経済ニュースを見ていると「為替(かわせ)」「円高」「円安」などの言葉を頻繁に耳にします。経済ニュースを理解する上で、これらの言葉の意味を知っておくことはとても重要です。

そこで今回は、為替に関する基本的な内容を整理しておきます。また、為替の変動(円高・円安)が企業の業績にどのように影響するか解説します。経済ニュースを正確に読み取るためにも、経済の基礎知識を身に付けておきましょう。

為替と為替レート

経済に慣れていないと「為替」という単語にアレルギー反応を示す人がいます。ただ、為替ではなく「両替」と考えると理解しやすいのではないでしょうか?

通常、「両替」というと、「千円札を100円玉10枚と交換する」といったイメージを持つと思います。為替もこれとほぼ同じです。ただ、両替する相手が外国の通貨に変わっているだけです。イメージとしては、「千円札を1ドル紙幣10枚と交換する」といった感じです。

このように、為替とは「外国の通貨と両替すること」と理解しておきましょう。

ただ、外国の通貨と交換するときの比率(為替レート)は一定ではありません。常にレートが変動しているのです。これを変動為替相場制といいます。

例えば、あるときは千円札を1ドル紙幣10枚に両替できたとします。しかし、別の日には千円札を1ドル紙幣11枚に両替できたり、9枚にしか両替できなかったりするのです。

このように、為替レート(通貨同士の交換比率)が変動する様子が、「円高」や「円安」という用語で報道されているのです。

それでは、なぜ為替レートは変動するのでしょうか? その理由について解説していきます。

為替レートが変動する理由と円高・円安の意味

まず私たちが認識すべきことは、「通貨の価値は変動している」ということです。「江戸時代の10円と現代の10円では、価値がまったく異なる」といえば理解しやすいと思います。

ただ、実際には通貨の価値は1秒単位で変化しています。そして、外国人を含む多くの人が「円がほしい!」と思えば、円の価値は上がっていきます。他の商品と同じように、ほしいと思う人が多ければ価値が上がるのです。

そして、円の価値が上がることを「円高」といいます。このとき、多くの人は、ドルなどの外貨を売って円を買っている(ドルから円に両替している)のです。

それとは逆に、多くの人が「円はいらない」と思えば、円の価値は下がります。これが「円安」です。このときは、円を売ってドルなどの外貨を買っている(円からドルに両替している)人が多いのです。

このように、人々の需要によって為替レートは変動しているのです。現代では、電話やインターネットを通じて通貨の取引を行うことができるので、それに応じて為替レートも刻一刻と変化しているのです。

以上をまとめると、「円高」「円安」の意味は下記のとおりになります。

<円高>
円の価値が上がること。円の価値が上がるので、少ない円で多くのドルと両替できるようになる。いいかえると、1ドルと両替するときは少ない円を支払うだけでよい。

<円高の具体例>
「1ドル100円」から「1ドル80円」になること

<円安>
円の価値が下がること。円の価値が下がるので、1ドルを得るためには多くの円を支払わないといけない。

<円安の具体例>
「1ドル100円」から「1ドル120円」になること

経済力と投機で為替は変動している

一般的に、経済力の強い国の通貨は価値が高くなる傾向にあります。

なぜなら、経済力の強い国の企業(仮にA社とします)と取引したいと思う企業が多いからです。A社と取引するためには、A社が属する国の通貨でお金を支払わなければなりません。そのため、その国の通貨の需要が高まり、通貨価値が上がるのです。

ただ、最近は為替レートの変動を利用して儲けようとする人が多くなりました。いわゆるFX(外国為替証拠金取引)です。

本来、為替は国の経済力を表しており、国の経済力が変化しなければ、為替も変化しないはずでした。しかし現代では、国の経済力とは無関係のFX取引がかなり増えています。そのため、経済の実態とはかけ離れて為替が変動することが多くなったといわれています。

※ 今回は詳しく述べませんが、FXは資産運用ではありません。完全に投機です。したがって、私はFXには手を出しません。

円高になると輸入企業が儲かり、円安になると輸出企業が儲かる

それでは円高や円安は企業の業績にどのような影響を与えるのでしょうか?

結論を先に述べると、円高になると輸入企業が儲かり、円安になると輸出企業が儲かります。その理屈は以下のとおりです。

現在、外国との貿易で使用される通貨の5~7割はドルです(参考資料:財務省 報道発表資料)。そのため、ドルに対する円の為替変動が輸出入を行う企業の業績に影響することになります。

以下、円高(1ドル80円)or 円安(1ドル120円)の場合に、輸入企業や輸出企業の利益がどう変わるか確認していきましょう。

輸入企業の場合

仮に、日本の企業がアメリカの企業から1台1万ドルの車を輸入したとします。このとき、日本企業が支払う代金は1万ドルです。

ただ、為替レートの影響によって、実際に負担する日本円の額は異なります。円高(1ドル80円)のときに支払う金額は80万円ですが、円安(1ドル120円)のときに支払う金額は120万円です。つまり、円高のときのほうが、支払う金額が安くなるので、輸入企業の利益は大きくなります。

輸入企業は円高のほうが儲かる

<輸入企業の例>
ファーストリテイリング(銘柄コード:9983)やニトリホールディングス(9843)など、海外で生産した製品を日本で輸入して国内で販売している企業

輸出企業の場合

日本からアメリカに1台1万ドルの車を1台輸出したとします。このとき、日本企業が受け取る代金は1万ドルです。

ただ、為替レートの影響によって、実際の売上金額は異なります。円高(1ドル80円)のときの売上金額は80万円ですが、円安(1ドル120円)のときの売上金額は120万円です。つまり、円安のときのほうが、売上は大きくなるのです。

輸出企業は円安のほうが儲かる

<輸出企業の例>
トヨタ自動社(7203)やキャノン(7751)など、国内で生産したものを海外に輸出している企業

このように、「円高になると輸入企業が儲かり、円安になると輸出企業が儲かる」ということを理解しておきましょう。

また、裏を返せば、「円高になると輸出企業の利益が減り、円安になると輸入企業の利益が減る」ということでもあります。実際、トヨタ自動車の場合、ドルに対して1円円高になるだけで利益が300~400億円も減るといわれています。

そして、日本は輸出企業が多いので、円高になると日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などは下がります。企業の株価は為替の変動に非常に敏感に動くので、日々の株価の値動きが気になる人は為替の変動にも一喜一憂することになってしまいます。

まとめ

  • 為替とは、通貨と通貨を両替することである。ただし、このときの交換比率(為替レート)は刻一刻と変動している。
  • 円をほしい人が増えると円の価値があがる(=円高)。逆に、円はいらいないと思う人が増えると円の価値が下がる(=円安)。
  • 円高になると輸入企業が儲かり、円安になると輸出企業が儲かる。日本は輸出企業のほうが多いため、円高になると日経平均株価やTOPIXは下がる。

今回は、為替の意味や為替変動が企業業績に与える影響について解説してきました。為替の変動と各企業の株価の値動きを眺めるだけでも、各企業の特徴がわかるときがあります。為替は企業業績や経済を動かす重要な要素なのです。