2018年10月23日、アメリカの数字選択式宝くじ「メガミリオンズ」で賞金15億3,700万ドル(約1,730億円)を獲得した人がいました。

なんとも夢のような話ですが、実はこの事例から資産運用について学ぶことができます。

そこで今回は、メガミリオンズの高額当選の事例から資産運用について考察していきます。今回の記事から、「現金の価値」や「資産運用の利回り」について大まかに理解しておきましょう。

メガミリオンズの概要

メガミリオンズ

メガミリオンズという宝くじのことをまったく知らなかったので、今回簡単に調べてみました。メガミリオンズの概要は以下のとおりです。

<メガミリオンズの概要>

  • メガミリオンズは日本のロト6と同じような仕組みの宝くじである。
  • 1~70までの数字5個と、1~25までの数字1個の計6個の数字がすべて的中すれば賞金を獲得することができる。
  • 当選者がいなければ賞金は繰り越される。
  • 2018年7月27日から26回連続で当選者がいなかったため、賞金が15億3,700万ドルに膨れ上がっていた。

そして、冒頭に述べたとおり、2018年10月23日にこの賞金を獲得した人が現れたのです。

興味深いのはこの賞金の受け取り方です。メガミリオンズの賞金の受け取り方法は「一括受け取り」と「30回の分割受け取り」を選ぶことができます。

一括受け取りの場合は、税金などを差し引かれて8億7,800万ドルになります。一方、30回の分割(最後の受け取りは29年後)で受け取った場合は満額の15億3,700万ドルを受け取ることができます。

なぜ、このように一括受け取りと分割受け取りで金額が異なるのでしょうか? この違いについて考察していきましょう。

賞金の受け取り方を考察:現金の減価

アメリカでも日本でもよく言われることですが、「宝くじに当たると破産する」という事実があります。楽して一度に大金を受け取ってしまうと、金遣いが荒くなって、最終的に破産してしまう例が多いのです。

このような破産を避けるために、アメリカでは分割受け取りが推奨されるようになりました。

しかし、私であれば一括受け取りを選びます。なぜなら、「現在の現金の価値」と「将来の現金の価値」は同じではないからです。具体的には、将来の現金の価値は今の価値よりも低くなります。これを「現金の減価」といいます。

それでは、なぜ将来の現金の価値は低くなるのでしょうか?

現金の価値が減価する理由

将来の現金価値が減価する最大の理由はインフレ物価の上昇)です。今100円で買えるものは、将来120円に値上がりしている可能性があります。つまり、将来のお金の価値は今のお金の価値よりも低くなるのです。

また、支払い主が破産して賞金が支払われないリスクもあります。さらに、本人が死亡した場合は残りの賞金を受け取ることはできません。

このように、「インフレリスク」「支払い主の破産リスク」「本人の死亡リスク」があるため、今もらえる現金よりも将来もらえる現金を多くしないと釣り合わないのです。

現金の減価

なお、アメリカの物価上昇率(インフレ率)は年間約2%です。つまり、毎年2%ずつ現金の価値が減っていることになります。

そのため、15億3,700万ドルの29年後の価値は15億3,700万×0.9829 を計算して8億5,550万ドルになります。この値は一括受け取りの金額とほぼ同じであることがわかります。

一括受け取りの金額がなぜ8億7,800万ドルになっているのか調べた限りわかりませんでしたが、このような物価上昇率を加味して計算されている可能性があるのではないかと考えられます。

賞金は一括で受け取るべきである

上述のとおり、私であればこの賞金は一括で受け取ります。

先程の計算の逆で、受け取った8億7,800万ドルを年間利回り2%で運用すれば、29年後には15億5,917万ドル(8億7,800万ドル×1.0229)になります。つまり、分割払いで受け取るのとほぼ同じ金額になるのです。

そのため、一括で受け取った金額を年間利回り2%以上で運用できれば、分割で受け取る金額以上にお金を増やすことができます。そして、年間利回り2%で運用するのはあまり難しくありません。

例えば、アメリカの10年国債に投資すれば年間利回り3%を達成できます。アメリカ在住の人であれば為替リスクもないため、元本保証で年間利回り3%の運用ができるのです(日本在住の場合は為替リスクがあるので、元本割れする可能性があります)。

また、少しリスクを取って株式や投資信託に投資すればもっと大きく増やせる可能性があります。

このように、現金の減価や資産運用のことを考えると、賞金は一括で受け取ったほうがよいことがわかると思います。

私たちがこのような高額賞金を獲得することはきっとないと思いますが、もし将来そのようなことがあれば、今回の内容を参考にして一括受け取りを選ぶようにしましょう。

まとめ

  • 「将来の現金の価値」は「今の現金の価値」よりも低い。そのため、将来もらえる現金は今もらえる現金よりも多くなければ釣り合いが取れない。
  • もらえる現金が少なくなってもよいので、賞金は一括で今すぐ受け取るべきである。それを運用すれば、結果的に多くのお金を受け取ったことになる。

今回は、アメリカの宝くじ「メガミリオンズ」から現金の減価や資産運用について考察してきました。

「現金の減価」は預貯金にも当てはまります。日本の物価上昇率はアメリカほど高くありませんが、それでも少しずつ物価は上昇しています。

資産をすべて預貯金で保有しておくことはすべての資産を減価のリスクにさらしていることになります。このことからも、預貯金は決して安全な資産ではないことがわかると思います。