企業の経営状態を分析する上でROEという指標はとても重要です。実際、私が投資先の企業を分析するときも、必ずROEをチェックしています。

そこで今回はROEの概要について解説していきます。また、投資先の企業を選ぶ際に私が試験的にトライしていることについても紹介します。ROEは投資先を評価する上でとても重要な指標なので、その概要を理解しておきましょう。

※ ROEは「Return On Equity」の略で、日本語では「自己資本利益率」と呼ばれます

ROEとは?

まずは以下の2つの会社をイメージしてみてください。

山口商店(株):地元住民に愛される雑貨屋。1年間の純利益は1,000万円。
ヤマグチ自動車(株):海外にも販売網を広げる大企業。1年間の純利益は1,000万円。

どちらも純利益は1,000万円ですが、会社の規模はまったく違うことがイメージできると思います。

それでは、どちらのほうが経営効率はよいでしょうか? いいかえると、どちらのほうが少ない自己資本(株主から集めたお金など)で多くの利益を得ているでしょうか?

この2社の場合、山口商店(株)のほうが経営効率はよいです。ヤマグチ自動車(株)は企業の規模を考えると、もっと多くの利益をあげなければならないのです。

そして、この2社の経営効率の違いは「ROE」という数値で明確に表されます。なぜなら、ROEは「企業が自己資本をどれだけ効率よく利用して利益を得ているか」を示す指標だからです。具体的には、ROEは以下の計算式で算出されます。なお、ROEの単位は%です。

【ROEの計算式】
ROE (%) = 純利益 ÷ 自己資本 × 100

純利益とは、税金などを支払った後の最終的な利益のことです。また、自己資本とは「株主から集めたお金」や「会社が過去に稼いで蓄えた利益」のことです。ここでは簡略化して、「自己資本=株主から集めたお金」として考えていきます。

山口商店(株)は会社の規模が小さいので、株主から集まるお金は少ないです。つまり、自己資本は小さいです。一方、ヤマグチ自動車(株)は大企業なので、山口商店(株)とは反対に自己資本は大きくなります。

仮に、山口商店(株)の自己資本が5,000万円、ヤマグチ自動車(株)の自己資本が10億円だったとします。

ROEのイメージ

このとき、山口商店(株)のROEは20%(1,000万円÷5,000万円×100)になります。一方、ヤマグチ自動車(株)のROEは1%(1,000万年÷10億円×100)になります。したがって、山口商店(株)のほうが経営効率は20倍高いということになります。

純利益 自己資本 ROE
山口商店(株) 1,000万円 5,000万円 20%
ヤマグチ自動車(株) 1,000万円 10億円 1%

このように、ROEは企業の経営効率の表す鏡であることを理解しておきましょう。

「ROEの高い企業=株主が利益を得やすい企業」である

株式会社が得た純利益は基本的には株主のものです。実際、純利益の一部は配当金という形で株主に分配されます。

仮に、山口商店(株)とヤマグチ自動車(株)が純利益1,000万円をすべて配当金として株主に分配するとします。このとき、株主としては、どちらの企業に出資したいと思うでしょうか?

出資金と配当金

同じ金額の配当金が分配されるのであれば、出資金額は少ないほうが投資効率は高いといえます。そのため、株主にとっては山口商店(株)のほうが投資効率の高い企業ということになります。

このように、ROEが高い企業(経営効率が高い企業)は株主にとってもメリットのある企業なのです

ROEの目安

日本の株式市場全体で見ると、ROEの平均は約8%です。ただ、投資先の企業を選ぶときは、「ROE 10%以上」を目安にするとよいでしょう。実際、私もROEが10%以上の企業に投資するようにしています。

ただ、ROEは企業の純利益と自己資本によって毎年変化します。そのため、すでに投資している企業に関しても、定期的にROEの変化をチェックしておいたほうがよいでしょう。

ちなみに、米国企業ではROEの平均が15%程度といわれています。日本よりも株主からの要求が厳しく、効率を追求した経営を行っているため、このような高いROEを実現していると考えられます。

IT関連企業はROEが高い

ROEは経営効率を示した値なので、巨額の設備投資をしている企業はROEが低くなりがちです。逆に、工場などの設備を必要としない企業はROEが高くなりやすいです。

特に、IT関連企業は全体的にROEが高い傾向にあります。実際、私もこれまで多くの企業を分析したり投資したりしてきましたが、財務状態を指標に企業を選別すると、IT関連企業が投資先候補として残ることが多かったです。

このように、ROEには企業のビジネスモデルも関連します。ROEは10%以上が目安になりますが、IT業界であれば、目安以上の企業がたくさん見つかるはずです。

私のチャレンジ:今はROEが低いが将来ROEが上がる企業を探す

ここまでの説明で、ROEの重要性や目安は理解できたと思います。ここからは、ROEについてもう一歩踏み込んで考えていきます。

ROEが低い会社は株主にとってまったく魅力がない会社でしょうか? たしかに、「ROEが低い会社=経営効率が悪い会社」なので、現時点では株主にとって魅力的ではありません。

ただ、そのような会社は「ROEの伸びる余地がある会社」といいかえることができます。つまり、今はROEが低くても将来ROEが高くなる可能性があるのです。そのような企業に投資することができれば、将来的に大きな利益を得られる可能性があります。

そこで、私は「今はROEが低いけれど将来的にROEが伸びそうな企業」を探して投資できないかと考えています。そのような会社を探すのは簡単ではありませんが、私は以下の3点をポイントに企業を探すようにしています。

売上が伸びている企業

ROEは「資本を効率よく回してどれだけ利益を得ているか?」を示す指標です。あくまで「利益」を重視した指標であり、売上は関係しません。

ただ、利益を得るためには売上が必要です。そのため、売上が伸びている企業は将来的に利益が増える可能性があります。そして、利益が増えることでROEも大きくなります。したがって、売上の増加は将来的にROEの改善につながる可能性があると考えられます。

創業して間もない企業

これは上記の「売上が伸びているが利益が少ない企業」に関連します。創業して間もない企業は売上があっても赤字であることが多いです。

しかし、ビジネスの拡大や業務改善の余地が大きく残されているため、順調に成長していけば利益が増える(=ROEが大きくなる)可能性があると考えられます。

IT関連企業

上述のとおり、IT関連の企業はROEが高くなりやすいです。そのため、現時点でROEが低かったとしても、他の業界の企業に比べると将来的にROEが伸びる余地はあると考えられます。

上述のとおり、私は基本的には「ROE 10%以上の企業」を選んで投資するようにしています。ただ、一部の資金を使って、「将来的にROEが大きくなりそうな会社」を選んで投資するようにしています。

この投資がうまくいくかどうかわかりませんが、仮説と検証を繰り返しながら自分なりのスタイルを確立したいと思います。

まとめ

  • ROE(自己資本利益率)は「自己資本を使ってどれだけ効率よく利益を得ているか?」を表した指標である。
  • ROEの高い企業(=経営効率のよい企業)は、株主にとってもメリットのある企業である。
  • 投資先の企業を選別するときは「ROE 10%以上」を目安にするとよい。
  • 今はROEが低くても、将来的にROEが大きくなる企業に投資できれば、大きな利益を得られる可能性がある。

今回は、企業の経営効率を評価する際に役立つ「ROE」について解説してきました。ファンダメンタル分析(経営状態の分析)を行う上で、ROEはとても重要な指標です。長期視点で株式投資をする人は、投資先を選ぶときには必ずROEを確認するようにしてください。