あなたは「ペイオフ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 銀行が破綻しても、1,000万円までの預金とその利息が保護されるという制度です。1,000万円を超える分は全額返ってこない可能性がありますが、銀行が破綻しても1,000万円+利息は確実に戻ってくるのです。

それでは投資信託の場合はどうでしょうか? 銀行や証券会社が倒産した場合、私たちが保有している投資信託は保護されるのでしょうか?

結論からいうと、金融機関が破綻しても投資信託は守られます。銀行預金と違い、1,000万円以上を投資していても問題ありません。

そこで今回は、金融機関の破綻と投資信託の関係について解説していきます。投資信託が法律で守られていることを理解しておけば、安心して投資できるはずです。

投資信託には3つの金融機関が関わっている

金融機関の破綻について話を進める前に、まずは投資信託の仕組みを復習しておきましょう。投資信託には、販売会社運用会社(委託会社)、信託銀行(受託会社)の3つの会社が関わっています。それぞれの会社には下図のような関係があります。

投資信託の仕組み

・販売会社
顧客対応の窓口になるのが販売会社です。つまり、銀行や証券会社が販売会社に該当します。販売会社はあくまで「窓口」であり、投資信託を運用したり管理したりしているわけではありません。

・運用会社(委託会社)
投資信託を作ったり運用したりしているのが運用会社(委託会社)です。運用会社には、株式や債券などの売買を指示するファンドマネージャーが所属しています。投資信託の運用成績を左右するため、私たち顧客にとって非常に重要な金融機関になります。

・信託銀行(受託会社)
運用会社の指示にしたがって、株式や債券の売買を行うのが信託銀行です。いわば資産運用の実行部隊です。

また、信託銀行は顧客が預けたお金を信託財産として管理しています。信託財産とはその名の通り「信じて託された財産」のことです。つまり、私たちが投資信託に投じたお金は信託銀行に管理されているのです。

このように、投資信託には3つの金融機関が関わっています。それぞれの会社の概要がわかれば、「金融機関が破綻したときに投資信託はどうなるの?」という疑問の答えが少しずつ見えてくると思います。それでは、各金融機関が破綻した場合について順に解説していきます。

販売会社が倒産した場合

上述のとおり、銀行や証券会社などは顧客対応の窓口にすぎません。したがって、販売会社が倒産しても、私たちが預けたお金(信託財産)がなくなることはありません。

ただ、窓口がなくなってしまっては困ります。そのため、販売会社が破綻すると、投資信託は他の販売会社に移管されます。別の販売会社が窓口対応を引き継いでくれるため、私たちは継続して投資信託を保有することができるのです。

運用会社が倒産した場合

上述のとおり、運用会社は資産運用の指示を出しているだけです。運用成績に関わる大事な金融機関ではありますが、運用会社が倒産しても信託財産は影響を受けません。

ただし運用会社が倒産すると、他の運用会社にその業務が引き継がれるか、その時点で運用が終わることになります。

他の運用会社に引き継がれた場合は、私たちは継続して投資信託を保有できます。一方、運用会社が破綻した時点で運用が終わる場合は、繰上償還(くりあげしょうかん)になります。

繰上償還とは、運用の途中であっても投資信託の運用を終わらせて顧客に返金することです。返金される金額は、そのときの基準価額(投資信託の時価)をもとに計算されます。基準価額はそれまでの運用成績で決まるため、場合によっては元本割れをして返金されることもあります。

信託銀行が倒産した場合

上述のとおり、信託銀行は顧客から預かった資産を信託財産として管理しています。そのため、「信託銀行が破綻すると投資したお金がパーになるのでは?」と不安に思う人もいます。しかし、その心配はありません。

なぜなら、信託財産は信託銀行自身の資産とは明確に区別して管理することが法律(信託法34条)で定められているからです。これを分別管理といいます。したがって、もし信託銀行が倒産しても、信託財産は影響を受けないのです。

信託銀行が破綻した場合は、他の信託銀行に業務移管されるため、私たちは継続して投資信託を保有することができます。ただし、引き継ぎ先が見つからない場合は繰上償還されることになります。

まとめ

  • 投資信託には、販売会社、運用会社、信託銀行の3つの金融機関が関わっている。
  • 顧客が預けたお金は、信託銀行で「信託財産」として管理されている。信託財産は分別管理することが義務付けられているため、いずれの金融機関が倒産してもなくなることはない。
  • 金融機関が倒産した時点で投資信託が繰上償還されることもある。その場合、それまでの運用成績が悪ければ(=投資信託の基準価額が下がっていれば)、元本割れして返金されることになる。

今回は、金融機関の破綻と投資信託との関係について解説してきました。販売会社、運用会社、信託銀行のいずれの金融機関が破綻しても、私たちの投資信託は守られることが理解できたと思います。また、銀行預金のように「1,000万円まで」のような制限もありません。これらのことを把握しておけば、ある程度安心して投資信託を買えるはずです。