株式投資をしているとPER(株価収益率)という用語を耳にする機会があると思います。PERは株価の割安 or 割高を判断する重要な指標です。

そこで今回は、「PERの意味」や「私の投資判断基準」について述べていきます。私のようにファンダメンタルズ(企業の経営状態)を重視する投資家は必ずPERを確認しています。あなたも割安成長株への投資を考えているのであれば、PERの概要をしっかりと把握しておきましょう。

PERの意味

まずはPERの意味を確認しておきましょう。書籍などでは、PERは以下のように説明されています。

  • PERは「Price Earnings Ratio」の略で、日本語では「株価収益率」と呼ばれます。
  • PERは「現在の株価」が「1株あたり利益」の何倍の水準にあるかを示しており、「株価 ÷ 1株あたり利益(EPS)」で計算されます。

<PERの計算式>
PER = 株価 ÷ 1株あたり利益(EPS)

間違ってはいないのですが、とてもわかりにくい説明です。

もう少し簡単に説明すると、PERは「① 投資した金額を回収するのに必要な年数」です。あるいは少し難しくなりますが、「② 利回りの逆数(1 ÷ 利回り)」と表現することもできます。

例えば、PER 20倍の銘柄に100万円を投資したとします。①と②の考え方で「PER 20倍」を解釈すると以下のようになります。

① この株を20年間保有し続けると100万円を回収することができる。
② この株の利回りは5%である。つまり、毎年5万円の利益を生み出している。

なんとなくイメージをつかめたでしょうか? それでは、①と②についてもう少し詳しく解説していきます。

企業の純利益はすべて株主のものである

PERが「① 投資したお金を回収するのに必要な年数」や「② 利回りの逆数(1÷利回り)」ということを理解するためには、前提として「会社の純利益(税金などを差し引いた後の最終的な利益)はすべて株主のもの」ということを知っておく必要があります。

ただ、すべての純利益が株主に配当金として還元されるわけではありません。株主に配当金として還元されるのは純利益の一部です。残りの利益は利益剰余金として会社の純資産に組み入れられます。そもそも会社の純資産は株主のものなので、利益剰余金が純資産に入るのは当然なのです。

黒字企業の純資産は毎年大きくなる

会社は純資産を使って次年度以降の設備投資や新たな事業を行います。そして、次年度に得た純利益もすべて株主のものになります。毎年このサイクルが続くのです。

このように、「企業が生み出した利益はすべて株主のものである。ただし、配当金として受け取るのはその一部だけである。」ということを理解しておいてください。この考え方はPERだけでなく、さまざまな指標を読み解く上で役立ちます。

PERは「投資回収年数」or「株式益回りの逆数」である

それではPERの説明を進めていきます。

下図はトヨタ自動車(銘柄コード:7203)の株価と利益の推移を示した表です。現在の株価は6,696円、2019年3月期の1株あたりの利益は781円と予想されています。

トヨタ自動車の株価と1株あたり利益

これは「現在6,696円で1株買うと、1年間で781円の利益が生み出される」という意味です。この考え方はとても重要です。この考え方ができれば、①と②の理解が進むはずです。

ちなみに、1株あたりの配当金は220~230円と予想されています。これを踏まえて、1株が生み出す利益の流れを図示すると下図のようになります(図では配当金=220円としています)。

1株が生み出す利益の流れ(トヨタ自動車)

ここで質問です。このとき、① 投資金額(6,696円)を回収するには何年かかるでしょうか? また、② 1年あたりの株式益回り(利回りのこと)は何%でしょうか?

① の答え:8.57年
この値は「6,696円 ÷ 781円」で計算できます。上述のとおり利益はすべて株主のものなので、利益剰余金も含めて考えると、8.57年あれば投資金額を回収できることになります。

そして、ここで使った計算式(6,696円 ÷ 781円)こそ、PERの計算式(株価 ÷ 1株あたり利益)です。したがって、このときのトヨタ自動車のPERは8.57になります。


② の答え:11.7%
6,696円で買った株が781円の利益を生み出すので、その利回りは「781円 ÷ 6,696円」を計算して11.7%になります。これはPERの計算式の分子と分母が入れ替わっただけです。

つまり、株式益回りはPERの逆数(1÷PER)なのです。いいかえると、PERは株式益回りの逆数(1÷株式益回り)ということになります。


このように、PERは「投資したお金を回収するのに必要な年数」あるいは「株式益回りの逆数」と考えることができます。単に「現在の株価が1株あたり利益の何倍の水準かを示した値」と覚えるよりは、理解が深まったのではないでしょうか。

成長企業のPERは高くなる

先程はトヨタ自動車の例を用いてPERの説明を行いました。では、下図のメディカル・データ・ビジョン(3902)という会社の場合はどうでしょうか?

メディカル・データ・ビジョンの株価と一株あたり利益

この会社は2016年以降、驚異的なスピードで成長しています。1年間で1株あたりの利益が約1.5倍になっているのです。

このような成長企業の場合、年を追うごとに会社が生み出す利益が大きくなっていきます。そのため、投資回収年数は年を追うごとにどんどん短くなり、株式益回りは年を追うごとにどんどん増えていきます。つまり、PERは年を追うごとに小さくなっていくのです。

そのため、このような成長企業の”現在の”PERは、将来の成長を織り込んでとても大きくなることがあります。実際、メディカル・データ・ビジョンのPERは141.76倍(1,772円 ÷ 12.5円)にまで膨れ上がっています。

メディカル・データ・ビジョンのPER

もしこの企業が成長しなければ、投資したお金を回収するのに142年間もかかってしまいます。つまり、現在の1株あたり利益を基準に考えると、極めて割高な水準になります。

しかし、多くの投資家は「企業の高成長が続くだろう」と考えているため、このような割高な水準になるまで株が買われているのです。

このように、高成長企業のPERはかなり大きくなります。そのため、もし成長が止まれば「株価は超割高」と判断する人が増えて、株価は急落します。成長企業への投資にはこのようなリスクがあることも理解しておきましょう。

私の投資判断基準

最後に私の投資判断基準を紹介します。

私は基本的に「割安成長株を買って数ヶ月~数年後に売却する」という投資スタンスです。その際、投資先はなるべく「PER 20倍以下」の企業を選ぶようにしています。

PER 20倍以下なので、「投資したお金を回収するのに必要な年数は20年以内=株式益回りは5%以上」ということになります。

また一般的にも、「PER 10倍以下は割安」「PER 20倍以上は割高」と考えられているので、上記の判断基準は妥当な水準だと思っています。

なお、私の場合は「一株あたり利益の成長率が13%以上」「財務状況がよい」という条件を満たせば、PERが20倍以上でも投資することがあります。

ただ、成長が止まったときのリスクを考えると、あまりに高PERの企業への投資はなるべく避けたいところです。

※ 成長企業に投資する際の基準については以下の記事で詳しく解説しています。

PERの注意点①:成長企業の場合はPEGレシオを確認しよう


あなたも割安成長株への投資を考えているのであれば、今回紹介した基準は参考になると思います。ただ、PERだけで投資先を選ぶのは危険なので、今回の基準を参考にしつつ、財務状況なども分析するようにしましょう

まとめ

  • PER(株価収益率)は「株価 ÷ 1株あたり利益」で計算される指標である。
  • PERは「投資したお金を回収するのに必要な年数」あるいは「株式益回りの逆数」と考えることができる。
  • 一般的に「PER 20倍以上は割高」と考えられているため、なるべくPER 20倍以下の企業に投資したほうがよい。

今回は、PERの意味や投資判断基準について詳しく解説してきました。私のように企業のファンダメンタルズを重視する投資家は、必ずPERを確認しています。割安成長株への投資をする上でとても重要な指標なので、今回の内容はしっかりと理解しておきましょう。