株式投資をしていると「ストップ高」や「ストップ安」という言葉を耳にすることがあります。ストップ高はその日の株価の上限、ストップ安は株価の下限のことです。つまり、「ストップ高=一日で株価がすごく上がった、ストップ安=一日で株価がすごく下がった」ということになります。

株を始めたばかりの初心者は「ストップ安で買えば安く買える」、「ストップ高で売れば高く売れる」と安易に考えがちです。ただ、現実はそんなに甘くありません。ストップ高やストップ安になった翌日以降の株価は容易に予測できないからです。

今回は、ストップ高やストップ安の意味について解説していきます。また、ストップ高やストップ安になると、あなたが出した注文はどのように取引されるのかについても解説します。

ストップ高やストップ安のように株価が大きく動いたときほど冷静になる必要があります。どのような状況でも落ち着いて判断できる投資家を目指しましょう。

値幅制限の意味と特徴

上述のとおり、株式市場において株価が1日の値幅制限の上限まで上昇することをストップ高、値幅制限の下限まで下落することをストップ安といいます。

証券取引所では、前日の終値を基準価格にして値幅制限を設定しています。株価の値幅制限を一覧で表したものが下記の「値幅制限表」です。
値幅制限表

例えば、前日の終値が800円の場合、値幅制限表の「基準価額が700円以上~1,000円未満」の欄を見ます。すると、当日の制限幅は±150円であることがわかります。

つまり、その日は650円から950円の範囲で株価が変動することになります。この場合は、「株価950円=ストップ高」「株価650円=ストップ安」です。当然、その日は株価が950円以上や650円以下になることはありません。

業績の上方修正や政府の経済政策などの好材料が発表されたときに株価は上昇します。逆に、業績の下方修正などの悪材料が出たときは株価が下落します。そして、いずれの場合も極端に株価が動くとストップ高やストップ安の株価に到達します。

値幅制限には「投資家心理が過熱しすぎるのを防ぐ」「異常な値動きを制限する」などの効果があります。異常な株価の変動は投資家のみならず経済にも悪影響を与える可能性があります。投資家や相場を保護するために、値幅制限は重要な役割を果たしているのです。

値幅制限における比例配分

通常、朝9:00の取引開始時には板寄せ方式で株価が決まります。

※ 板寄せ方式(複雑なので読み飛ばしても構いません)
売り注文の注文数を株価の低いほうから順に足していきます。また、買い注文の注文数を株価の高いほうから順に足していきます。売り注文の合計数と買い注文の合計数が逆転する株価からその日の取引が始まります。


板寄せ方式

しかし、買い注文(or 売り注文)に偏った場合、取引開始時の株価が決まらずにそのままストップ高(or ストップ安)になります。このとき、「寄らずにストップ高になった」というふうに表現します。売買注文が偏っているため、通常の板寄せ方式では取引は成立しません。

そこで、証券取引所ではストップ高(or ストップ安)の株価で売買を成立させます。そして、各証券会社からの発注株数に比例して取引が成立した株を配分します。これを比例配分といいます。わかりにくいと思うので、以下の具体例を見てください。

比例配分の例
買い注文100万株、売り注文10万株でストップ高になったとします。この場合、ストップ高の株価で10万株分の取引が成立します。つまり、買い注文のうち1/10だけが約定し、残りの90万株の注文は失効します。

仮にA証券会社から20万株の買い注文、B証券会社から30万株の買い注文、C証券会社から50万株の買い注文が入っていたとします。この注文数に応じて、約定した株を配分するのです。

取引が成立したのは10万株(=売り注文の数)だけです。そのため、この10万株を各証券会社に配分します。今回の場合、A証券に2万株、B証券に3万株、C証券に5万株が配分されます。

各証券会社からの注文
注文数に応じた比例配分

図のように、取引が成立した株は、証券取引所 → 各証券会社 → 投資家の順に配分されていきます。

各証券会社から投資家への割り当ては、発注時間や発注方法などを考慮して各社のルールに基づいて行われます。そして上述のとおり、ほとんどの買い注文は失効しているため、すべての投資家が株を買えるわけではありません。

このようにストップ高の場合は、買いたい人が大勢いるので買い注文を出しても買えない場合があります(売り注文は約定します)。逆に、ストップ安の場合は、売りたい人が多いので売り注文を出しても売れない場合があるのです(買い注文は約定します)。

いいかえると、「人気のありすぎる株は買えない、人気がなさすぎる株は売れない」ことがあるのです。

翌日以降の株価の動き

ストップ高やストップ安の翌日以降の値動きを予測することは基本的に不可能です。何日か連続でストップ高になる場合もあれば、翌日は大きく値下がりする場合もあります。

株初心者の中には、「ストップ高で売ったら高く売れる」「ストップ安で買ったら安く買える」と安易に考える人もいますが、そんなに簡単なものではありません。数日間連続でストップ高やストップ安になることもあるので、そのような安易な取引は控えましょう。

また、値幅制限には下記のような特別措置もあります。安く買えると思ってストップ安で買ったら、翌日以降も大暴落して大きな損失を抱えるリスクもあるのです。

値幅制限の特別措置

3日連続で寄らずにストップ高になった場合、上限の値幅が2倍になります。逆に、3日連続で寄らずにストップ安になった場合、下限の値幅が2倍になります。

<値幅制限の特別措置の例>

  • 4月1日(月):A社株の終値は1,000円でした。そして、夕方に業績の大幅な上方修正が発表されました。
  • 4月2日(火):上方修正の影響で寄らずにストップ高になりました(終値 1,300円)
  • 4月3日(水):この日も寄らずにストップ高になりました(終値 1,600円)
  • 4月4日(木):この日も寄らずにストップ高になりました(終値 2,000円)
  • 4月5日(金):前日の終値が2,000円なので、本来なら株価の上限は2,500円です。ところが、特別措置の影響で上限は3,000円まで上がります。

この拡大措置が適用されたケースはたくさんあります。ストップ高の場合は投資家にとって嬉しい措置ですが、ストップ安の場合はかなりつらい思いをすることになるでしょう。

過去のストップ高やストップ安の連続記録

最後に、過去のストップ高やストップ安の連続記録を紹介します。

【ストップ高の連続記録】
フィスコ(銘柄コード:3807):2009年に18日連続のストップ高になり、株価は12,000円から92,000円まで高騰しました。元々、大株主であった個人投資家が大量に買い増しを行ったことが要因といわれています。

【ストップ安の記録】
光通信(銘柄コード:9435):2000年に20日連続のストップ安になり、株価は78,800円から13,800円まで暴落しました。「架空契約の発覚」や「社長が上方修正すると記者会見した2週間後に大幅な下方修正を発表した」など、不祥事や会社への不信感が重なったことが要因です。

当時は現在よりも値幅制限の幅が狭かったため、この程度の変動で済んでいます。2010年に東証が新しい株式売買システム「アローヘッド」を稼働したことに伴い、値幅制限は現在のように拡大されました。そのため現在であれば、株価はもっと激しく変動しているでしょう。

このように、何日も連続でストップ高(or ストップ安)になるケースがあります。もし保有している銘柄がストップ高やストップ安になった場合は、その要因をしっかりと見極めて、冷静に取引するように心がける必要があります。

まとめ

  • 株価が1日の値幅制限の上限まで上昇することを「ストップ高」、下限まで下落することを「ストップ安」という。
  • 値幅制限には投資家や相場を保護する役割がある。
  • ストップ高やストップ安になった場合、約定した株は各証券会社の発注株数に応じて比例配分される。その場合、自分の出した注文が約定しない場合がある。
  • ストップ高やストップ安の翌日以降の株価は簡単には予想できない。安易な取引は控えて冷静に判断する必要がある。

今回は、株価の値幅制限や比例配分について詳しく述べてきました。ストップ高やストップ安になると、あなたが出した注文が成立しないことがあります。「業績が悪化しているから売りたい」と思ってもすぐに売れない場合もあるのです。もし、保有している銘柄がストップ高やストップ安になった場合は、その要因を自分なりに分析するようにしましょう。