「株」とはいったい何でしょうか? 「株式会社」「株式投資」「株で儲かった」・・・そういった言葉を耳にすることも多いと思います。
しかし、株式会社に勤めている人でも、株の仕組みがわからないという人は多いです。
そこで今回は、株の仕組みについて「株式会社」と「株主」の両方の立場から解説していきます。また株主の権利や責任についても紹介しています。株の仕組みを理解して、あなたが株式投資を始めるきっかけにしてみてください。
株とは何か? 株式会社が株を発行する理由
「株(株式)」の意味を「株式会社」と「株主」のそれぞれの立場で順に説明していきます。まずは、株式会社の立場に立って、株の意味を考えていきましょう。
会社は事業を行って利益を得るために作られます。しかし、事業を行うためにはどうしてもお金が必要になります。そのため、会社に十分な事業資金がない場合は、他から調達しなければなりません。
株式会社には3つの資金調達の方法があります。「銀行からの借入」、「社債の発行」そして「株式の発行」です。
銀行借入と社債発行は、資金の返済時期が契約で定められています。また、支払う利息も決められています。これらの資金調達方法は、一定期間後に資金を提供者に返すことが前提となっているのです。
しかし、株式で集めたお金はめったなことでは返済しませんし利息も付きません。そのかわり、事業で得た利益を配当金などの形で株主に分配します。
このように、株式会社の立場から見ると、株式を発行する主な目的は資金調達であることがわかります。株式による資金調達には、銀行からの借金や社債発行とは異なり、「返済する必要がない」という大きな特徴があるのです。
株式会社の義務
上述のとおり、株式会社にとって「株式の発行」は「返済する必要のない資金の調達」を意味します。しかし、株式や債券などの有価証券を発行する企業には大きな社会的責任があります。そのため、株式会社にはさまざまな義務が課せられているのです。
例えば、株式会社は年に1回、株主総会を開催して株主に事業結果を報告しなければなりません。さらに、「有価証券報告書(事業の結果を報告する書類)」を作成して、株主以外にも事業の結果を公開する必要があります。
このように、株式発行で資金を調達した株式会社には、さまざまな情報公開が義務付けられています。また、投資家はこれらの公開情報をもとに投資先の企業を評価することになるのです。
株式会社の価値を決める「時価総額」
資金調達のために発行された株式は、その後投資家の間で売買されるようになります。最初に出資した人がずっと株式を保有しているわけではないのです。
株式市場で株が売買されるようになると、株はさまざまな人の手に渡っていきます。このときの売買価格(株価)と株式の発行数を掛け合わせた値を時価総額といいます。
株価は会社の業績と密接に関係しているため、業績が良ければ株価は上がります。そして、株価が上がれば時価総額が大きくなります。つまり、会社が成長すれば時価総額も大きくなるのです。
端的にいえば、時価総額が大きい会社=大企業です。例えば、日本でもっとも時価総額の大きな会社はトヨタ自動車(銘柄コード:7203)です。
このように、株は会社の規模を推し量る指標にもなるのです。
株主は会社のオーナーである
ここまでは「株式会社」の立場に立って、株の意味を述べてきました。次に、「株主」の立場に立って、株の意味を考えていきましょう。
株主の立場から考えると、「株=会社の所有権」です。つまり、株式を購入することで、その会社のオーナーになれるのです。
そして、株主(=会社のオーナー)になることで以下の3つの権利が得られるのです。
会社の経営に参画する権利
株主総会では会社からの事業報告だけでなく、会社運営上の重要事項(取締役の選任など)の採決が行われます。
その際、株主には議決権(重要事項の賛否を表明する権利)が与えられます。通常、1株(または1単元)につき1つの議決権を得ることができます。つまり、たくさん株式を持っている人ほど、議決権の数が増えるのです。そのため、保有している株数が多ければ、会社の経営に対して自分の意見を反映させやすいのです。
このように、株主には間接的に会社の経営に参画する権利があるのです。
利益の一部を受け取る権利
株式会社は事業で得た利益を新たな事業資金にするか、株主に分配するかを決めます。そして、株主に分配する利益のことを配当といいます。通常、「配当金」として現金を株主に分配します。
株主としては、出資した見返りとして配当金を受け取ることができるのです。このように、株式を保有しておくことで得られる利益のことを「インカムゲイン」といいます。
また、株価は会社の業績と密接に関係しているため、会社の利益が大きくなると株価も上がっていきます。そのため、株主は株式を売却することでも利益を得られる可能性があります。このように、株を売って得られる利益のことを「キャピタルゲイン」といいます。
キャピタルゲイン:株式を売却することで得られる利益
株式投資では、どうしてもキャピタルゲインに注目が集まりがちです。短期間で大きく儲けられる可能性があるからです。実際、私自身もキャピタルゲイン目当てに株式投資を始めました。
しかし、株主になるということは「会社のオーナーになる」ことです。株式投資の本来の目的は、会社の議決権やインカムゲインを得ることにあることを覚えておきましょう。
会社が解散するときに財産を受け取る権利
業績の悪化や他社との合併などにより、株式会社が解散することがあります。その際、借金等を返済して残った財産は、株数に応じて株主に分配されます。株主は会社のオーナーなので、解散後に残った財産を受け取る権利があるのです。
会社が解散することはあまりありませんが、このような権利があることも覚えておきましょう。
株主の責任
株主には上記のような3つの権利があります。一方、株主は会社のオーナーであるため、業績に対して一定の責任を負うことになります。
例えば、会社の業績が悪くなれば配当がなくなります。さらに株価が下がるので株式の売買益も得られません。つまり、インカムゲインもキャピタルゲインも失うのです。
ただ、いくら業績が悪くなっても、株主は出資した金額以上に責任を負う必要はありません。
例えば、株式会社が多額の借金を抱えて倒産したとします。株主は出資金がパーになってしまうだけで、会社の借金を肩代わりすることはないのです。これを「有限責任」といいます。有限責任に関する私の事例を紹介します。
私は過去に約50万円でサンシティ(銘柄コード:8910)という会社の株を購入していましたが、リーマン・ショックの影響でその会社は倒産しました。
私が持っていた株式の価値はゼロになりましたが、それ以上お金を取られることはありませんでした。つまり、会社の借金を肩代わりする必要はなかったのです。
「有限責任」は当たり前のように思うかもしれませんが、世の中には「無限責任」を負う会社も存在します(合名会社や合資会社など)。このような会社に出資すると、会社が抱えた負債を個人の資産を投じてでも返済する義務を負うことになるのです。
「無限責任」と比較すると、株主は「有限責任」によって守られていると理解することができるでしょう。
株価が変動する理由
ここまで、「会社が株式を発行する目的」「株主の権利と責任」について述べてきました。最後に、私たちが株を買う場面を想定して「株価が変動する理由」について述べていきます。
投資家が「株を買いたい」と思う理由はさまざまです。会社のオーナーになってインカムゲインを得ることを目的にする人もいれば、売買益(キャピタルゲイン)を目的にしている人もいます。
いずれの理由にしろ、株がほしいときは他の株主から買うことになります。会社が新たに株式を発行しない限り、会社から株を買うことはできないのです。
一般的に、会社の業績が良ければ、株を買いたい人が増えます。倒産するリスクが低く、配当金をたくさんもらえる可能性が高くなるからです。
そして、買いたい人が増えると必然的に株価が上がっていきます。なぜなら、株の売買はオークションと同じだからです。そのため、業績の良い会社の株価は、どんどん上がっていきます。逆に、業績が悪い会の場合は、買いたい人がいないので株価が下がります。
実際には、業績以外にもさまざまな要因がありますが、基本的にはオークションと同じ原理で株価が変動すると理解しておきましょう。
まとめ
- 会社は資金調達の手段として株式を発行する。
- 株主は会社のオーナーである。オーナーである株主には「会社の経営に参画する権利」「利益の一部を受け取る権利」「会社が解散するときに財産を受け取る権利」の3つの権利がある。
- 株主の責任は有限である。
今回は株の仕組みについて、「株式会社」と「株主」の両方の立場に立って説明してきました。「株主=会社のオーナー」ということはあまり知られていませんが、株式投資をすることで誰でも簡単に会社のオーナーになれるのです。あなたも株式投資を始めて、企業のオーナーになってみませんか?