「貯蓄から投資へ」という言葉が浸透するにつれて、資産運用を始める女性が増えてきました。実際、私が資産運用のセミナーに出席すると、「女性の参加者が多いな」と感じることが増えています。

ただ、男性と女性では投資スタイルに大きな違いがあります。そして、そのスタイルの差が運用成績の差にもつながっています。

そこで今回は、株式投資における「男女間の投資スタイルの違い」について解説していきます。この違いを知ることで、株式投資で失敗しないためのヒントが見えてきます。

男性は女性よりも取引回数が多く運用成績が悪い

男女の投資スタイルに違いがあることは、過去のさまざまな調査で示されています。今回は、2001年に発表されたアメリカの事例を元に、男女間の投資スタイルの違いを紐解いていきます(参考文献:Quarterly J Economics, 2000, Vol.116, p.261)。

この調査では、約38,000件の証券口座を分析対象としました。その内訳は、「女性の証券口座:約8,000件、男性の証券口座:約30,000件」です。

そして、1991年2月から1997年1月までの6年間で、これらの証券口座における株取引の頻度や運用成績を解析しました。

ちなみに、1991年2月から1997年1月までの6年間で、S&P500(アメリカの株価指数。日本のTOPIXのようなもの)は約2倍になっています。つまり、この6年間のアメリカ市場は右肩上がりで、1年間で約12%成長していたことになります(計算方法は省略)。

このことを前提に、調査結果をまとめると以下のようになります。

<調査結果の要点>
投資金額に男女間の差はあまりなかった(男性の平均投資金額:21,000ドル、女性の平均投資金額:18,000ドル)

男性が保有している銘柄は1年間で77%が入れ替わった。一方、女性が保有している銘柄は1年間で53%が入れ替わった。つまり、男性のほうが積極的に株の売買を行っていた

株の売買を行わない場合(=元々保有していた株を持ち続ける場合)と比較すると、男女ともに運用成績が悪化していた。具体的には、男性の年間平均利回りは2.65%、女性の年間平均利回りは1.72%低くなっていた。


数値を覚える必要はありませんが、②と③の内容はしっかりと理解しておく必要があります。つまり、男性は女性よりも取引回数が多く、運用成績が悪いのです。

ただ、これはあくまで個人投資家の平均値を表したデータです。なかには、平均から外れて大きな利益を得ている人もいます。

また、上述のとおり、この調査が行われたのは相場が右肩上がりの時期でした。そのため、相場が上下に小刻みに動くとき(ボックス相場)や下落相場のときにもこの結果が当てはまるとは限りません。

したがって、この調査結果から得られる教訓は「相場が右肩上がりのときは頻繁に売買しないほうがよい」ということになります。

実際、私も購入した株は数ヶ月~数年間保有し続けるようにしています。デイトレーダーのようなプロの投資家は別として、私たちのような一般的な個人投資家は、過度な取引は避けて中長期的な視点で株式投資をすることが重要なのです。

※ 私は「相場が右肩下がりのときやボックス相場のときも頻繁に売買する必要はない」と考えています。ただ、それを裏付けるデータや調査結果は見つけられませんでした。

男性は「オーバーコンフィデンス」に注意しなければならない

上記の参考文献では、男女で投資行動に差が出る要因として男性の「オーバーコンフィデンス自信過剰)」が挙げられています。つまり、男性は「自分の予想や考えは正しい」と考えがちなのです。その結果、取引回数が女性よりも増えて運用成績が低下しているのです。

これは株式投資に限ったことではありません。日常生活においても、男性のほうが女性よりも自信過剰になることが多いように思います。

そして、そのことは生物学的にも証明されています。なぜなら、血液中や唾液中のテストステロン(男性ホルモン)濃度が高い人ほど、投資や人生のキャリア選択においてリスクの高い行動を取る傾向にあることが示されているからです(参考文献:Proc Nat Acad Sci, 2009, Vol.106, p.15268)。

※ 私は元々理系の研究者でしたので、昔はこの手の論文を読むことに抵抗はありませんでした。。

いいかえると、女性は男性よりも体内のテストステロン濃度が低いため、リスクを避ける傾向にあるのです。

このように、生物学的な観点から考えても男性は自信過剰になりがちです。これは仕方のないことです。だからといって、株取引を頻繁に行ってもよいという理由にはなりません。

特に男性は、「頻繁に取引するほど運用成績が下がる」という教訓を心に留めておく必要があります。そして、男女関係なく、中長期的な視点で資産運用をすることがとても大切なのです。

まとめ

  • 株式投資において「男性は女性よりも取引回数が多く運用成績が悪い」ということが、過去の調査で明らかにされている。
  • テストステロン(男性ホルモン)の影響で、男性は自信過剰になりやすい。
  • 株式投資では過度な売買を避けて、中長期的な視点を持つべきである。

今回は、「男女間の投資スタイルの違い」について、過去の調査結果を元に解説してきました。デイトレーダーのようなプロの投資家は別として、私たちのような一般的な投資家は頻繁に売買しても運用成績は上がりません。また、頻繁に売買していると、株価ばかりが気になって日常生活が疎かになってしまいます。

以上のことをしっかりと理解した上で、私たちは中長期的な視点で株式投資を行わなければならないのです。