「貯蓄から投資へ」という言葉が浸透するにつれて、資産運用を始める人が増えてきました。しかし、ただやみくもに株式や投資信託に投資してはいけません。
まずは自分のライフプランをシミュレーションして、「いつまでに、どれくらい増やしたいか」を考えることが大切です。そうしないと、無理な投資をしてしまう可能性があるからです。
そこで今回は、ライフプランのシミュレーションサイトを紹介した後、シミュレーション結果を踏まえた上で、どのように資産運用を行えばよいか解説します。今回の記事を参考に、あなたも老後に備えた資産運用の準備を始めてみませんか?
全国銀行協会の「ライフプランシミュレーション」
資産運用を始める前に、まずはライフプランをシミュレーションしてみましょう。ここで役立つのが、全国銀行協会の「ライフプランシミュレーション」です。
全国銀行協会「ライフプランシミュレーション」へのリンクはこちら
このサイトには、「きほんシミュレーション」と「くわしくシミュレーション」の2つのシミュレーションが用意されています。詳細にシミュレーションするためにも、「くわしくシミュレーション」を使うようにしましょう。
「くわしくシミュレーション」では、年齢、年収、貯蓄などの基本的な質問だけでなく、性格診断のような質問もあります。これらの複数の質問に答えて将来をシミュレーションをすると、下図のような結果が得られます。
上図のシミュレーション結果であれば、60歳の時点で4,000万円(退職金を含む)の貯蓄があることになります。4,000万円で十分と思うのであれば、無理に資産運用を行う必要はないでしょう。逆に、4,000万円では不十分と思うなら資産運用で増やす必要があります。
このように、ライフプランをシミュレーションすることによって、資産運用を行う必要があるか判断できるようになります。また、目標金額も定まるので、無理のない範囲で運用できるようになるでしょう。
このシミュレーションには、「介護費用」「冠婚葬祭の費用」「物価の上昇」「増税」などは加味されていないので、少し楽観的な結果が得られます。実際の貯蓄額は、シミュレーション結果よりも少なくなると考えておいてください。
長期の資産運用は「国際分散投資+積立投資」が基本
老後に備えた長期の資産運用を行うときは、「国際分散投資+積立投資」が基本です。これは、金融庁も推奨している資産運用の王道です。
国際分散投資とは、「国内外のさまざまな資産(株式、債券など)に分散して投資すること」です。そうすることで、世界の経済成長に歩調を合わせて、長期的に資産を増やせる可能性があります。
また積立投資とは、「積立定期預金のように、毎月一定の金額をコツコツと投資すること」です。積立投資を行うことによって、相場の変動に一喜一憂することなく淡々と投資を継続することができます。
実際、私も複数の投資信託を利用して、「国際分散投資+積立投資」を実践しています。長期の資産運用では、この2つが基本となるので、これを踏まえた上で運用プランを考えいきましょう。
金融庁の「資産運用シミュレーション」を利用して運用プランを考える
運用プランを考えるときは、「運用期間」「目標金額」「毎月の余裕資金」を考慮します。今回は、以下のケースで考えていきましょう。
- 運用期間:60歳までの20年間
- 目標金額:2,000万円
- 毎月の余裕資金:5万円
運用プランを考えるときは、「金融庁の資産運用シミュレーション」や「楽天証券のつみたて簡単シミュレーション」を利用するとよいでしょう。
今回は、金融庁の資産運用シミュレーションを使って解説していきます。
上図のように、まずは「毎月いくら積立てる?」をクリックします。今回のケースでは、「20年間で2,000万円」が目標なので、「積立期間:20年」「目標金額:2,000万円」と入力します。
また、想定利回り(年率)の欄には「3~6%」を入力します。過去の実績から考えると、国際分散投資を行えば年間5%以上の利回りは達成できます。ただ、実際には税金(利益の約20%を税金として徴収されます)も考慮する必要があるため、少し低めの値でシミュレーションするとよいでしょう。
3~6%の利回りでシミュレーションを行うと、毎月下記の金額を積み立てれば目標を達成できることになります。
- 利回り3%の場合:毎月60,920円
- 利回り4%の場合:毎月54,529円
- 利回り5%の場合:毎月48,658円
- 利回り6%の場合:毎月43,286円
山口さんの場合、毎月の余裕資金は50,000円なので、このシミュレーション結果を参考にすると、毎月45,000円くらいを積み立てるとよいでしょう。そうすれば、年間利回り5~6%で目標を達成できることになります。
このように、「運用期間」「目標金額」「毎月の余裕資金」から運用プランを考えることができます。積立投資による長期の資産運用は、継続することがとても大切です。そのため、ライフプランをよく考えた上で、無理のない範囲で投資金額を設定するようにしましょう。
株式投資は余裕資金で行う
ここまで、投資信託の積立投資を利用した資産運用について述べてきました。最後に、株式投資についてコメントしておきます。
私は普段から株式投資も行っていますが、株式投資は万人におすすめできる資産運用の手段ではありません。なぜなら、株式投資はハイリスク・ハイリターンだからです。短期間で大きな利益を得られることもありますが、逆に大きな損失を抱えることもあるのです。
実際、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のデータに基づくと、国内株式に投資したときの年間運用成績は「-44% ~ +55%」になる可能性が高いことが示されています。仮に、100万円を国内株式に投資した場合、1年後には56万円~155万になっている可能性が高いのです。
このように、株式投資はハイリスク・ハイリターンです。そのため、株式投資を行うときはなくなってもよい余裕資金を使うようにしましょう。
また、株式投資の場合は、将来の運用利回りを想定することができません。過去の実績もあまり参考にならないので、将来を見据えた運用プランを考えるときは、株式ではなく投資信託の積立投資を利用することをおすすめします。
まとめ
- 資産運用を始める前に、ライフプランをシミュレーションすることが大切である。そうすることで、無理な投資を避けることができる。
- 長期の資産運用を行うときは、「国際分散投資+積立投資」が基本である。これは、金融庁も推奨している資産運用の王道である。
- 積立投資は継続することがとても大切である。そのため、積立金額は無理のない範囲で設定するべきである。
今回は、ライフプランと運用プランをシミュレーションする方法について述べてきました。全国銀行協会や金融庁のウェブサイトを利用すれば、これらのシミュレーションを簡単に行うことができます。老後に備えた長期の資産運用を考えている人は、今回の記事を参考に、まずはこれらのウェブサイトを利用してみるとよいでしょう。