販売会社(証券会社や銀行のこと)のHPには、販売件数ランキング、販売金額ランキング、騰落率ランキングなど、さまざまな投資信託ランキングが掲載されています。そして、資産運用に慣れていない人は、これらのランキングを参考に投資信託を選ぶことがあります。
しかし、販売会社が掲載しているランキングのほとんどは投資信託を選ぶ上で参考になりません。
そこで今回は、販売会社の投資信託ランキングがあまり参考にならない理由を述べていきます。また、投資信託を選ぶ際に参考になるランキングについても紹介します。長期で安定した資産運用を行うためにも、販売会社のランキングに惑わされないようにしましょう。
販売会社はすべての投資信託を取り扱っているわけではない
現在、日本には6,000本以上の投資信託が存在します。しかし、販売会社はこれらの投資信託をすべて取り扱っているわけではありません。
例えば、私が主に使っているSBI証券では、約2,600本の投資信託を取り扱っています。一方、某銀行では250本程度の投資信託しか扱っていません。いずれの販売会社も日本にあるすべての投資信託を取り扱ってはいないのです。これは他の販売会社も同じです。
そして、販売会社は自社が取り扱っている投資信託の中だけでランキングの順位付けを行っています。そのため、ランキングの順位は販売会社ごとに異なるのです。
例えば、某銀行のHPでは「MHAM日本成長株オープン」という投資信託が、年間騰落率ランキング1位になっています。ところが、SBI証券の年間騰落率ランキングでは、「MHAM日本成長株オープン」は7位になっているのです。
このように、販売会社は自社が取り扱っている投資信託の中だけで順位付けを行っています。すべての投資信託を対象にしているわけではないので、販売会社のランキングはあまり参考にならないのです。
短期的な運用成績が良くても意味がない
投資信託は10年以上の長期保有が基本です。そのため、投資信託を短期間で売買することにあまり意味はありません。
ところが、販売会社のHPに掲載されているランキングは、なぜか「週間ランキング」や「月間ランキング」であることが多いです。このような短期間のランキングには意味がないので、あまり参考にしてはいけません(3年や5年のように長期のランキングを掲載している販売会社もあります)。
ただ、残念ながら「月間騰落率ランキング 1位」のように、短期的に値上がりしている投資信託に魅力を感じて買ってしまう人がたくさんいます。
落ち着いて考えればわかることですが、過去1ヶ月間で値上がり率1位だったとしても、その後も高い値上がり率をキープするとは限りません。
また、月間騰落率1位を獲得する投資信託は、「中国株ファンド」や「ブラジル株ファンド」のように、投資対象がかなり絞られている場合があります。このような投資信託は、ブームが去った後は急に値下がりするため、場合によっては大きく損をしてしまう可能性があります。
このように、短期間のランキングを参考にして、ランキング上位の投資信託を買う必要はまったくないのです。
販売会社の「積立設定件数ランキング」は参考になる
ここまで「投資信託を選ぶ上で、販売会社のランキングは参考にならない」というスタンスで解説してきました。しかし、すべてのランキングが参考にならないわけではありません。
販売会社によっては、積立設定件数ランキングを掲載していることがあります。この「積立設定件数ランキング」は参考になります。
積立設定件数ランキングが参考になる理由
積立投資をしている人は「投資信託は長期で運用するもの」と理解している人です。つまり、「積立設定件数が多い投資信託 = 長期保有する人が多い投資信託」と考えることができます。
このような投資信託であれば、すぐに解約される可能性(=投資信託から資金が流出する可能性)は低いです。むしろ、積み立てによって、投資信託に継続的に資金が流入します。そして、「資金の流入」は投資信託においてとても重要です。
なぜなら、継続的に資金が流入する投資信託では、安定した運用が可能になるからです。そのため、繰上償還(くりあげしょうかん)されるリスクが低いのです。
一方、資金が流出する投資信託では繰上償還のリスクが高くなります。また、資金がなければ、株価の下落局面で株式を追加購入することも難しくなります。
さらに、積立設定件数ランキング上位の投資信託は、信託報酬(投資信託を保有している間にかかる手数料)が安い場合が多いです。投資信託を長期で保有する人が買っているので、必然的に信託報酬の安い商品が選ばれているのです。
このように、販売会社が出しているランキングのうち、「積立設定件数ランキング」は参考になることを覚えておきましょう。
モーニングスターのランキングは参考になる
最後に、モーニングスターが出しているランキングを紹介します。
モーニングスターは、機関投資家や個人投資家向けに投資信託の格付けなどを行っている企業です。投資信託に関するさまざまな情報をウェブサイト上にまとめているため、投資信託の調査をする際にとても役立ちます。
そして、下記のリンク先にある「ファンドランキング」では、販売会社とは異なるさまざまなランキングが掲載されています。
上図のように、モーニングスターのファンドランキングでは、以下のランキングを掲載しています。
- リターン(運用成績)
- レーティング(格付け)
- シャープレシオ(リスクに対するリターンの大きさを数値で表したもの)
- コスト(手数料)
- 純資産(投資信託が保有している現金や株式などの総額)
また、販売会社とは違い、ほぼすべての投資信託が対象となっています。さらに、週間ランキングや月間ランキングだけではなく、最大で過去10年間のランキングを確認することができます。
このように、モーニングスターのファンドランキングには、販売会社のランキングにはないメリットがあります。もし、ランキングを確認したいのであれば、このようなウェブサイトを利用するようにしましょう。
まとめ
- 証券会社や銀行などの販売会社は、自社で取り扱っている投資信託の中だけで順位付けを行っている。すべての投資信託が対象ではないため、販売会社のランキングはあまり参考にならない。
- 投資信託は長期保有が基本である。そのため、短期間のランキングを参考にしてはいけない。
- 販売会社が掲載している「積立設定件数ランキング」やモーニングスターが掲載しているファンドランキングは参考になる。
今回は、投資信託のランキング情報について詳しく解説してきました。長期に渡って確実に資産を構築するためにも、販売会社が掲載している売れ筋ランキングなどの情報に惑わされないようにしましょう。