは、「暴落しない仕組みがあるか?」という観点で商品を選ぶ必要がある。
  • オルタナティブ投資とは「株や債券以外のもの(不動産やヘッジファンドなど)に投資すること」である。株以外のものに投資するので、株式相場の影響を受けにくいという特徴がある。
  • 米国の名門大学では、積極的にオルタナティブ投資を行うことで、長年にわたって良好な運用成績を残している。
  • オルタナティブ投資の仕組みは複雑なので、投資信託の中身を理解できない場合は投資しないほうがよい。

今回は、オルタナティブ投資を中心に、「投資信託に一括投資するときの注意点」について述べてきました。オルタナティブ投資であれば、株式相場の影響をあまり受けずに運用することができます。安定的に資産運用を行うためにも、このような投資方法があることを知っておいてください。