株式投資というと、「株の値上がり益を求めて株を売買すること」と考えがちです。しかし、株式投資の本来の目的は、株の売買による値上がり益を追求することではありません。

株式を購入して株主になることは、その会社の所有者(オーナー)になることです。つまり、「株主=会社のオーナー」なのです。

そこで今回は、会社のオーナーである株主の3つの権利について解説していきます。今はインターネット証券を利用して気軽に株を購入できるため「会社のオーナーになった」と実感することはありません。ただ、中長期的な投資を行うときは、株式投資の本来の目的を理解することも大切です。

株主の3つの権利

上述のとおり、「株主=会社のオーナー」です。そのため、株主にはさまざまな権利があります。主な権利は以下の3つです。

株主総会における議決権 会社の経営に参画する権利
剰余金の配当を受ける権利 会社の利益の一部を「配当金」として受け取る権利
残余財産の分配を受ける権利 会社が解散するときに、余った財産を受け取る権利

それぞれの権利について順に解説していきます。

株主総会における議決権

株主総会とは、会社が株主に対して業績を報告する会です。この会では業績の報告だけでなく、「会社運営における重要事項の採決」も行われます。例えば、「取締役の選任」や「配当金の金額」などの重要事項について採決が行われるのです。

株主はこれらの議案に対して賛否を表明する権利があります。これを議決権といいます。つまり、株主は議決権を行使する(=賛否を表明する)ことによって、間接的に会社の経営に参画できるのです。

また、株主に与えられる議決権は保有している株数に比例します。通常、1単元(100株であることが多い)につき1つの議決権が与えられます。つまり、「1単元=1票」というイメージです。そのため、保有している株数が多いほど、会社の経営に対して自分の意見を反映させやすくなるのです。

極論をいうと、議決権の過半数を保有する(=発行済み株式の過半数を保有する)ことで、会社の経営権を支配することができるのです。

剰余金の配当を受ける権利

株式会社は事業で得た利益の一部を株主に分配することがあります。通常は、「配当金」として現金を株主に分配します。

株主は会社に出資した見返りとして配当金を受け取ることができるのです。このように、株式を保有することで得られる利益のことをインカムゲインといいます。

※ 値上がりした株を売ることで得られる利益のことはキャピタルゲインといいます

配当金は「1株あたり年間〇円」というふうに決められています。例えば、「1株あたり年間5円の配当金」を分配する会社があったとします。この会社の株式を1,000株保有しておけば、年間5,000円の配当金を受け取れるのです。

このように、保有している株数が多いほど、たくさんの配当金を受け取ることができるのです。

株式投資ではキャピタルゲインを得ることもできますが、現代のような超低金利時代においては、インカムゲインも株主にとって重要な収入源になります。

残余財産の分配を受ける権利

業績の悪化や他社との合併などにより、株式会社が解散することがあります。このとき、借金を返済したあとに残った財産(残余財産)は株数に応じて株主に分配されます。つまり、保有している株数が多いほど、たくさんの残余財産を受け取れるのです

会社が解散することは滅多にありませんが、株式投資をする上で、この権利はとても重要です。なぜなら、株価の割安・割高を示すPBRと密接に関わっているからです。

■ PBR(株価純資産倍率:Price Book-Value Ratio)

PBRは「会社が解散したときに受け取る金額」と「現在の株価」の関係を示しています。

<例1:PBR=1倍>
PBR=1倍のとき、「会社が解散したときに受け取る金額」と「現在の株価」は釣り合っています。そのため、仮に投資先の会社が解散しても、投資したお金と同じ金額を受け取ることができます。

<例2:PBR=2倍>
PBR=2倍のとき、「会社が解散したときに受け取る金額」に対して「現在の株価」は2倍です。つまり、会社の資産に対して株価は割高になっています。このとき、投資先の会社が解散しても、投資したお金の半額しか返ってきません。

このように、「残余財産の分配を受ける権利」について理解しておけば、株式投資の重要な指標であるPBRについて理解が深まるはずです。

株主平等の原則

ここまで株主の3つの権利(議決権、配当金を受け取る権利、残余財産を受け取る権利)について説明してきました。ここで重要なのは、「いずれの権利も保有株数に完全に比例している」ということです。

つまり、100株を保有している株主(Aさん)と200株を保有している株主(Bさん)を比べると、Bさんのほうが2倍の権利を有していることになるのです。

このように、株主の権利が株数に比例することを「株主平等の原則」といいます。実際、会社法109条には以下のように定められています。

会社法109条
「株式会社は、株主を、その有する株式の内容および数に応じて、平等に取り扱わなければならない」

「株主平等の原則」は当たり前のことのように感じるかもしれません。ただ、勘の鋭い人であれば「じゃあ、株主優待はどうなの?」と思うかもしれません。なぜなら、株主優待の価値は株数に比例しないことが多いからです。

<株主優待の例>
・100株以上1,000未満の株を保有している株主:1,000円分の食事優待券を贈呈
・1,000株以上の株を保有している株主:3,000円分の食事優待券を贈呈

この例のように、株主優待の価値は株数に比例しません。そのため、「株主平等の原則に反するのでは?」と考えられることがあるのです。

ただ、株主優待は会社が行う「サービスの一環」として認められています。つまり、「あくまで会社側が行うサービスであって、株主の権利ではない」ということなのです。このように、株主優待の位置づけは実はかなりあいまいなのです。

まとめ

  • 株主は会社のオーナーである。
  • 株主には「会社の経営に参画する権利」「会社の利益の一部を配当金として受け取る権利」「会社が解散するときに、余った財産を受け取る権利」がある。
  • 3つの権利は保有している株数に比例して大きくなる。これを「株主平等の原則」という。

今回は、「株主の3つの権利」と「株主平等の原則」について詳しく解説してきました。普段、株式投資を行うときにこれらの権利や原則を意識することはありません。ただ、長期的に株式を保有するときは、会社のオーナーとして権利や原則を把握しておくことも大切です。