株価の割安・割高を判断する指標の一つにPER(株価収益率)があります。一般的に、PERの目安について以下のように説明されることが多いです。

① PER 10倍以下は割安、PER 20倍以上は割高
② 業種別平均値や同業他社よりもPERが低ければ割安

今回は、PERの概要を復習した後、②の目安について私なりの見解を述べていきます。私は「業種別平均値ではなく同業他社と比較したほうがよい」と考えているため、業種別平均値を確認することはありません。

私の考えが必ずしも正しいわけではありませんが、PERを理解する一つのヒントになるので、ぜひ参考にしてみてください。


PERの意味

まずはPERの意味を復習しておきましょう。

PERは「現在の株価」と「1株あたり利益(EPS)」の比です。具体的には、以下の計算式で算出されます。

<PERの計算式>
PER = 株価 ÷ 1株あたり利益(EPS)

株価は「投資家が投資する金額」です。また、1株あたり利益は「そのお金を使って企業が生み出す利益」を意味します。少しわかりにくいと思うので、以下の例を見てみましょう。

トヨタ自動車の株価と1株あたり利益

上図はトヨタ自動車(銘柄コード:7203)の株価と利益を示した表です。現在の株価は6,696円、2019年3月期の1株あたりの利益は781円と予想されています。

これは「投資家が6,696円を投資すると、トヨタ自動車はそのお金を使って1年間で781円の利益を生み出してくれる」という意味です。このときのPERは、株価(6,696円)と1株あたり利益(781円)を上の計算式に当てはめて、8.57倍(6,696円 ÷ 781円)になります。

トヨタ自動車のPER

通常、投資したお金(株価)に対して利益(1株あたり利益)が大きいほど効率のよい投資です。つまり、PERの値が小さいほど効率が良い(=株価は割安)と判断できるのです。逆に、PERの値が大きければ株価は割高ということになります。

そして、冒頭にも述べたとおり、割安・割高の目安は一般的に以下のように説明されています。

① PER 10倍以下は割安、PER 20倍以上は割高
② 業種別平均値や同業他社よりもPERが低ければ割安

今回は②の目安について私なりの見解を述べていきます。

業種別平均値には関連性の低い企業の値も含まれている

業種別のPER平均値は日本取引所のホームページで公開されているので、誰でも簡単に知ることができます。

ただ実際のところ、「業種」はあまり細かく分類されていません。そのため、業種別平均値にはあまり関連性のない企業のPERも含まれています。

このことを2つの事例で解説していきます。

例1:サービス業

例えば、あなたがセントラルスポーツ(4801)に注目していたとします。セントラルスポーツはスポーツクラブを運営している企業で、業種は「サービス業」になります。

セントラルスポーツの四季報

しかし、サービス業という分類はかなり広いため、さまざまな会社がサービス業に分類されています。

例えば、LIFULL(2120)という会社もサービス業に属します。この会社は不動産情報検索サイト「HOME’S」を運営している会社です。

LIFULLの四季報情報

他にも、広告代理店、人材派遣会社、経営コンサル会社、カラオケチェーンなど実にさまざまな会社がサービス業に属します。

つまり、「サービス業」にはセントラルスポーツとは関連性の低い企業がたくさん含まれているのです。そのため、業種別PER平均値と比較すると、関連性の低い会社のPERから算出された値と比較することになってしまいます。

業種別平均値と比較することに意味がないとは思いませんが、「それよりも同業他社と比較したほうが意味がある」というのが私の意見です。

例2:輸送用機器

同じことは他の業種にも当てはまります。例えば、トヨタ自動車は「輸送用機器」という業種に属します。

トヨタ自動車の四季報情報

そして、輸送用機器という業種にはヤマハ発動機(7272)や三井E&Sホールディングス(7003)なども含まれています。

ヤマハ発動機は2輪車の世界大手企業です。また、三井E&S ホールディングスは船や港湾クレーンを作っている会社です。

まったくの異分野というわけではありませんが、自動車業界とは離れた業界の会社が同じ業種に含まれていることがわかると思います。

このように、「業種」はあまり細かく分類されているわけではありません。そのため、業種別のPER平均値と比較すると、関連性の低い企業のPERから算出された値と比較することになってしまいます。

このような理由から、私が企業分析をするときは、業種別平均値よりも同業他社のPERと比較するようにしています

PERは同業他社の値と比較したほうがよい

仮に、私がセントラルスポーツ(4801)を投資先候補にピックアップしたとします。このとき、私であれば、ルネサンス(2378)や東祥(8920)のPERと比較します。

比較対象の企業は会社四季報を参考にして決定します。また会社四季報が手元になくても、SBI証券であれば「四季報」というタブの中に「比較会社」が記載されています(楽天証券やGMOクリック証券では比較会社は記載されていませんでした)。

SBI証券で「比較会社」を確認

なお、四季報オンラインには「ライバル比較」という項目があります。ただ、ここで比較されている会社は異業種の会社であることも多いです。したがって、同業他社を探すときは書籍版の会社四季報かSBI証券のホームページで確認するとよいでしょう

四季報オンラインの「ライバル比較」

上述のとおり、書籍版の会社四季報やSBI証券のホームページでは、セントラルスポーツの比較会社として、ルネサンスや東祥がピックアップされています。これらの2社はいずれもフィットネスクラブやスポーツクラブを運営しており、セントラルスポーツとまったく同業種の競合会社になります。

したがって、セントラルスポーツのPERを評価するときはこれら2社のPERと比較します。

そして、セントラルスポーツのPERがこれら2社のPERよりも低ければ、セントラルスポーツの株価は割安である可能性があるのです(実際にはPERだけでなく、売上や1株あたり利益の成長率なども確認します)。

このように、同じ業界に属する競合他社と比較することで、PERの値をより正確に評価することができます。業種別のPER平均値との比較も悪くありませんが、できれば同業他社のPERと比較したほうがよいでしょう。

まとめ

  • 業種別のPER平均値は日本取引所のホームページで公開されている。しかし、業種は細かく分類されているわけではない。
  • 業種別のPER平均値には異業種の会社のPERも含まれている。そのため、PERの値をより正確に評価するためには、同業種の競合他社の値と比較したほうがよい。

今回はPERの値を評価する際の注意点について解説きました。本文で述べたとおり、私は注目している企業のPERを業種別平均値と比較したことはありません。それよりも競合他社との比較を重視しているのです。

なお、実際に企業に投資する際は競合他社についても調査します。PERを比較することも重要ですが、競合他社については他にも調査する項目がある(営業利益率や財務状況など)ことを理解しておいてください。