世の中には非常にたくさんの投資信託があります。そのため、どの投資信託を選べばよいかわからず、証券会社や銀行の営業マンに勧められた投資信託を買ってしまう人がたくさんいます。ただ、そのような選び方をしていると、損をしてしまう可能性があります。

投資信託の中には「注意が必要な投資信託」がたくさんあります。今回は、その中でも代表的なテーマ型投資信託(人気のテーマを扱った投資信託)について解説していきます。あなたの資産を守るためにも、テーマ型投資信託には十分注意するようにしてください。

投資信託とは

テーマ型投資信託の話を進める前に、まずは「投資信託」という金融商品について復習しておきましょう。

投資信託とは、複数の投資家から集めた莫大な資金をファンドマネージャーと呼ばれる投資のプロが運用する金融商品です。私たちは「ファンドマネージャーにお金を預けて資産運用をお任せしている状態」といえます。

投資信託を買うと、購入時手数料(販売手数料)がかかります。また、プロに運用を任せるので、その分の費用(信託報酬)が必要となります。これらの手数料が証券会社やファンドマネージャーの収益源になるのです。

手数料が収益源」というところがポイントです。つまり、投資信託を買ってもらわないと証券会社やファンドマネージャーは儲からないのです。

そのため、実際のところ証券会社は「投資家が儲かる投資信託」ではなく「売りやすい投資信託」を優先して売っています。そして、もっとも売りやすいのが人気のテーマを扱ったテーマ型投資信託なのです。

テーマ型投資信託の例

それでは、テーマ型投資信託にはどのようなものがあるのでしょうか? 基本的にはテレビや新聞などのメディアで話題になっているテーマが多いです。例えば、過去に人気のあったテーマ型投資信託には以下のようなものがあります。

  • IT株ファンド(IT関連企業へ投資する投資信託)
  • 社会貢献ファンド(社会的に意義のある企業へ投資する投資信託)
  • 中国株ファンド(中国株へ投資する投資信託)
  • バイオ株ファンド(バイオ関連企業へ投資する投資信託)
  • シェールガスファンド(シェールガス関連の会社へ投資する投資信託)

いずれも過去にメディアで大きく取り上げられたテーマばかりです。このようなテーマを扱った投資信託はすぐに人気が出るため、証券会社や銀行はとても売りやすいのです。

話題性のあるテーマ型投資信託は売りやすい

ここで一つ実例を紹介します。私のところにある証券会社から以下のようなメールが送られてきました。AI(人工知能)をテーマにした投資信託の案内メールです。

テーマ型投信を勧めるメール

「AI技術はあらゆる業界に革新的な変化をもたらすことから、経済的インパクトは巨額なものになると見込まれています。」と書かれています。このような文面を見ると、非常に魅力的に感じないでしょうか? 実際、私もとても興味を持ちました。

このように、テーマ型投資信託は「売れる文章」を書きやすいのです。そして、このような文章やセールストークに乗せられて、多くの人がテーマ型投資信託を買ってしまうのです。

テーマ型投資信託で損をする理由

それでは、なぜテーマ型投資信託は損をしやすいのでしょうか? 理由は簡単です。人気のあるものは価格が高いからです。

これは投資信託に限りません。ジャニーズのコンサート会場に入るには高額なチケット代金を支払わないといけませんが、地元ののど自慢大会の会場には無料で入れます。「人気のあるものは高い」というのは、世の中すべての商品・サービスに共通している原則なのです。

つまり、あなたが人気の投資信託を買おうと思ったときは、その投資信託はすでに割高になっていることが多いのです。

例えば、下記のチャートを見てください。これは、ある中国株ファンドの値動きを示しています。(チャートはMSNマネーより引用)

中国株ファンドの値動き

著しい経済発展や2008年北京オリンピックへの期待感から、2000年に入ってから中国株の株価は上昇し続けました。

特に2005年以降は、新聞やニュースで「中国のGDP成長率+〇%」などと大きく報道されていました。また、中国株のことを記した書籍なども数多く販売されており、投資の世界はまさに中国一色だったのです。

そして2007年に入ってから、この中国株ファンドはものすごい勢いで買われました。「2008年の北京オリンピックまでは上昇し続ける」といわれていたからです。ところが実際は、2007年11月をピークに大暴落します。ブームに乗って2007年に買った人たちは大きな損失を抱えることになったのです。

これがテーマ型投資信託で失敗する典型的なパターンです。

投資の世界には「噂で買って事実で売る」という格言があります。つまり、人気が出る前に買って、人気が出たときに売ることで大きなリターンが得られるのです。

しかし、人気がないときに買う人は少ないので、証券会社や銀行の営業マンはこのような商品を勧めてくれません。営業マンは、人気が出てきたとき(=売りやすいとき)に、「今、とても人気です」「売れてます」などといって勧めてくるのです。

もしそのような話を聞いたり案内文を見たりしたときは、「注意が必要な投資信託」と判断しましょう。証券会社は「売りやすい商品」を勧めているだけであり、決して「顧客が儲かる商品」を勧めているわけではないことを認識しておいてください。

まとめ

  • テーマ型投資信託は、証券会社や銀行にとってとても売りやすい金融商品である。
  • テーマ型投資信託を勧められたときは、すでに割高になっている可能性が高い。そのため、買ったあとは価格が上昇しなかったり急落したりすることがある。
  • 「人気」「話題」などの言葉を聞いたら、その商品は買わないほうがよい。

今回は、多くの人が損をしがちなテーマ型投資信託について解説してきました。投資信託に限らず、投資の世界ではブームに乗ると失敗することが多いです。売り手側の心理も理解した上で、「人気だから」という理由でテーマ型投資信託に飛びつかないようにしましょう。