あなたはP・F・ドラッカーという人を知っているでしょうか? ドラッカーは世界的に有名な経営学者です。彼の書籍「現代の経営(上)」のp,115には以下のような文章があります。

「目標の達成に関しては、目先すなわち2、3年先と、その先の将来すなわち5年以上先との間のバランスを考える必要がある」

この言葉は、企業経営における目標達成の考え方を示しています。ただ、これを読んだとき、私は「資産運用におけるコア・サテライト戦略と同じ」と感じました。

資産運用では、企業経営と同じように「短期的な視点」と「長期的な視点」を持つことが重要です。そして、その考え方こそコア・サテライト戦略なのです。

そこで今回は、コア・サテライト戦略について詳しく解説していきます。このサイトもコア・サテライト戦略にしたがって情報発信をしているので、その概要をしっかりと学び取ってください。

コア・サテライト戦略のイメージ

まずは下の図でコア・サテライト戦略のイメージをつかんでください。

コア・サテライト戦略のイメージ

地球のまわりを月が回るように、コア(核)の周りをサテライト(衛星)が回っているイメージです。

サテライトは、株式や債券などを利用して積極的な資産運用を行うことです。一方、コアは「長期・分散・積立投資」が可能な金融商品を利用して安定的な資産運用を行うことです。

一般的に「資産運用」というと、サテライトの部分をイメージする人が多いです。逆に、コアの部分に関してはあまり知られていません。このことは、金融庁の金融レポート(平成28年9月)にも記されています。

ただ、資産運用を行う上では、サテライトだけでなくコアも組み合わせることが重要です。以下、サテライトとコアについて解説しながら、コアの重要性を述べていきます。

コア・サテライト戦略における「サテライト」

上述のとおり、サテライトでは積極的な資産運用を行います。国内株式や外国債券など、特定の企業や国を選んで投資するのです。

ある程度リスクを覚悟した上で大きなリターンを目指すことから、サテライトは「攻めの投資」と表現されます。つまり、ハイリスク・ハイリターンの投資です。

また、サテライトでは資産運用における知識やスキルが必須になります。私は国内株式に投資することが多いですが、何年もかけて投資に必要な知識を身に付けてきました。サテライトはハイリスク・ハイリターンなので、十分な知識やスキルがないと大きな損失を抱える可能性があるのです。

一方、運用成績が良ければ短期間で大きなリターンを得ることができます。数ヶ月間で投資先の企業の株価が2倍になることも珍しくありません。

このように、ある程度のリスクを覚悟した上で、積極的な運用を行うことが「サテライト」なのです。

コア・サテライト戦略における「コア」

コアの部分では、サテライトとは違って安定的な資産運用を行います。大きなリターンを目指さない代わりに、大きく損をするリスクを避けることから、「守りの投資」と表現されます。つまり、ローリスク・ローリターンあるいはローリスク・ミドルリターンの投資です。

そして、コアの基本となる考え方が「長期・分散・積立投資」です。

世界経済は今後も成長することが予想されています。そのため、世界のさまざまな金融商品(株、債券、不動産など)に10年以上の長期で分散投資をすることで、安定的に利益を得ることができるのです。

また、積立投資を行うことにより、投資する時期を分散させることも重要です。投資時期を分散させることにより、高値で金融商品を購入するリスクを下げるのです。

このように、コアでは「長期・分散・積立投資」が基本となります。以上をまとめると、コア・サテライト戦略による資産形成は、下図のようになることがわかると思います。

コア・サテライト戦略による資産形成

コアの資産運用はおもしろくない

コアでは株式投資のように個別の銘柄を分析して売買を繰り返すことはありません。一度、金融商品やサービスを選んでしまえば、あとは数十年にわたってほぼ放置するだけだからです。

私も複数の金融商品やサービスを利用してコアの資産運用を行っています。ただ、普段は何もしていません。定期的に運用成績を確認するくらいです。

このように、コアの資産運用では基本的に投資家は何もしません。そのため、「コアはおもしろくない」という人もいます。

つまり、「予想が当たった」「自分の分析が正しかった」というサテライト特有の喜びを味わうことがないのです。淡々と機械的に投資し続けることがコアの特徴なのです。

コアに適した金融商品やサービス

コアは基本的にほったらかしの資産運用ですが、当然、最初に金融商品やサービスを選ぶ必要があります。

「長期・分散・積立投資」が可能な金融商品であればどのような金融商品やサービスでも構いません。ただ一般的には、インデックスファンド(インデックス投信)が推奨されています。また、長期の運用となるので、手数料の安い商品を選ぶとよいでしょう。

インデックスファンド:日経平均株価や上海総合指数などの指数(インデックス)と連動した値動きをするように投資先を選んでくれる投資信託のこと

ちなみに、私は複数の金融商品やサービスを利用してコアの資産運用を行っています。例えば、海外の非課税地域(オフショアといいます)で運用される投資信託、国内のロボアドバイザー(人工知能が運用してくれるサービス)、個人型確定拠出年金(iDeCo)などです。

必ずしも複数の金融商品を利用する必要はありませんが、これまでにコアの資産運用を行ったことのない人は、まずは一つ選んでみるとよいでしょう。私が利用している商品であれば、いずれも税金面でのメリットが得られるのでおススメです。

資産を少しずつサテライトからコアに移していく

ここまでの説明で、サテライトだけでなくコアも組み合わせることの重要性がある程度わかったと思います。ただ、「コアとサテライトはどのような比率にすればいいの?」といった疑問があるかもしれません。

一般的には、コア:サテライト=7:3くらいが推奨されています。ただ、資産運用を「娯楽」と考えて楽しみたい人はサテライトを増やしても構いません。逆に、淡々と機械的に資産運用をしたい人であれば、コアだけでも構いません。

「今はサテライトにしか投資していない」という人も多いと思うので、そのような人は資産を少しずつコアに移してください。コアの部分は積み立て投資がベストなので、定期的に定額をコアに移すようにしましょう。そして、数年の期間をかけてコア:サテライト=7:3を目指してください。

大事なのは、年齢を重ねるにつれてサテライト(リスク資産)の割合を減らし、コア(安定資産)の割合を増やすことです。この考え方は、欧米では一般的な考え方です。「退職後もサテライトのほうが多い」という状況は必ず避けるようにしてください。

私自身もこの考えにしたがって、少しずつサテライトからコアに資産を移しています。毎月定額をコアに積み立てているので、将来的にはコアの資産がサテライトを上回ると考えています。

まとめ

  • サテライトは株式、債券、外貨預金などを利用して積極的に資産運用を行うことである。一方、コアは「長期・分散・積立投資」により安定的に資産運用を行うことである。
  • 「サテライトにしか投資していない」という人は、資産を少しずつコアに移すことを心がける。
  • 年齢を重ねるにつれてサテライトを減らし、コアの割合を増やすことが重要である。

今回は、資産運用を行う上で重要なコア・サテライト戦略について解説しました。ドラッカーは「経営における目標達成」の考え方として冒頭の言葉を使いましたが、私たちは「資産形成における目標達成」のために、コア・サテライト戦略を活用するようにしましょう。

このサイトでは、サテライトとして「株式投資」や「ETFを利用した債券投資」を紹介しています。また、コアとして「積立投資」を紹介しています。あなたの資産形成に間違いなく役立つ情報ですので、他の記事からも知識を吸収するようにしてください。