老後に備えた資産運用の基本は「長期投資」「国際分散投資」「積立投資」です。これは金融庁も推奨している資産運用の王道ですし、このサイトでも繰り返し述べていることです。

ただ、国際分散投資に関しては、「素人には難しい」と考えている人が意外とたくさんいます。

たしかに、海外の株式や債券に投資するのは難しいと思うかもしれません。しかし、国際分散投資はそれほど難しくありません。実際、私のまわりにも国際分散投資を実践している人がたくさんいます。

そこで今回は、国際分散投資について復習した後、「投資一任サービス(ファンドラップ)を利用する」という方法について解説します。手数料の安いファンドラップもいくつかあるので、面倒なことをやりたくない人はそのようなファンドラップを利用するとよいでしょう。

国際分散投資の特徴

まずは国際分散投資について復習しておきましょう。

国際分散投資とは、国内外のさまざまな金融資産(株式、債券、REITなど)に分散して投資することです。

※ REIT:不動産投資信託。不動産を証券化して売買できるようにしたもの。

国際分散投資を行うことで、世界経済の成長に歩調を合わせて、高確率で安定的に資産を増やすことができます。ただ、世界経済の成長スピードは年間3~5%程度です。したがって、国際分散投資で利益を得るにはそれなりの年数がかかってしまいます。

つまり、国際分散投資には「安定的に資産を増やせる可能性が高いが時間がかかる」という特徴があるのです。

また、海外への投資なので為替変動の影響を受けます。つまり、将来円安になればさらに多くの利益が得られる一方、円高になれば利益は少なくなる(損をする)のです。

以上をまとめると、国際分散投資のメリット・デメリットは以下のようになります。

国際分散投資のメリット ・世界の経済成長に歩調を合わせて、安定的に資産を増やせる可能性が高い。
・円安になればさらに多くの利益が得られる。
国際分散投資のデメリット ・成果を得るまでに長い年月を要する(目安は10年以上)。
・円高になれば利益が少なくなる(損をする)。

国際分散投資のやり方は大きく分けて3通りある

冒頭に述べたとおり、国際分散投資はそれほど難しくありません。そのやり方は、大きく分けると以下の3通りです。

方法①:複数の投資信託を自分で組み合わせる
方法②:グローバルバランス型の投資信託を利用する
方法③:投資一任サービス(ファンドラップ)を利用する

①と②では投資信託を利用することになります。この場合、自分で投資信託を選んだり買い付けたりする必要があります。

一方、③であれば投資信託の選定から買い付けまですべて金融機関にお任せすることができます。①や②に比べると手数料は割高になりますが、金融機関と契約さえすれば、完全放置で国際分散投資を行うことができるのです。

①~③の手間や手数料などを比較すると以下のようになります。

①複数の投資信託を組み合わせる ②グローバルバランス型投資信託 ③ファンドラップ
証券口座 必要 必要 不要
投資信託の選定 自分で複数選ぶ 自分で1つ選ぶ 金融機関にお任せ
投資信託の買い付け 自分で行う 自分で行う 金融機関にお任せ
年間手数料 0.1~1%くらい 0.1~1%くらい 1%以上
リバランス 自分で行う 運用会社にお任せ 金融機関にお任せ
手間 かかる あまりかからない かからない
リバランス:運用期間中に崩れた資産配分を元に戻すこと。例えば、最初は「株:債券=5:5」で運用していても運用期間中にこの比率がずれてくることがあります。この比率を定期的に元に戻すことで運用成績は向上します。

ちなみに私は①~③をすべて利用しています。具体的には、個人型確定拠出年金(iDeCo)で①の方法を利用し、通常の投信積立で②を利用しています。また、後述するとおり、複数のファンドラップも利用しています。

それでは以下、③投資一任サービス(ファンドラップ)について詳しく解説していきます。

投資一任サービス(ファンドラップ)とは

投資一任サービス(ファンドラップ)とは、その名のとおり、金融機関に資産運用をすべてお任せできるサービスのことです。

ファンドラップであれば、あなたの希望(リスクを取らずに安定的に運用したい or リスクを取って利益を追求したい など)に応じて、最適な投資信託を選んで運用してくれます。

完全お任せでプロに資産運用の代行をお願いできるので、顧客としてはとても楽です。これがファンドラップの最大のメリットです。

ただ、ファンドラップは手数料が高いです。国内金融機関の場合、年間手数料は預け入れ資産の約1.5%です。つまり、100万円を預け入れると年間で約15,000円が手数料として徴収されるのです。

さらに、投資信託の信託報酬(投資信託を保有している間にかかる手数料)が気づかないうちに差し引かれています。信託報酬は高ければ年間3%以上かかるので、実質的な年間手数料は1.5%よりももっと高くなります

このように、自分で投資信託を買う場合に比べるとファンドラップの手数料は割高です。そのため、ファンドラップを利用する場合は、手数料についてしっかりと把握しておく必要があります。

私が利用している投資一任サービス(ファンドラップ)

最後に私が利用しているファンドラップを紹介しておきます。

オフショア(海外の非課税地域)のファンドラップ

RL360私は数年前に、オフショア(海外の非課税地域)の金融機関と投資一任契約を結びました。

金融機関の名称はRL360(ロイヤルロンドン)といいます。イギリスのど真ん中になるマン島という島の金融機関です。

オフショアの金融機関なので、運用期間中に得た利益はすべて非課税になります。つまり、RL360が投資信託を売却して利益を得ても税金がかからないのです。そのため、複利効果を活かして効率よく運用することができます。

(注)非課税なのは運用期間中だけです。最終的な利益に対しては、日本で税金を支払う必要があります。

私は過去の運用実績に惹かれて契約してみましたが、手数料体系がかなり複雑であることに驚きました。運用期間が長くなるにつれて少しずつ手数料が安くなる仕組みですが、最初の2年間は年間7%以上もの手数料を取られてしまいます。

そのため、RL360は長期運用が前提のファンドラップとなります。長期で続けられない人は損をすることになるので、基本的に初心者は手を出さないほうがよいでしょう。

ロボアドバイザー:WealthNavi(ウェルスナビ)& THEO(テオ)

ウェルスナビとテオ

ウェルスナビとテオは、コンピューターが運用してくれるファンドラップです。コンピューターが運用してくれるので、他のファンドラップに比べて手数料はとても安いです。

実際、ウェルスナビとテオの年間手数料は1%です。また、これらのファンドラップは信託報酬の安い海外ETF(投資信託の一種)に投資してくれます。海外ETFの信託報酬は0.1~0.2%なので、トータルの手数料は年間1.1~1.2%程度なのです。

ウェルスナビであれば、もっとも効率の良い資産配分で運用してくれます(少ないリスクで大きなリターンを追求できる)。しかも、その資産配分が崩れると自動的にリバランスを行ってくれます。さらに、税金の繰り延べ機能(DeTAXといいます)もあるため、オフショアのように効率よく運用することができるのです。

一方、テオの場合はかなり幅広い銘柄に分散投資することができます。ウェルスナビでは7種類の海外ETFにしか投資しませんが、テオの場合は30種類以上もの海外ETFに投資します。そのため、分散効果はテオのほうが高いと言えます。

ただ、DeTAX機能や効率的な運用のことを考慮すると、ウェルスナビのほうが少ないリスクで大きなリターンを期待できるのではないかと考えています。

私は2年くらい前からこれらのロボアドバイザーを利用していますが、特に不満を感じていないので、今後も継続して利用するつもりです。

まとめ

  • 国際分散投資を行うには、「① 複数の投資信託を自分で組み合わせる」「② グローバルバランス型投資信託を利用する」「③ 投資一任サービス(ファンドラップ)を利用する」という3つの方法がある。
  • 方法③であれば、金融機関と契約するだけで完全放置で国際分散投資を行うことができる。ただし、①や②の方法に比べると手数料が高い。
  • ファンドラップの中でも、ロボアドバイザーであれば比較的安い手数料で国際分散投資を行うことができる。

今回は、ファンドラップを利用した国際分散投資について解説してきました。ファンドラップを利用すれば、完全放置で国際分散投資を行うことができます。

ただし、手間がかからない分、手数料が割高であることに注意しなければなりません。ファンドラップを利用する場合は、ロボアドバイザーのような手数料の安いものを選ぶとよいでしょう。