会社の給料が増えないので、株式投資で収入を増やしたいと考えています。現在300万円ほど預金があるのですが、初心者の場合はいくらから株式投資を始めるのがよいでしょうか?
株式投資の経験がないのであれば、「損しても耐えられる金額」を考慮して投資金額を決めるべきです。株式投資に慣れてリスク管理ができるようになれば投資金額を増やしても構いませんが、最初は少額から始めることを強くおすすめします。

株の購入に必要な金額

投資金額を考える前に、「株の購入に必要な金額」について理解しておきましょう。

株の購入に必要な金額は「株価 × 単元(基本的に100株)」で計算できます。「単元」とは株の売買単位のことです。通常、株は1株ごとではなく単元(100株)ごとに売買します。そのため、「株価 1,000円」の銘柄を買うときは、購入資金として10万円(1,000円×100株)が必要になります

また、東京証券取引所では株の売買価格の水準として「5万円~50万円」を推奨しています。そのため、多くの銘柄は50万円以下で買えるようになっています。実際、私が普段売買している銘柄は1単元30万円以下(株価が3,000円以下)のものがほとんどです。

以上を理解した上で、株式投資に回す金額を考える必要があります。

株式投資はハイリスク・ハイリターンである

株式投資は投資信託や債券などに比べてハイリスク・ハイリターンの資産運用です。数週間で株価が2倍になることもあれば、逆に半分になることもあります。業績が安定している大企業に投資しても、世界の経済情勢などの影響で株価が大きく値下がりすることがあるのです。

このように、株式投資はハイリスク・ハイリターンの資産運用であることを大前提として理解しておいてください。そのため、リスク管理(資金管理)をしっかりとできないうちは、少額から始めることを強くおすすめします。

リスク管理ができない人が多額の資金を株式投資に回してしまうと、これまで苦労して蓄えた預貯金を大きく減らしてしまう可能性があるのです。

私の失敗例

私は初心者の頃から多額の資金を株式に投資していました。しかも、信用取引(証券会社から借金をして株取引をすること)を行って、自己資金以上の取引をしていました。

そのため、リーマン・ショックが起こった2008年に大きな損失を抱えました。当時の私は300万円を運用資金としていましたが、1年間で約55万円にまで減ってしまったのです。実に、81%のマイナスです。

私はそれまでに貯めたお金のほとんどを資産運用に回していたため、大変つらい思いをしました。「自分には昼食を食べる権利がない」と思って、お昼にパンの耳を食べていたほどです。

このように、株式投資では多額の損失を抱える可能性があります。特に、初心者はリスク管理ができずに大きな損失を被ることがあるので、投資金額は慎重に決めるようにしましょう。

株式投資の目的に応じて投資金額を考える

投資金額を考えるときは「株式投資の目的」を明確にしておきましょう。多くの人は「儲けること」が目的と思いますが、なかには「株主優待をもらうこと」が目的という人もいます。ここでは、目的別に投資金額を考えていきます。

「儲けること」が目的の場合

まずは、株価の値上がり益(キャピタルゲイン)や配当金(インカムゲイン)による利益が目的の場合について解説します。

株式投資のスタイルは人それぞれです。デイトレーダーのように買った株を数分後に売却する人もいれば、私のように数ヶ月~数年間株を保有し続ける人もいます。

いずれにしろ、株を保有している以上、売るまでの間に株価が下がる可能性があります。そのため、儲けることが目的の場合は「損しても耐えられる金額」を考慮してください。間違っても生活資金を投資に回してはいけません。

それでは、国内株式に投資した場合、どれくらい損をする可能性があるのでしょうか? 

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のデータに基づくと、国内株式に投資する投資信託の場合、年間運用成績は95%の確率で「-44% ~ +55%」の範囲に収まります。大雑把にいうと、1年間で投資資金は「半額~1.5倍」になる可能性が高いのです。

GPIF資料に記載のデータ(国内株式に投資する投資信託の期待リターンと標準偏差)から算出。
※ 投資信託のデータを元に算出しています。株式投資の場合は、投資信託ほど多くの銘柄に分散投資できないので、もう少し幅が広がる可能性があります。
※ 信用取引は考慮していません。

つまり、100万円を投資した場合、1年後には「50万円~150万円」の金額になっている可能性が高いのです。そのため、「年間50万円の損失には耐えられない」というのであれば、投資金額は100万円以下にしておくべきでしょう。

このように、まずは「損失に耐えられる金額」を基準に投資金額の上限を決めます。「年間100万円までなら損しても構わない!」というのであれば、上限金額は200万円になります。

ただ、ここで算出した金額はあくまで上限です。株式投資に慣れるまではこの上限より少ない金額から始めましょう。株式投資に慣れて、ある程度リスク管理ができるようになってから、投資金額を増やしていけばよいのです。

「株主優待取り(つなぎ売り)」が目的の場合

つなぎ売り(現物買いと信用売りの両方を注文すること)を利用した「株主優待のタダ取り」が目的の場合は、大胆に投資金額を増やしても構いません。

なぜなら、つなぎ売りを利用すれば、株式投資で損をすることなく株主優待を入手できるからです。極端なことをいうと、最低限必要な金額を銀行口座に残しておいて、残り全額を証券口座に入金しておいてもよいのです。

<参考記事>つなぎ売りについて詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。

株主優待をタダ取り!つなぎ売り(クロス取引)の方法と注意点


実際、私は銀行口座よりも多くのお金を証券口座に入金しています。そして、現金のまま保有し、毎月のつなぎ売り用の資金などに利用しているのです。

※ 今回は詳しく述べませんが、証券口座に現金を残しておくことは、リスク管理をする上でとても重要です。

ここまで述べてきたように、株式投資はハイリスク・ハイリターンの資産運用です。大きな損失を抱えることもあるので、投資金額は慎重に検討するようにしてください。ただ、つなぎ売りを利用した株式優待のタダ取りが目的の場合は、損をするリスクがないので大きな金額を投資しても問題ありません。