世の中に投資詐欺の事例は腐るほどあります。実際、私も私の友人も投資詐欺に遭って大金を失いました。

今回は私の身の回りで起こった3件の投資詐欺について紹介します。この事例をヒントに、あなたも被害者にならないように気をつけてください。

友人Eさんは「仕手株情報」に騙された

まずは私の友人Eさんの事例を紹介します。

Eさんはインターネットで見つけたある投資顧問会社のメールマガジンに登録しました。その後、その投資顧問会社とやり取りするうちに相手から電話がかかってきたそうです。電話の要件は下記のとおりです(案件①とします)。

<案件①の内容>

  • 参加費50万円の有料会員制度がある。
  • 会員期間は4ヶ月間だが、その間に仕手株情報を順次提供する。
  • 仕手株なので、うまくいけば株価はすぐ上昇する。数ヶ月で株価が40倍になった例もある。
  • 思ったように株価が上がらなかったとしても、次の仕手株情報をすぐに提供する。

※ 仕手株:多額の資金を持った集団が発注する大量の売買注文によって、意図的に株価が操作される銘柄のこと。時価総額が低く、株価が動きやすい低位株が狙われやすい。

この話を信用してしまったEさんは、すぐに参加を申し込みました。

しかし、提供された情報にしたがって株を購入しても株価は一向に上がりません。その後も情報提供は続きましたが、結局株価が急上昇する銘柄はひとつもありませんでした。Eさんが支払った参加費50万円は完全に無駄だったのです。

これだけでも立派な詐欺ですが、会員期間中にEさんには下記のような連絡があったそうです(案件②)。

<案件②の内容>

  • 「半年以内に株価13倍以上を保証する今年最大の仕手株情報」がある。
  • 通常の仕手株情報とはランクが異なるので、この情報を得るためにはさらに90万円の入金が必要となる。


ただ、Eさんはこの投資顧問会社のことを「怪しい」と感じていたため、案件②は断りました。

Eさんは、「案件①の仕手株の株価がひとつでも急騰していたら、案件②に申し込んでいたかもしれない。ただ、案件①について問い合わせてもまともな回答がもらえなかったことから、詐欺かなと思った」と話していました。

このように、「仕手株情報を提供する」というのはよくある詐欺の手口です。Eさんは冷静な人でしたが、投資に関してはかなりアクティブな性格でした。そこにつけ込んだ投資顧問会社の巧みな話術に騙されてしまったのです。

友人Hさんは「裁定取引案件」に騙された

私の友人のHさんは、会社の先輩から資産運用のプロを紹介されました。その人はHさんに下記の投資案件(案件③)を勧めてきました。

<案件③の内容>

  • 裁定取引を利用した投資案件がある。裁定取引なので、損をすることはない。
  • 1口(100万円)投資すれば、運用益として毎月5万円を受け取ることができる。
  • 1ヶ月で5%の利回り(5万円÷100万円)なので、20ヶ月で元本を回収できる。21ヶ月目以降に受け取る運用益はすべて利益になる。

※ 裁定取引:同じ価値を持つ2つの金融商品に一時的な価格差が生じた際、割安なほうを買って割高なほうを売ることで利益を得る取引。日経平均先物取引とオプション取引などを利用して行われることがある。

この話を聞いたHさんは1口だけ参加することにしました。すると、100万円を投資した翌月、Hさんの銀行口座に5万円が振り込まれました。

その後も5万円が振り込まれ続けたため、Hさんはさらに口数を増やすことにしました。そして、最終的に5口(500万円)を投資し、一月あたり25万円が振り込まれるようになったのです。

ところが、総額で約200万円を受け取った頃からお金が振り込まれなくなりました。実はこの投資案件は、ニュースでも報道された投資詐欺(被害総額は100億円以上!)だったのです。Hさん自身も約300万円の損害を被ってしまい、とても大きなショックを受けました。

このように、「最初は顧客に儲けてもらい、その後、気が緩んでいる顧客から大金を巻き上げる」という詐欺案件も横行しています。最初に利益を得ると警戒心が小さくなるため、騙されやすくなってしまうのです。

先程のEさんのケースでは、案件①で儲けられなかったため、案件②を断ることができました。しかし、Hさんの場合は、最初に利益を得てしまったため、ついつい追加投資をしてしまったのです。

私は「未公開株ファンド」に騙された

ここまで友人の例を紹介してきましたが、最後に私が被害に遭った例を紹介します。

社会人3年目の2007年頃、私は「ベトナムへの投資」というセミナーに出席しました。当時、ベトナムの経済成長率は非常に高く、VISTAの一角としてとても注目されていたため、迷わずセミナーへの参加を決めたのです。

※ VISTA:ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチンのこと。2006年頃に経済成長の著しい新興国として注目されていた。

セミナー主催者はファンド運営会社の社長でした。彼はベトナムのズン首相(2007年当時)と家族ぐるみの付き合いをしていました。実際、ズン首相と一緒に写った写真が何枚も紹介されました。

そして、セミナーの最後に「ベトナムファンド」(案件④)が紹介されたのです。

<案件④の内容>

  • ズン首相が関係している証券会社(GFIN社といいます)がベトナム市場に上場予定である。この会社の株(未公開株)を上場前に購入することができる。
  • 上場すれば株価は間違いなく数倍になる。また、首相が関係している会社なので倒産することはない。
  • 1口12万円から投資できる。


ベトナムファンドの概略は下図のとおりです。

ベトナムファンドの仕組み

GFIN社が首相関連の会社ということもあり、私はあまり疑うことなく10口(120万円)を投資してしまいました。

ところが、GFIN社は一向に上場する気配がありません。そうこうするうちに、2008年にリーマン・ショックが起こります。すると、GFIN社は証券会社から旅行代理店やコンビニに姿を変えていき、最終的に音信不通になったのです。

GFIN社という会社が本当に存在していたのかさえ私にはわからなくなりました。最終的にファンドの運営会社からは以下のような通知が届きました。

<ファンド運営会社からの通知>

  • 5万円を返金できる。
  • 返金を望まない場合、5万円を当社(ファンド運営会社:拠点はベトナム)の株式に投資することができる。その際、4倍の金額(20万円)に相当する株式をお渡しする。
  • 当社の配当利回りは15%なので、毎年3万円の配当金を受け取ることができる。また、ベトナムでのカジノ関連事業が活況なので、株価の上昇も期待できる。


「120万円 → 5万円」なので、なんと96%の損失です。私としては、「5万円だけ返金されても・・・」という気分だったので、ファンド運営会社の株式に投資することにしました。

すると、後日下記のような株券が送られてきました。

ベトナムファンド運営会社の株券

ご覧のとおり、株主(私)の名前、証明書番号、保有株数の欄が手書きです。保有株数「1」を×印で消して、「$2,100」と上書きされています。もちろん訂正印などはありません。このような手書きのものが正式な株券として認められるのでしょうか?

この手書きの株券を受け取って、私もようやく騙されたことに気づきました。結局、配当金を受け取ることは一度もありませんでした。また、株主への事業報告なども一切なく、現在は連絡しても返信がない状態です。

このように、「未公開株への投資」という投資詐欺も世の中にはたくさんあります。私の場合は、「ズン首相とファンド運営会社社長との写真」で安心してしまい、GFIN社のことを細かく確認せずにこの案件に引っかかってしまいました。

今では「いい勉強だった」「話のネタになる」と思えるようになりましたが、それでもやはり悔しい気持ちがあります。悔しさを晴らすために、ファンド運営会社や代表者の名前を公表しようかとも思いましたが、なんとか踏みとどまってモザイクを掛けることにしました。

今回紹介した事例を参考に、あなたも被害者にならないように「人から勧められる投資案件」には細心の注意を払うようにしてください。

まとめ

  • 世の中には投資詐欺案件がたくさんある。
  • 私の友人と私は「仕手株情報」「裁定取引」「未公開株」などの詐欺に引っかかってしまった。
  • 被害者にならないためにも、「人から勧められる投資案件」には十分に注意しなければならない。