あなたは「ブル型ファンド」や「ベア型ファンド」という投資信託を聞いたことがあるでしょうか?

ブル(Bull)は「雄牛(おうし)」という意味の英単語です。雄牛が角を下から上へ突き上げる仕草から、「上昇相場」や「強気」という意味で使われます。ブル型ファンドは、上昇相場で大きな利益を得られる投資信託のことです。

また、ベア(Bear)は「熊」という意味の英単語です。熊が前足を振り下ろす仕草や背中を丸めている姿から、「下落相場」や「弱気」という意味で使われます。ブル型ファンドとは反対に、ベア型ファンドでは下落相場で大きく儲けることができます

一般的に、これらの投資信託は短期の運用に向いています。逆に、長期で保有すると損をする可能性があります。

そこで今回は、ブル型ファンドおよびベア型ファンドの特徴と長期運用に適していない理由について解説していきます。長期で安定的に資産運用をしたい人は、これらのファンドを買わないように気をつけましょう。

ブル・ベア型ファンドの特徴

上述のとおり、「ブル型ファンド=上昇相場で儲けられる投資信託」、「ベア型ファンド=下落相場で儲けられる投資信託」です。通常、基準としている株価指数に対してレバレッジをかけた値動きをするように設計されています

例えば、「楽天日本株トリプル・ブル」という投資信託があります。これは、日本の株式市場全体の約3倍の値動きをするように設計された投資信託です。

仮に、東証株価指数(TOPIX)が前日比1%上昇した場合、楽天日本株トリプル・ブルは約3%上昇します。逆に、TOPIXが前日比1%下落した場合、楽天日本株トリプル・ブルは約3%下落します。上昇相場で大きく儲けられる反面、下落相場では大きく損をしてしまうのです。

また、ベア型ファンドの例として「楽天日本株トリプル・ベアⅢ」という投資信託があります。これは、日本の株式市場全体の約マイナス3倍の値動きをするように設計された投資信託です。

仮に、東証株価指数(TOPIX)が前日比1%下落した場合、楽天日本株トリプル・ベアⅢは約3%上昇します。逆に、TOPIXが前日比1%上昇した場合、楽天日本株トリプル・ベアⅢは約3%下落します。下落相場で大きく儲けられる反面、上昇相場では大損をしてしまうのです。

このような特徴があるため、ブル・ベア型ファンドはハイリスク・ハイリターンの投資信託といえます。

ブル・ベア型ファンドが長期運用に適していない理由

冒頭に述べたように、ブル・ベア型ファンドは長期の資産運用には向いていません。それにはさまざまな理由がありますが、その中でも代表的な3つの理由を以下に紹介します。

上昇・下落を繰り返すと基準指数よりも運用成績が悪くなる

上述のとおり、ブル・ベア型ファンドは基準の株価指数に対して2倍や3倍の値動きをします(レバレッジをかけないものもあります)。ただ、この倍率が当てはまるのは、前日と比べたときだけです。2日以上保有すると、しだいにこの倍率からかけ離れていきます。わかりにくいと思うので、以下の例を見てください。

仮に、TOPIXが4日間で「前日比 +5% → -4.7% → +5% → -4.7%」と推移したとしましょう。このとき、TOPIXに対して3倍の値動きをするブル型ファンドとベア型ファンドは以下のように推移します。

  • 3倍のブル型ファンド:前日比 +15% → -14.1% → +15% → -14.1%
  • 3倍のベア型ファンド:前日比 -15% → +14.1% → -15% → +14.1%



この推移を見ると、「最終的に3倍ブルは少し値上がりし、3倍ベアは少し値下がりする」と思うかもしれません。しかし、最初の値を100として、各比率を当てはめて計算すると、実際は以下のような値動きをします。

TOPIX 3倍ブル 3倍ベア
0日目 100 100 100
1日目 105 115 85
2日目 100.1 98.8 97.0
3日目 105.1 113.6 82.4
4日目 100.1 97.6 94.1

ブル・ベアファンドの値動き(ボックス相場)

まずは4日目に着目してください。4日目のTOPIXの値(100.1)は0日目とほぼ同じです。ところが、3倍ブルは97.6(2.4%下落)、3倍ベアは94.1(5.9%下落)となり、いずれも損をしていることがわかります。基準指数よりも運用成績が悪くなっているのです。

ただ、「3日目の3倍ブルはTOPIXよりも運用成績がいいじゃないか」と思う人がいるかもしれません。たしかに運用成績はいいです。しかしその上昇率は13.6%です。TOPIX上昇率(5.1%)の3倍である15.3%に届いていません。さらに、3倍ベアの下落率(-17.6%)は15.3%を超えてしまっています。

このように、上昇や下落を繰り返す相場(ボックス相場)では、ブル・ベア型ファンドは思ったような運用成績を得られません(そういうものだと認識してください)。思ったとおりに値が動くのは「レバレッジなしのブル型(=基準指数そのもの)」だけなのです。

通常、株価は長期的に上昇と下落を繰り返しながら推移します。そのため、ブル・ベア型ファンドは長期の運用に適していないのです。

株価指数先物取引のロールオーバーの影響を受ける

ブル・ベア型ファンドは主に株価指数先物取引を利用して運用されています。これも長期運用に適していない理由の一つです。

先物取引とは、「将来、〇〇円で商品Aを買います(or 売ります)」と取引時に決めることです。そして、取引時に決めた価格(〇〇円)と将来の実際の価格との差額が利益になったり損失になったりします。

ブル・ベア型ファンドで問題が発生するのは、将来(=期限)が近づいてきたときです。例えば、日経平均株価の先物(日経225先物)であれば、3月、6月、9月、12月の第2金曜日が「将来(=期限)」とあらかじめ決められています。期限になると、取引時に決めたとおりに決済しなければなりません。

仮に、「2019年3月が期限の先物」を保有していたとします。もし決済しないのであれば、2019年3月の第2金曜日までにこの先物を売って、「2019年6月以降が期限の先物」を買いなおす必要があります。これをロールオーバーといいます。

長期でブル・ベア型ファンドを保有した場合、ファンドマネージャーがあなたの知らないうちにロールオーバーを行います。そして、期限が遠い先物の方が割高な場合が多いため、ロールオーバーを繰り返すと損をすることになるのです。

このような理由から、ブル・ベア型ファンドに限らず、株価指数先物が組み込まれている投資信託は長期の運用に適していないのです。

手数料が高い

ブル・ベア型ファンドは投資信託なので、購入時手数料(販売手数料)や運用管理費用(信託報酬)などの手数料がかかります。そして、これらの手数料が他の投資信託に比べて割高な場合が多いです。

例えば、上記の「楽天日本株トリプル・ブル」の場合、楽天証券で購入すると2.1%の販売手数料がかかります。さらに、信託報酬は年間1.0044%かかります。世の中には、「販売手数料が無料、信託報酬が0.27%」のような手数料の安い投資信託がたくさんあります。これらに比べると明らかに割高であることがわかります。

以上のような理由から、ブル・ベア型ファンドは長期の資産運用には適していません。ただ、短期の運用においてはメリットがあります。

相場が一方向に動くときはメリットがある

ブル・ベア型ファンドは相場が上昇 or 下落のいずれか一方向に動くときに大きなメリットがあります。

仮に、TOPIXが3日連続で前日比+5%で推移したとします。このとき、3倍ブルは3日連続で前日比+15%で推移します。また、3倍ベアは3日連続で前日比-15%で推移します。

最初の値を100として、各比率を当てはめて計算すると以下のような値動きになります。

TOPIX 3倍ブル 3倍ベア
0日目 100 100 100
1日目 105 115 85
2日目 110.3 132.3 72.3
3日目 115.8 152.1 61.4

ブル・ベアファンドの値動き(一方向)

3日目のTOPIXの値は115.8なので、0日目と比べると15.8%の上昇です。ところが、3倍ブルは152.1なので52.1%の上昇です。47.4%(15.8%の3倍)よりも大きく上昇しているのです。また、3倍ベアは61.4なので38.6%の下落です。下落率は47.4%以下に収まっています。

このように、相場が一方向に動くとき、ブル・ベア型ファンドは「想定以上に儲かる or 想定より損失を抑えられる」というメリットがあるのです。

数日間の短期であれば、相場は一方向に動き続けるときがあります。そのようなとき、ブル・ベア型ファンドは投資家の武器になり得るのです。

まとめ

  • ブル・ベア型ファンドは長期の運用には適していない。
  • その主な理由は、「ボックス相場で運用成績が悪くなる」「株価指数先物のロールオーバーの影響を受ける」「手数料が高い」である。
  • ブル・ベア型ファンドは、相場が一方向に動くときに大きなメリットがある。

今回は、ブル・ベア型ファンドについて詳しく解説してきました。世の中には、さまざまなブル・ベア型ファンドがありますが、基本的にはすべて短期運用のための商品です。長期で安定的に資産を形成していきたい人は、これらの投資信託を利用しないようにしてください。