現代のような低金利時代においては、銀行に預金していても利息はほとんどもらえません。一方、株式投資における「配当金」であれば、株を保有するだけで投資金額の約0.5~3%の現金を受け取ることができます。そのため、配当金は株式投資における大きな魅力の一つとなっています。

ただ、配当金を受け取るときには、気を付けなければならないことがあります。

そこで今回は、配当金に関する注意点について解説していきます。いずれも基本的な内容なので、株取引に慣れていない人はしっかりと概要を把握するようにしてください。

配当金の権利確定日

株を買えば誰でも配当金を受け取れるわけではありません。配当金を受け取るためには、権利確定日(配当金を受け取る権利が確定する日)に、株主名簿に名前が記載されていなければなりません。

ただ、株を買ったあと、すぐ株主名簿に名前が記載されるわけではありません。株を買ってから株主名簿に名前が記載されるまでに3日間のタイムラグがあるのです

そのため、実際には、権利確定日の3営業日前に株を保有しておく必要があります。この「権利確定日の3営業日前」のことを権利付き最終日といいます。

例えば、2019年3月であれば、3月29日が権利確定日(月末が土日の場合は平日に繰り上がるため)、その3営業日前の3月26日が権利付き最終日になります。

権利付き最終日の例

ちなみに、日本には3月決算の企業が多いです。そのため、3月と9月(3月決算の上半期)に権利確定日が設定されていることが多いです。

また、配当金の権利確定日と株主優待の権利確定日は同じです。そのため、株主優待を実施している企業の場合、権利が確定すると配当金と株主優待の両方を受け取ることができるのです

※ すべての企業が配当金と株主優待の両方を株主に配布しているわけではありません。どちらか一方だけを配布する企業もあれば、両方ともない企業もあります。

配当金を受け取る時期

私たちが配当金を受け取るのは、権利が確定してから約3ヶ月後になります。3月末が権利確定日の場合、実際に配当金を受け取るのは6月末頃になるのです。

権利確定から配当金の受け取りまでに3ヶ月かかる理由

それでは、なぜ配当金の受け取りまでに3ヶ月もかかるのでしょうか? その答えは「中間決算や期末決算の内容を元に配当金の金額を決め、株主の了承を得る必要があるから」です。

企業は決算の内容を参考にして配当金の金額を決めます。そして、株主総会を開いて、その金額でよいか株主から了承を得る必要があるのです(例外として株主総会で協議しない場合もあります)。

ちなみに、権利付き最終日に株を保有しておけば、あなたも株主の一人として会社から認められています。そのため、あなたにも配当金の金額について賛否を表明する権利があります。実際、企業から下記のような「株主総会招集の案内書」を受け取るはずです。

(ここに写真貼る)

このように、配当金を受け取るまでには「権利確定 → 決算 → 株主総会 → 配当金の支払い」という流れがあります。そのため、配当金を受け取るまでには約3ヶ月の期間を要するのです。

権利落ち日の株価下落に注意

先ほど、「権利付き最終日に株を保有しておけば配当金を受け取ることができる」と述べました。ただ、株取引をしている人の中には、配当金の権利を得たらすぐに株を売る人がいます。つまり、権利付き最終日の翌営業日(権利落ち日)に株を売る人がいるのです。

そのため、権利落ち日は株価が下がりやすいです。

下図は、2018年1月~3月における「マックスバリュ東海(8198)」のチャートを示しています。権利付き最終日から権利落ち日にかけて株価が急落していることがわかると思います。

権利落ち日の株価急落(マックスバリュ東海)

※ HYPER SBIよりチャートを引用して図を作成

マックスバリュ東海の当時の株価は以下のとおりでした。

日付 株価
権利付き最終日 2月23日(金) 終値(取引終了時の株価):2,598円
権利落ち日 2月26日(月) 始値(取引開始時の株価):2,462円

権利付き最終日から権利落ち日にかけて株価は2,598円から2,462円に下落していました。その下落率は約5.2%です。権利落ち日の取引が始まるまでに大量の売り注文が入ったため、このように大きく株価を下げて取引が始まったのです。

「土日を挟んだから大量の売り注文が入ったのでは?」と思う人がいるかもしれませんが、曜日はあまり関係ありません。

なぜなら、配当の権利を得てから株を売る人は曜日に関係なく売り付けるからです。そのため、仮に、権利付き最終日と権利落ち日が平日であっても、同じくらいの下落率だったと考えられます。

このように、権利落ち日は株価が下落する傾向にあります。特に、短期で株を売買する人はこのことに留意しておいてください。

権利落ち日に株価が急落しやすい銘柄

権利落ち日に株価が急落しやすい銘柄には2つの特徴があります。それは、「配当利回り(株価に対する配当金の割合)が高い」と「株主優待が魅力的」という特徴です。つまり、魅力的な配当金や株主優待を受け取ることだけを目的に株を買った人が、すぐに売ってしまうのです。

マックスバリュ東海の場合は、株主優待(100円割引券×50枚)が魅力的なので、このような株価の急落が生じたと考えられます。

また、権利落ち日に株価が急落するケースはほぼ毎年繰り返されます。そのため、過去数年間のチャートを確認すれば、権利落ち日に急落する銘柄かどうかある程度把握することができます。今回紹介したマックスバリュ東海も、例年2月の権利落ち日に株価が急落する銘柄の一つなのです。

配当金には税金がかかる

配当金は税制上「配当所得」になります。そのため、約20%(所得税 15.315% 住民税 5%)の税金が天引きされた金額を受け取ることになります。

例えば、「1株あたりの配当金=10円」の株を1,000株持っていたとします。本来であれば、10,000円の配当金を受け取ることができます。しかし、実際には約20%の税金が差し引かれるため、受け取る金額は約8,000円になるのです。

まとめ

  • 配当金を受け取るためには、権利付き最終日に株を保有しておかなければならない。
  • 配当金を受け取る時期は権利確定日の約3ヶ月後である。
  • 配当利回りの高い銘柄や株主優待が魅力的な銘柄では、権利落ち日に株価が急落しやすい。
  • 配当金には約20%の税金がかかる。

今回は、配当金を受け取るときの注意点について解説してきました。いずれも重要なポイントなので、しっかりと内容を把握しておいてください。

特に、株式を短期で売買している人は、権利落ち日の株価の急落に注意するようにしましょう。一方、私のように中長期で株を売買している人は、権利落ち日に株価が急落しても慌てる必要はありません。このように、株式投資のスタンスによって、注意するべきポイントも少しずつ異なるのです。