あなたはVIX指数(Volatility Index)という言葉を聞いたことがあるでしょうか? VIX指数とは別名「恐怖指数」とも呼ばれる指数です。

「恐怖指数」という言葉からイメージできるとおり、この指数は投資家の不安が高まっているときに上がります。いいかえると、「株式市場が下落しているときに上昇する指数」です。

今回は、VIX指数について解説していきます。また、株式の暴落に備えた「保険」と勘違いされることのある「VIX先物指数に連動するETF」について述べていきます。このETFには注意点があるので、今回の内容を理解してから買うようにしてください。

VIXは投資家の「恐怖」を表す指数である

上述のとおり、VIX(Volatility Index)は投資家の恐怖を指数として表したものです。シカゴ・オプション取引所が作った指数で、世界中の投資家がこの指数を見ているといわれています(面倒なので私は見ていません)。

Volatility(ボラティリティ)の本来の意味は、「価格変動の大きさ」です。つまり、投資家が「今後、相場が大きく変動する」「先行きが不透明だ」と感じているときに、ボラティリティは大きくなるのです。

VIXは%で表示され、平常時は10~20%程度で推移しています。しかし、政治情勢や経済情勢に変化があり、株式市場の下落が予想される局面になるとVIXは急上昇します。

実際の推移は下の図を見てください。オレンジのラインが米国のS&P500(日本のTOPIXのようなもの)、青のラインがVIX指数です。S&P500が下がっている局面でVIXが上昇する傾向にあることがわかると思います(チャートはMSNマネーより引用)。

S&P500とVIX指数

VIXが30%を超えると多くの投資家が不安を抱えている状態といえます。ちなみに、リーマン・ショックの影響で世界中の投資家が絶望していたとき、VIX指数は80%を超えていました。

このように、VIXは「投資家の恐怖」を表した指数であることを理解しておいてください。

VIX指数はオプション取引の動向から算出される

VIX指数は、アメリカのシカゴ・オプション取引所が作った指数です。そして、VIX指数はオプション取引の動向に応じて変動します。

オプション取引は、株式投資における「掛け捨て保険」のようなものです。つまり、オプションを買う(=保険をかける)ことで、将来大損したときにその損失を取り返すことができるのです。

そして、オプション取引で保険をかける人が増えるということは、不安を感じている投資家が増えているということです。それに応じてVIX指数は上昇する仕組みになっているのです。

「VIX先物指数に連動するETF」はVIX指数とは異なる値動きをする

上述のとおり、オプション取引は「暴落に備えた掛け捨て保険」として使うことができます。

ただ、一般的な個人投資家がオプション取引を行うのはハードルが高いはずです。なぜなら、オプション取引の仕組みがわかりにくく、保険料が高額だからです。さらに、保険の満期までの期間が短いため、常に保険料を払い続ける必要があります(短い場合は満期まで1ヶ月以内です)。

そこで、「オプション取引に連動しているVIX指数に投資すれば、株式の暴落に備えることができるのでは?」と考える人がいます。この考えは正しいのですが、実際にはVIX指数に連動する商品は、通常の株式市場にはありません。

それにも関わらず、以下のようなETF(上場投資信託)が、「VIX指数に連動した商品」として勘違いされることがよくあります。

  • 国際のETF VIX短期先物指数(銘柄コード:1552)
  • NEXT NOTES 日経平均VI先物指数 ETN(銘柄コード:2035)


実際、私も過去に保険として「国際のETF VIX短期先物指数(1552)」を買っていたことがあります。

ただ結論を述べると、これらのETFは、株式の暴落に備えた保険にはなり得ません。それどころか、保有しているだけでどんどん損失が膨らんでしまいます。

以下の図を見てください。青のラインが上図でも示したVIX指数です(見やすくするため2013年以降を拡大しています)。そして、赤のラインが「国際のETF VIX短期先物指数(1552)」です(チャートはMSNマネーより引用)。

VIX指数とVIX先物指数

VIX指数(青)が上昇する局面ではたしかにETF(赤)も連動して上昇しています。ところが、長期的にみるとまったく連動しておらず、ETFが大きく値下がりしていることがわかります。

それでは、なぜこのETFはVIX指数と異なる動きをするのでしょうか?

その理由は、これらのETFがVIX指数ではなくVIX先物指数に連動しているからです。そして、このETFに限らず、先物指数に連動したETFは長期的に下落する傾向にあるため、長期で保有すると損をしてしまうのです。

「先物指数に連動するETF」が値下がりし続ける理由

それでは、なぜ先物指数に連動するETFは値下がりし続けるのでしょうか? その理由は「先物取引のロールオーバーの影響を受けるから」です。

先物取引とは、「将来、〇〇円で商品Aを買います(or 売ります)」と取引時に決めることです。そして、取引時に決めた価格(〇〇円)と将来の実際の価格との差額が利益になったり損失になったりします。

先物指数に連動するETFで問題が生じるのは、将来(=期限)が近づいてきたときです。期限になると、取引時に決めたとおりに決済しなければなりません。

仮に「2019年6月が期限の先物」を保有していたとします。もし決済しないのであれば、2019年6月までにこの先物を売って、「2019年6月以降が期限の先物」を買いなおす必要があります。これをロールオーバーといいます。

先物指数に連動するETFを保有した場合、あなたの知らないうちにファンドマネージャーが常時ロールオーバーを行っています。そして、期限が遠い先物のほうが割高な場合が多いため、ロールオーバーを繰り返すたびにETFの価値はどんどん下がっていくのです。

このことは、ETFの目論見書(投資信託の説明書)にもしっかりと記載されています。例えば、「国際のETF VIX短期先物指数(1552)」の目論見書には「当ファンドは、中長期的には減価する傾向があります」と書かれています。

このように、VIX指数に限らず、先物指数に連動したETFは長期で保有すると損をすることになります。このような投資信託は、短期で売ることを前提に買うようにしましょう。

まとめ

  • VIX指数は投資家の「恐怖」を表した指数である。そのため、株価が下落する局面で値が大きく上昇する。
  • VIX先物指数に連動するETFは、VIX指数と同じ値動きをするわけではない。
  • 先物指数に連動したETFは、長期的に下落する仕組みになている。

今回は、VIX指数とVIX先物指数に連動したETFについて詳しく解説しました。先物取引のロールオーバーの影響を受けるETFは他にもたくさんあります。いずれも長期の保有には適していないことを覚えておきましょう。