投資信託を保有していると、定期的に運用報告書を確認することになります。交付目論見書(投資信託の説明書)を確認しない人でも、「運用報告書は気になるので見る」という人もいます。
そこで今回は、運用報告書を見るときのポイントについて述べていきます。自分が投資している投資信託の現状と今後を把握するためにも、運用報告書は定期的にチェックするようにしましょう。
運用報告書とは
運用報告書とは、投資信託の運用成績や各種費用などがまとめられたものです。
運用報告書には「交付運用報告書」と「運用報告書(全体版)」の2種類があります。前者が簡易的な報告書で、後者が詳細を記した報告書というふうに理解しておいてください。
簡易的とはいっても、交付運用報告書には必要な情報が書かれています。そのため、交付運用報告書だけでも運用状況などを把握することは可能です。
なお、運用報告書は運用会社や販売会社(証券会社など)のホームページからダウンロードできるので、投資信託を購入していなくても見ることができます。実際、私が投資信託の購入を検討するときも、過去の運用報告書を確認していました。
交付運用報告書で確認すべきポイントは、「運用実績」「投資環境」「今後の運用方針」「費用明細」の4つです。今回は、私が個人型確定拠出年金(iDeCo)で運用している「DCニッセイ外国株式インデックス」の交付運用報告書を例に示しながら、順に解説していきます。
運用実績
運用実績はもっとも大事なチェック項目です。決算期間中(過去1年間など)における基準価額や純資産総額の推移をしっかり確認しましょう。決算期間中だけでなく、過去数年分の推移が表示されていることもあるので両方チェックするとよいでしょう。
ここでのチェックポイントは以下のとおりです。
基準価額 |
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純資産総額 |
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以上を踏まえた上で、「DCニッセイ外国株式インデックス」の運用実績を確認していきます。
<決算期間中の基準価額および純資産総額の推移>
「DCニッセイ外国株式インデックス」はベンチマークにほぼ完全に一致した値動きをしていることから、インデックスファンドとしてはまず問題ありません。
なお、アクティブファンドの場合は、ベンチマークよりもよい運用成績であることが望ましいです(高い手数料を支払ってでもベンチマークに勝つことを目的とした投資信託なので)。
また、純資産総額は順調に伸びているので、こちらに関しても特に問題ありません。
<過去3年間の基準価額および純資産総額の推移>
こちらは、過去3年間における基準価額および純資産総額の推移を示した表です。表なので、数値でその推移が示されています。
赤い四角で囲ったとおり、基準価額の推移(騰落率)はベンチマークとほぼ完全に一致しています。純資産総額も順調に伸びているので、過去3年間の推移においても特に問題はありません。
投資環境
投資信託の運用成績に影響を与える経済情勢や為替変動などについてまとめられています。少し難しい表現があるかもしれませんが、経済の勉強のつもりで読むとさまざまな知識が身に付きます。
アクティブファンドの場合は、そのような投資環境下でどのような投資が行われたのか詳しく書かれています。具体的な銘柄名を上げて説明されていることが多いので、どのような銘柄の売買が行われたのか確認しておきましょう。
一方、インデックスファンドの場合は、アクティブファンドほど詳しく書かれていません。ただ、組入上位銘柄は記載されていることが多いので、確認しておくとよいでしょう。
なお、「DCニッセイ外国株式インデックス」の組入上位銘柄は下記のとおりです。米国の大型株が上位を占めていることが確認できます。
今後の運用方針
今後の運用方針は、私たち顧客が投資信託を継続保有するか検討する上で大事な判断材料になります。
特に、これまでの運用方針から変化があった場合は、新たな運用方針が自分の投資目的に合っているかどうかを確認しましょう。
インデックスファンドの場合は簡単に記載されているだけのことが多いですが、アクティブファンドの場合は細かく書かれているのでよく読むようにしましょう。
費用明細
決算期間中にかかったさまざまな費用がまとめられています。投資信託を保有していると、信託報酬(投資信託の管理・運用の対価として支払う手数料)だけでなく、以下のような費用が発生します。
売買委託手数料 | 株式を売買するときに発生する手数料 |
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保管費用 | 海外の株式や債権に投資する場合に発生する費用 |
監査費用 | 投資信託は監査法人の監査を受けることが義務付けられています。そのための費用が監査費用です。 |
「DCニッセイ外国株式インデックス」の場合は、信託報酬(0.226%)にさまざまな費用が上乗せされて、最終的に0.330%の費用がかかっています。
自分が保有している投資信託をいくつか比較してみることで、運用コストが大きいのか小さいのかがわかるようになってきます。私の場合は、「DCニッセイ外国株式インデックスの信託報酬は安いけど、それ以外の費用は少しだけ高いかな」という印象を抱きました。
なお、ここに記載された費用(DCニッセイ外国株式の場合は0.330%)は投資信託の資産から差し引かれます。そのため、費用以上の運用成績をあげられなければ、基準価額はどんどん下がっていきます。
アクティブファンドは信託報酬が高いので、必然的にインデックスファンド以上の運用成績が求められるのです。
まとめ
- 運用報告書は「運用実績」「投資環境」「今後の運用方針」「費用明細」の4つをしっかりと確認するようにする。
- このうち、運用実績がもっとも重要である。特に、基準価額や純資産総額がどのように推移しているかは運用報告書を利用して定期的にチェックしたほうがよい。
今回は、投資信託の運用報告書の確認ポイントについて述べてきました。運用報告書は定期的にチェックして、想定通りの運用がなされているか確認するようにしましょう。
また、運用報告書は投資信託を購入していない人でも見ることができます。そのため、今回紹介したポイントは投資信託を選ぶ際にも役立つはずです。