投資信託を買うとさまざまな手数料がかかります。その中でも代表的な手数料として、購入時手数料(販売手数料)運用管理費用(信託報酬)があります。

投資信託には大金を投じることもあるので、手数料が1%増えるだけで支払う金額は大きくなります。そのため、私たちは手数料に対して細心の注意を払う必要があるのです。

今回は、投資信託の手数料のうち、購入時手数料(販売手数料)について詳しく解説していきます。この内容を理解しておけば、無駄に多くの手数料を支払わなくて済むはずです。

販売手数料とは

販売手数料は投資信託を買うときに販売会社(銀行や証券会社)に支払う手数料です。

販売手数料の相場は投資金額の0~3%です。ただ、販売手数料は販売会社が自由に設定できるため、同じ投資信託であってもどの会社から買うかによって料金は大きく異なります(家電製品と同じようなイメージです)。

例えば、銀行や証券会社の窓口で投資信託を買うと、投資金額の2~3%が販売手数料として取られます。一方、SBI証券や楽天証券などのインターネット証券で買うと、まったく同じ投資信託でも販売手数料が安くなる場合があります。

また、同じ販売会社でも、窓口で購入するよりもインターネットで購入したほうが安いこともあります。

さらに、近年はインターネット証券を中心に、手数料が無料のノーロード投信が増えています。例えば、私が普段使っているSBI証券であれば、取り扱っている投資信託(約2,600件)のうち、半分(約1,250件)がノーロード投信になっています。

※ 「load」は「販売手数料」という意味の英単語です

このように、全体的にインターネット証券のほうが実店舗よりも販売手数料が安いです。そのため、投資信託を買うときは、ネット証券を有効活用することを強くおススメします。

支払い方法には「外枠方式」と「内枠方式」がある

販売手数料の支払い方法には外枠方式内枠方式があります。外枠方式は「投資信託の購入代金とは別に販売手数料を支払う方式」です。一方、内枠方式は「投資信託の購入代金から販売手数料を差し引く方式」です。

例えば、以下の条件で投資信託を購入したとします。

  • 購入金額:100万円
  • 販売手数料:3%(実際は手数料に消費税がかかりますが、今回は無視します)


このとき、外枠方式であれば、100万円とは別に3万円を支払います。一方、内枠方式であれば、販売手数料として3万円が購入金額から差し引かれます。そのため、実際の投資金額は97万円になります。

なお、内枠方式の金額に「約」が付いている理由が気になる人は次の「内枠方式の計算方法」を読み進めてください。ただ少々細かい内容なので、「約」が気にならない人は「販売手数料の比較方法」へと進んでください。

内枠方式の計算方法

内枠方式の場合、単純に「販売手数料 3万円」、「投資金額 97万円」とはなりません。なぜなら、投資金額が97万円だとすると、販売手数料はその3%の2万9,100円でなければならないからです。販売手数料として3万円を徴収するのは多すぎるのです。

そこで、内枠方式の場合は以下の手順で販売手数料を計算します。

  1. まずは正確な投資金額を算出します。投資金額と手数料の合計が100万円になるため、以下の数式が成り立ちます。
    (投資金額)+(投資金額)× 0.03 = 100万円
  2. この方程式を解くと、(投資金額)= 97万874円 になります。
  3. 最後に販売手数料を計算します。100万円から97万874円を引くか、97万874円に0.03をかけて算出します。いずれの計算方法でも、販売手数料は 2万9,126円 になります。


このように、内枠方式の場合は計算が少し面倒になることを理解しておいてください。

販売手数料の比較方法

先ほど、「同じ投資信託でも販売会社によって販売手数料は異なる」と述べました。では、家電製品の「価格.com」のように、販売手数料を比較できるウェブサイトはあるのでしょうか? 

残念ながら、すべての販売会社の手数料を正確に比較できるサイトはありません。

なぜなら、販売手数料は投資金額によって変化することがあるからです。投資金額が大きくなるほど手数料率が低くなるように設定されていることがあるのです。また上述のとおり、同じ販売会社でも、窓口とインターネットでは販売手数料が異なります。

このような理由があるため、すべてのパターンを正確に比較することは難しいのです。したがって、正式な販売手数料は各金融機関に問い合わせて確認するしかありません。

ただ、だいたいの目安を比較できるウェブサイトはあります。例えば、以下に示した「投資信託協会」や「モーニングスター」のウェブサイトであれば、各販売会社の販売手数料の目安を知ることができます。

投資信託協会:投信総合検索ライブラリー

モーニングスター

営業マンは販売手数料の高い投資信託を勧めてくる

最後に、販売手数料の平均値を紹介します。

販売手数料の平均値は毎年少しずつ変化していますが、だいたい2~3%の間で推移しています。実際、2014年以降の販売手数料の平均値は以下のようになっています。

  • 売れ筋上位5商品の平均値(青のライン):2.5%前後で推移
  • 販売した商品全体の平均値(赤のライン):2%強で推移

販売手数料の推移

このグラフでぜひ注目してほしい点があります。それは、すべての年において「売れ筋上位5商品の平均(青のライン)」が「商品全体の平均(赤のライン)」を上回っていることです。

これが何を意味しているかわかるでしょうか?

資産運用に慣れていない多くの人は「営業マンが勧める投資信託」を買います。つまり、「売れ筋上位5商品」は「営業マンが勧める商品」といいかえることができます。

そして、売れ筋上位5商品(=営業マンが勧める商品)の販売手数料は商品全体の平均値よりも上回っています。このことから、「営業マンは優先して販売手数料の高い商品を勧めている」と読み解くことができます。

金融庁の資料にこのような考察は書かれていませんでしたが、この考えは間違っていないはずです。

まとめ

  • 販売手数料は販売会社が自由に設定できる手数料である。そのため、同じ投資信託でもどの会社から買うかによって支払う手数料は異なる。
  • 銀行や証券会社の窓口よりもインターネット経由で買ったほうが販売手数料は安い。
  • 「投資信託協会」や「モーニングスター」のウェブサイトを利用すれば、各金融機関の販売手数料の目安を知ることができる。
  • 銀行や証券会社の営業マンは、手数料の高い投資信託を勧めてくることが多いため、注意が必要である。

今回は、投資信託の販売手数料について詳しく解説してきました。正確な販売手数料は目論見書(投資信託の説明書)にも書かれていないため、販売会社ごとに確認する必要があります。ただ、銀行や証券会社の窓口よりもインターネットで買ったほうが安いため、もし購入を考えているのであれば、インターネット経由で買うようにしましょう。