投資信託には「顧客から預かったお金をどのように運用するか」という運用方針があらかじめ設定されています。

例えば、「国内の割安成長株に投資する」や「グローバルに分散投資する」のように、投資信託の特徴が定められているのです。私たちは、運用方針を確認しながら自分の希望に合う投資信託を選ぶことになります。

ただ、中には運用方針の範囲内で投資先の資産配分が変わるものもあります。例えば、市場環境に応じて「債券中心」から「株式中心」のように投資先が変わることがあるのです。

このような「資産配分の比率が変わる投資信託」を保有している場合は、定期的に運用状況をチェックしたほうがよいです。どのような資産配分で運用されているか把握することで、自分の年齢や状況に合った運用になっているか確認することが大切なのです。

投資信託の運用方針が変わることは滅多にない

冒頭に述べたとおり、投資信託には運用方針があらかじめ設定されています。例えば、「ひふみ投信」であれば、「国内外の上場株式を主要な投資対象とし、市場価値が割安と考えられる銘柄を選別して長期的に投資します」という運用方針が定められています。

このような運用方針が掲げられているため、ひふみ投信が債券に投資することはまずありません。また、株式を短期的に売買することもありません。投資信託はあらかじめ定められた運用方針に沿って運用しなければならないのです。

それでは、目論見書に明記されている運用方針が変わることはあるのでしょうか?

運用方針を変えるためには、投資家から異議申し立てを聞くなどさまざまな手続きが必要となります。そのため、基本的には運用方針が変わることはありません。

ただ、運用方針の範囲内で資産配分の比率が変わることはあります。このような投資信託を保有している場合は、その中身をしっかりと把握しておく必要があります。

資産配分の比率が変わる投資信託の例

世の中には「資産配分の比率が変わる投資信託」が意外とたくさんあります。ここでは「ひふみ投信」と「マネックス資産設計ファンド エボリューション」を例に説明していきます。

ひふみ投信

ひふみ投信は運用方針として、「株式の組入れ比率が変わる」ということを明記しています。上述のとおり、「債券」を購入するわけではありませんが、市場環境に応じて「現金」の比率を上げることがあるのです。

ひふみ投信のキャッシュポジション

※「ひふみ投信」交付目論見書より抜粋

ひふみ投信には、株式市場が不調なときは現金比率を50%まで上げることで、資産価値が急落するのを抑える仕組みがあるのです。一方、株式市場が好調なときは、現金の比率を0%(株式の比率を100%)にして積極的に利益を追求します。

このように、ひふみ投信は株式市場の状況に応じて、現金と株式の比率が変わる投資信託なのです。

マネックス資産設計ファンド エボリューション

ひふみ投信は現金と株式の比率が変わるだけだったので理解しやすかったと思います。ここで紹介する「エボリューション」はもう少し複雑です。

エボリューションは「先進国株式」「先進国債券」「先進国REIT(不動産投資信託)」「新興国株式」「新興国債券」に分散して投資する投資信託です。そして、下図のように、市場環境に応じて投資先の国や資産配分が変わるのです。

エボリューション_資産配分比率の変更

※「マネックス資産設計ファンド エボリューション」交付目論見書より抜粋

ひふみ投資と違って、エボリューションの投資先の資産は大きく5つに分かれています。そのため、この5つの資産配分比率が変わることになります。さらに、投資先の国に関しても状況に応じて変化することになるのです。

このように、エボリューションの資産配分の変化はひふみ投信に比べるとかなり複雑です。いずれにしろ、状況に応じて資産配分比率が変わる投資信託は意外とたくさんあることを覚えておいてください。

資産配分比率は定期的にチェックしたほうがよい

資産配分比率が変わる投資信託を保有している場合は、定期的にどのような配分で投資されているか確認したほうがよいです。

なぜなら、資産配分比率を確認することで、ファンドマネージャー(投資信託の運用担当者)がどのように考えているか把握できたり、自分の状況に合った資産配分になっているか確認できたりするからです。

私の場合、ひふみ投信のように現金と株式の比率が変わる投資信託として「みのりの投信」を保有しています。そのため、運用状況を確認するために月次レポートを毎月チェックするようにしています。

仮に、みのりの投信の現金比率が0%から20%に変わったとします。このとき、株式の比率は100%から80%に変わったことになります。株式の比率が下がっていることから、みのりの投信のファンドマネージャーは「この先、株価が下落する可能性がある」と考えていることがわかります。

私のように株式投資をしている人にとっては、投資信託の資産配分比率の変化から専門家の考え方を間接的に知ることができるので、とても貴重な情報源になります。

また、投資先の最適な資産配分は年齢や状況に応じて変わってきます。一般的に「高齢になるほど株式の比率を下げて、債券の比率を上げたほうがよい」と言われています。高齢になったときに株式で大きな損失を抱えてしまうと取り返すのが大変だからです。

そのため、自分の年齢や状況に応じた資産配分になっているか定期的に確認したほうがよいです。

高齢になって「あまりリスクを取りたくない」と考えているときに、資産配分が債券中心から株式中心に変更されているかもしれません。そのような場合は、早めに解約したり一部売却したりして安全な資産に資金を移す必要があるのです。

まとめ

  • 運用方針の範囲内で、資産配分比率が変わる投資信託はたくさんある。
  • 資産配分比率の変化を確認することで、ファンドマネージャーの考え方を間接的に知ることができる。また、自分の年齢や状況に応じた資産配分になっているか確認するためにも、投資信託の運用状況は定期的にチェックしたほうがよい。

今回は、資産配分比率が変わる投資信託の注意点について述べてきました。このような投資信託は決して悪い投資信託ではありません。ひふみ投信のように優良な投資信託もこのような戦略を取ることがよくあります。

ただ、私たち顧客としては、ファンドマネージャーや投資信託の運用会社にすべて丸投げするのではなく、定期的に運用状況を確認することが大切です。そうすることで、ファンドマネージャーの考え方を把握できたり、自分の理想に合った資産配分に変更できたりします。