株式投資をしている人であれば損切り(ロスカット)の重要性を認識していると思います。投資信託と違って、株式投資では損切りはとても重要です。
私はファンダメンタル分析(企業の経営状態の分析)を行って業績の良い企業に投資するようにしていますが、予想に反して業績が伸びずに株価が低迷することもあります。そのようなときは私も損切りします。
そこで今回は、損切りの重要性について復習した後、損切りするときのコツについて述べていきます。末永く株式投資を続けるためにも、損切りのコツを習得しておきましょう。
損切りしないと痛い目にあう可能性がある
まずは株式投資における損切りの重要性について復習しておきましょう。
株式投資の最大のリスクは「投資先企業の倒産」です。当然ですが、投資先が倒産すると投資したお金は1円も戻ってきません。
実際、私も過去に「投資先の倒産」を経験したことがあります。2008年のリーマン・ショックが起こった後、私は宮城県仙台市に本社を構えるサンシティ(銘柄コード:8910)という不動産会社に約50万円を投資しました。
ところが、サンシティの株価は一向に上がる気配がありません。当時の私は投資初心者だったため、サンシティの株価が下がっているときも「きっと回復するだろう」と根拠のない予想をしていました。また、恥ずかしながら、当時のサンシティ社の経営状況をまったく把握していませんでした。
結局、サンシティの株価は回復することなく、2011年に倒産してしまいました。私が投資した約50万円は完全にパーになってしまったのです。
当時の私はリーマン・ショックで大きな損失を被っていたため、損失に対して感覚が麻痺しているところがありました。それでも「どこかで売っておけば少しはお金が戻ってきたのに。。」と思った記憶があります。
このように、株式投資では投資先が倒産してお金が戻ってこなくなるリスクがあります。
また、倒産に至らなくても、業績不振が続いて株価が低迷し続けることもあります。そのような場合、貴重な運用資金が不良銘柄に拘束されてしまいます(いわゆる「塩漬け状態」です)。そして、他に優良銘柄があっても「運用資金がないため投資できない」という状態になってしまいます。
このように、株式投資においては、倒産リスクを避けたり運用資金を確保したりするために、損切りがとても重要です。むしろ、損切りできない投資家は、株式投資に向いていないと言えるのです。
損切りできない理由:人は「得る喜び」よりも「失う痛み」を強く感じる
損切りの重要性は多くの人が認識しています。また、損切りは「保有している株を売るだけ」なので、手順としてはとても簡単です。ところが、心理的な側面が邪魔をして、損切りできない人が非常に多いです。実際、昔の私もそうでした。
人は「得る喜び」よりも「失う痛み」を強く感じると言われます。損切りは損失を確定させる行為なので、「お金を失う痛み」を強く感じてしまいます。そのため、多くの人は損切りできずに、含み損(買ったときよりも株価が下がっている状態)を抱えたまま放置してしまうのです。
このような塩漬け株(含み損があるまま放置している株)は、「保有し続ける」か「損切りする」か判断しなければなりません。思考停止状態で放置していてはいけないのです。
その株が将来値上がりすると考える根拠があれば、そのまま保有し続けてよいでしょう。しかし、「そのうち株価が回復するだろう」という希望的観測しかないのであれば損切りしたほうがよいでしょう。
このように、塩漬け株に対しては何らかの「判断」をする必要があります。そして、将来株価が上がると考える根拠がない場合は、躊躇なく損切りしなければなりません。ここで「失う痛み」を我慢できなければ、将来もっと大きな痛みを感じることになるかもしれないからです。
テクニカル分析派(短期投資)の損切り
ここまでは損切りの重要性について述べてきました。ここからは損切りのコツについて述べていきます。
損切りの仕方はテクニカル分析派(チャート分析して株の売買をすること)とファンダメンタル分析派(企業の経営状態を分析して株の売買をすること)で異なると思います。
私は後者なので、テクニカル分析派の損切りについてはあまり深く語れません。ただ、以前にテクニカル分析に関するセミナーを受講したことがあるので、そのときに教わったことを簡単に紹介します。
そこで、教わったことは以下の3点です。
- 損切りラインは「購入価格×0.95」(購入価格から5%値下がりしたら損切りする)
- 一切の感情を挟まず機械的に損切りする
- 可能であれば逆指値注文を入れておく(株価がある水準まで値下がりしたら自動的に売られるように注文を入れておく)
後述するとおり、私はこの3点とはまったく異なる基準で損切りをしています。ただ、テクニカル分析を重視する人はこのような目安を参考にしてみてください。
ファンダメンタル分析派(長期投資)の損切り
ここからは私の損切りに対する考え方を中心に解説していきます。
私は企業の経営状態を最優先して投資しています。株を購入するタイミングを見極めるためにテクニカル分析も行いますが、基本的にはファンダメンタル分析を重視しているのです。
そのため、私は「購入価格から何%下がったら損切り」という考え方はしません。私が重視しているのは購入価格ではなく、会社の四半期決算や本決算です。
これらの決算の内容が予想以上に悪く、株価が大きく下がったら損切りを検討します。そして、決算の内容を吟味して自分に「今、お金があったらこの株を買うか?」と自問自答します。「買う」という答えなら保有、「買わない」という答えなら売却です。
このように、私の場合は損切りの判断が遅いです。四半期決算や本決算が発表されてもすぐには売却しないので、損失が膨らんでしまうこともあります。このあたりは自分でも課題だと思っていますが、焦って安値で売ってしまうよりはマシと考えています。
私のスタイルは「損中利大」
あなたは「損小利大」という言葉を知っているでしょうか? 読んで字の如く、損失は小さくして、利益は大きくしましょうという意味です。そのため、「損切りはできるだけ早くし、利益確定はできるだけ遅くしましょう」という考え方が一般的です。
ただ、私の考え方は少しだけ異なります。私は自分の運用スタイルを「損小利大」に対して、「損中利大」と思っています。「損失は中くらい、利益は大きく」という意味です。本当は「損中利”巨大”」と言いたいところですが、語呂が悪いので、「損中利大」にしています。
そして、この言葉のイメージから想像できるかもしれませんが、私は損切りも利益確定も遅いです。すぐには売りません。そのため、損失が膨らんでしまうことがありますが、一方で、利益も大きく膨らむことがあります。
また、損切りや利益確定をするときは、落ち着いた状態で自分で判断してから売り注文を出すようにしています。日経平均が1,000円以上下落して相場が大荒れしていても関係ありません。私は「現物取引(自己資金のみで投資すること)&長期投資」が基本なので、日経平均が暴落しても狼狽売りすることはないのです。
ファンダメンタル分析派の損切りのコツ:購入価格を忘れる
ここまで私の損切りスタイルについて述べてきました。テクニカル分析派と違って「購入価格から何%下落」という考え方はしていないことがわかると思います。
そして、「今お金があったらこの株を買うか?」という自問自答だけを基準にします。つまり、過去の株価(購入価格)ではなく、今の業績と株価だけを頼りにしているのです。このように、購入価格を忘れた状態であれば、「損する痛み」をほとんど感じなくなります。
この考え方を身につけるには、最初は意識して実践する必要があるでしょう。ただ、すぐに慣れるので、ファンダメンタル分析派の人は、今回紹介した考え方で一度損切りしてみてください。
ちなみに、特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合、損切りすると証券口座の残高が増えます。損失が確定したことによって、それまでに払っていた税金の一部が戻ってくるからです。
そのため、「損切り=証券口座の残高を増やす行為」と考えれば、損切りのハードルは下がるのではないでしょうか。
まとめ
- 株式投資においては、倒産リスクを避けたり運用資金を確保したりするために損切りしなければならない。
- ファンダメンタル派の損切りのコツは「購入価格を忘れること」である。そして、「今お金があれば、この株を買うか?」と自問自答し、「買う」という答えなら保有し、「買わない」という答えなら売却する。
今回は株式投資における損切り(ロスカット)について、私の考えを述べてきました。ファンダメンタル分析派で現物取引を中心に株取引をしている人は、今回紹介した方法を一度試してみてください。あまりストレスを感じることなく損切りできるようになるかもしれません。