「株式投資をしたら副業になるんだろうか?」と不安に思うサラリーマンはたくさんいます。

でも実際は、株式投資は副業ではなく資産運用にあたります。したがって株式投資をしていることが会社にばれても実際は何も問題ありません。ただそうはいっても、株式投資で儲かっていることが会社にばれたくないと考える人も多いです。

そんなあなたにおススメなのが、「特定口座(源泉徴収あり)」を用いて株式投資をすることです。この口座を利用すれば株式投資の利益が会社にばれることはありません。

今回は、株式投資が副業にならないことや、会社にばれずに株式投資を行う方法について詳しく解説していきます。また、株式投資をする際に会社員が注意するべき点についても説明します。株式投資のことを会社に隠したいと思っている人は内容をよく理解しておきましょう。

株式投資は副業にならない

会社員が行う株式投資は仕事ではなく「資産運用」になります。例えば、銀行の窓口で買える債権や投資信託も資産運用です。このような資産運用で自分の資産を増やそうとするのは財テクの一つなので、会社にばれても問題はありません。

数年、数十年と長く保有している株式が、購入したときの数倍~数十倍に値上がりすることで給料以上に儲かることもあります。このように大きく利益を得たとしても何も問題はないのです。

私は会社員時代から株式投資を行っていました。管理職の先輩や同僚とも情報交換をしていました。しかし、株式投資の話をしているときに、上司から注意されたことは一度もありません。

職場の女性の中には、愛用しているメーカーや家族で利用するレストランなどの株主優待券を狙って株の売買をしている人がいました。また、私の後輩は1,000万円以上の資金を株式投資に投じていました。株式投資には人それぞれのやり方があるため、いろいろな人と情報交換することでさまざまな知識を得ることができます。

このように、株式投資をしていることを会社内で話しても問題ありません。会社にばれても問題ないのです。ただそうはいっても気になる人は多いと思います。そこで、会社にばれないための方法について詳しく解説していきます。

マイナンバーが原因で勤務先にばれることはない

証券口座の開設にはマイナンバーが必要です。平成28年1月に導入されたマイナンバーは、国内に住民票があるすべての人に割り当てられた固有の12桁の番号です。

マイナンバー制度の導入で、国や自治体間において情報が連携され、それまでのタテワリ行政の弊害が是正されるようになりました。複数の機関で別々に管理されていた個人情報が、マイナンバーによって同一人物の情報であるとすぐにわかるようになったのです。

このような行政の効率化や国民の利便性向上を目的に、マイナンバーは「社会保障」、「税」、「災害対策」の三分野で使用されています。

会社が社員のかわりに税金や社会保障関連の書類を提出するときにも、社員のマイナンバーを記入することが義務付けられています。

このような背景から、「証券会社にマイナンバーを通知したら会社に株式投資のことがばれるのでは?」と心配する人もたくさんいます。

しかし結論をいうと、マイナンバーから会社にばれることはありません。マイナンバーは、法令で定められた目的(社会保障・税・災害対策)に利用が限定されているからです。

マイナンバーを使って情報を検索できるのは、国や地方自治体などの行政機関だけです。勤務先の会社が知ることができるのは、マイナンバー通知カードに記載された事柄(氏名、住所、生年月日、性別など)のみなのです。

住民税が原因で勤務先にばれることはある

株式投資のことが会社にばれる原因の一つとして「住民税」があります。

株式を安く買って高く売れた場合、当然利益を得られます。その利益のことを「譲渡益」といいます。譲渡益には一律で源泉徴収税が20.315%かかります。内訳は、所得税が15.315%、住民税が5%になります。

もともと所得税は15%だったのですが、東日本大震災を機に税額が上がりました。平成25年から平成49年まで、東日本大震災からの復興支援(復興支援特別所得税)として、所得税に2.1%(15%×2.1%=0.315)が上乗せされることになったのです。

譲渡益に対する税金を支払うために確定申告をすると、税務署から確定申告の内容が役所に通知されます。そして5月頃、役所から確定申告の内容を踏まえた納税額が会社に伝えられるのです。このとき、会社の給料から計算される値よりも高い住民税が納付されていれば、会社にばれる可能性があります。

ただ、譲渡益に対する住民税が会社に通知されないようにする方法があります。確定申告のときに「普通徴収」を選ぶのです。普通徴収とは、納税者本人が納付書を用いて自分で住民税を納めることです。

具体的には以下のように確定申告してください。

確定申告書(第二表)の住民税の欄に「給与・公的年金等に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法」という箇所があります。ここで「給与から差引き」ではなくて「自分で納付」を選択するのです。そうすると、住民税の納付書が自宅に送られてきます。会社に通知される納税額は給与に応じた分だけになり、株式投資で得た譲渡益の分は通知されません。

確定申告書(第二表)

※国税庁HPよりダウンロードした資料を一部改変



このように、会社にばれたくない人は確定申告の際に注意するようにしましょう。ただ、確定申告に慣れていない会社員も多いと思います。そこで、そのような人におススメしたいのが特定口座(源泉徴収あり)です。

勤務先にばれたくない人は特定口座(源泉徴収あり)を開こう

証券会社の口座には「一般口座」「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」の3種類があります。1つの証券会社につき1つの口座を作ることができます。

一般口座

一般口座は、自分で確定申告に必須の書類(年間取引報告書)を作り、確定申告をしなければなりません。

年間取引報告書には、株や投資信託、公社債などの損益や配当金などが記されています。社債や国債を買う人は一般口座を選ぶこともありますが、株式投資のみをする場合は、一般口座を選ぶメリットはほとんどありません。

特定口座

特定口座は、証券会社が年間取引報告書の作成をしてくれるので非常に便利です。

そして、特定口座の中でも「源泉徴収あり」を選んでおけば、確定申告をする必要がありません。株式投資で利益が出たときはそれに応じた税額が証券口座から徴収されるのです。逆に損失が出たときは、それに応じた金額が口座に自動で還付されます。

ただ、「特定口座(源泉徴収あり)」を選択した場合でも、自分で確定申告した方が節税できるケースもあります。年間の取引収支がマイナスのときです。

例えば、2018年の運用で100万円を損したとします。確定申告をすると、この損失を翌年以降2021年まで繰り越すことができます。そうすることで、2019年以降に得た譲渡益と100万円の損失を相殺することができるのです。これにより、2019年以降に支払う税金を安くできます。これを「損失の3年間繰越控除」といいます。

また、譲渡益が年間20万円以下の場合は、特定口座(源泉徴収あり)だと損してしまいます。

本来、年間の収支が20万円以下の場合は、所得税の支払いが免除されています。所得税を支払う必要がないのです。ところが、特定口座(源泉徴収あり)だと利益が出るたびに源泉徴収されてしまう(証券口座から天引きされてしまう)ので、年間の利益が20万円以下であっても税金を払ってしまっているのです。

このように、特定口座(源泉徴収あり)にもデメリットがあります。そのため、株式投資による年間の利益が20万円以下になるような人の場合は「特定口座(源泉徴収なし)」を選ぶようにしましょう。

就業時間中の株取引はやめよう

ここまで読めば、会社にばれずに株式投資を行う方法をある程度理解できたと思います。

ただ、サラリーマンにとってもっとも重要なことは「勤務時間中に株取引をしないこと」です。勤務時間中に、職場のパソコンで株式投資を行うことは就業規則違反になります。パソコンの履歴からばれるので、違反行為は絶対に止めましょう。

昼休みなど勤務時間外に、自分のスマホで株式投資をすることは問題ありません。私の会社員時代の先輩もスマホで株価チェックや売買をしていました。

ただ私は購入した株を数か月から数年保有する中長期投資家だったので、会社員だった頃もスマホでチェックすることはあまりありませんでした。

株式市場での株取引の時間帯は決まっています。東京証券取引市場は前場(9時~11時30分)と後場(12時30分~15時)の計5時間です。

この5時間における株価の変動が気になって、ついつい自分のスマホなどで株価をチェックするサラリーマンもいます。これは完全に本業をおろそかにしている状態です。長期的に考えれば、会社での評価に間違いなく影響するので絶対にやめておきましょう。

日中は忙しいサラリーマンでも、インターネットから指値注文(値段を指定した売買注文)や逆指値注文(株価が指定した金額に達した場合に自動で注文が入るようにすること)などの予約注文を活用すれば、勤務時間中に株価が気になることも少なくなるはずです。

まとめ

  • 株式投資は副業ではなく資産運用です
  • 株式投資の利益を会社に知られたくないときは、確定申告の書類で普通徴収を選びましょう
  • 確定申告が不慣れな人は、証券口座で「特定口座(源泉徴収あり)」を選ぶと自動で源泉徴収されます
  • 「特定口座(源泉徴収あり)」の場合でも、年間の取引収支がマイナスのときは確定申告をしましょう。「損失の3年間繰越控除」により翌年以降3年間は税金が安くなります
  • 勤務時間の株取引や業務用パソコンの使用は厳禁です