株式投資をしている人であれば、「どの銘柄に投資すればよいか?」と迷うことがあるはずです。東京証券取引所(東証)に上場している会社は3,600社を超えるため、迷ってしまうのも仕方ありません。当然、私もよく迷っています。

ただ、数ある投資先の中でも、「個人投資家は小型株に投資したほうがよい」と私は考えています。実際、私も10年以上株式投資をしていますが、基本的には小型株を中心に投資するようにしています。

そこで今回は、私が小型株を推奨する理由について述べていきます。大型株はさまざまな理由から個人投資家には不利であることを理解しておきましょう。

小型株とは?

東京証券取引所では、時価総額(会社の規模:株価×発行済み株式数で算出できる)の大きい上位100銘柄を「大型株」、続く上位400銘柄を「中型株」、それ以外を「小型株」と定めています。

そして、中型株と小型株のおおよその境目が「時価総額 1,000億円」であるため、一般的に「小型株=時価総額1,000億円以下の会社」と考えられています。

冒頭に述べたとおり、東証に上場している会社は3,600社以上です。そのうちの約3,100社が小型株に該当するため、ほとんどの銘柄が小型株ということになります。

ただ、株式投資に慣れていない人は、どうしても有名な会社や馴染みのある会社に投資しがちです。実際、私が株式投資を始めた頃は武田薬品工業(4502)に投資していました。当時の私は某製薬会社に勤めていたため、国内の製薬会社でもっとも大きい武田薬品工業に安心感を覚えていたのです。

ただ、このような大手企業(大型株)は投資先としてはあまり魅力的ではありません。なぜなら、後述するように、成長性や投資効率では小型株のほうが優れているからです。

また、多くの機関投資家(保険会社や投資信託の運用会社など)は大型株を投資対象としています。そのため、大型株に投資すると、これらのプロ投資家と対峙することになってしまいます。

このような理由から、私たち個人投資家は大型株や中型株を避けて小型株中心に投資したほうがよいと考えられます。以下、小型株の魅力や機関投資家との違いについて深掘りして解説していきます。

GDP成長率と株式市場:日本とアメリカの投資戦略

「小型株の魅力」を理解するためには、その背景として「日本の市場環境」について知っておく必要があります。そのため、まずは日本市場の現状について述べていきます。

日本のGDP(国内総生産)成長率は1990年頃からほぼ横ばいです。1990年にバブルが崩壊して以降、日本のGDPはほとんど成長していないのです。

※ GDP(国内総生産):日本国内で1年間に生産された付加価値(企業の利益)の合計

しかし、アメリカや新興国は状況が異なります。特に、アメリカは日本と同じ先進国であるにも関わらずGDPは日本以上に成長しています。

下図は1990年以降の日本とアメリカの実質GDP成長率(物価上昇の影響を差し引いたGDP成長率)の推移を示しています。1990年以降、ほぼすべての年でアメリカが日本を上回っていることがわかります。

日本とアメリカのGDP成長率


そして、「経済が拡大している国(アメリカ)」と「経済が停滞している国(日本)」では、投資戦略は大きく異なります

アメリカは経済が拡大しているので、大企業でも成長し続けることができます。さらに、AppleやAmazonのように世界を制覇するような巨大企業が出現することもあります。そのため、アメリカ株に投資する場合は、大企業に投資してもまったく問題ありません。

一方、日本のように経済が停滞している国の場合は、大企業が成長する余地が限られています。大企業同士で競合していることが多いため、アメリカのように大きく成長する可能性は低いのです。

ただ、日本の場合は、中小企業がそれなりの規模に成長する余地があります。特に、大企業が参入できないようなビジネスを展開している中小企業は、大きく飛躍する可能性を秘めています。そのため、日本のように経済が停滞している国では、中小企業に注目して投資したほうがよいのです。

※ アメリカの中小企業も投資対象としては魅力的です。ただ、日本人である私たちがアメリカの中小企業の情報を得るのは困難なので、あまりおすすめしません。

日本でもっとも成長しているのは小型株市場である

それでは、日本における「小型株市場の魅力」について、過去のデータを用いて解説していきます。

下図は、野村證券金融工学研究センターと米ラッセル社が提供している「日本株式インデックス(大型、中小型、小型)」の推移をグラフ化したものです。1999年12月末の値を100として、2017年11月末までに大型株、中小型株、小型株が平均的にどれくらい成長したかを示しています。

野村ラッセル日本株式インデックス


このグラフから、2017年11月末における指数は「大型株 134」「中小型株 251」「小型株 327」であることがわかります。

いずれの指数も1999年12月末の100から大きくなっていますが、大型株が約1.3倍にしかなっていないのに対して、小型株は約3.3倍になっています。また、ほぼすべての期間において、小型株が大型株や中小型株よりも好調に推移していることがわかります。

このように、日本の株式市場において、2000年以降は小型株が優位に推移していることがこのデータから読み取れます。

投資効率がもっとも高いのは小型株である

続いて下の図を見てください。これは1999年12月末~2017年11月末までの各投資対象の年率リターン(年平均利回り)と年率リスク(1年間の株価の振れ幅)を示した図です。

日本株式のリスクとリターン

緑が小型株、赤が中小型株、黒が大型株を示しています(ここでは米国株、新興国株、インド株は無視してください)。

小型株、中小型株、大型株は同程度のリスクなのに、リターンは小型株がもっとも大きいことがわかります。つまり、これらの3つの投資対象の中では、小型株がもっとも効率よくリターンを得ているのです。

先程示したグラフと合わせて考えると、「1999年末以降、日本では小型株がもっとも好調」ということがわかると思います。

上述のとおり、この背景には、日本における低いGDP成長率があります。そのため、日本のGDP成長率が伸びない限り、小型株優位の状況は変わらないと私は考えています。

機関投資家は大型株を中心に投資している

ここまで小型株の魅力について述べてきました。最後に、「プロの機関投資家との対峙を避ける」という観点から解説していきます。

基本的に、プロの機関投資家は小型株に手を出しにくいです。なぜなら、プロの機関投資家が扱っている金額が大きすぎるからです。

彼らは多額の資金を株式に投じるため、必然的に時価総額の大きい企業が投資対象になります。仮に、時価総額の低い中小企業に投資してしまうと、その企業の株価に大きな影響を及ぼすほどの買い注文を入れることになってしまいます。

そうなると、株を売りたいときに売れない状況になってしまうため(大量の株を売りたくても買い手があまりいないため)、機関投資家は小型株に手を出しにくいのです。

※ なかには、取り扱う金額を少なくして小型株に集中投資している機関投資家も存在します。

実際、機関投資家が投資対象として調査しているのは東証1部の銘柄が中心です。中小企業が上場している東証マザーズやJASDAQの銘柄についてはあまり調査をしていないのです(下図参照)。

機関投資家の調査対象

このように、プロの機関投資家は主に大型株を投資対象としています。そのため、プロの投資家と同じ戦場で戦わないためにも、私たち個人投資家はできるだけ大型株は避けて、小型株に投資をしたほうがよいのです。

まとめ

  • 経済が停滞している日本においては、大型株よりも小型株(時価総額 1,000億円以下)に投資をしたほうがよい。特に、大企業が参入できないビジネスを展開している中小企業は、大きく成長する可能性を秘めている。
  • 1999年以降、日本では小型株がもっとも好調であった。
  • 機関投資家は取り扱う金額が大きいため、主に大型株を投資対象としている。だからこそ、個人投資家は小型株に投資をしたほうがよい。

今回は、私が「個人投資家は小型株に投資したほうがよい」と考える理由について、過去のデータを検証しながら解説してきました。

私は個別銘柄に投資するときは基本的には小型株にしか投資していません。成長著しい小型株に投資することができれば、数ヶ月~数年で株価が大きく伸びることがあります。小型株には大型株にはない魅力があるので、あなたも投資先を選ぶときは小型株から選んでみるとよいでしょう。