東京証券取引所(東証)は日本でもっとも活発に取引が行われている証券取引所です。東証には「一部」「二部」「マザーズ」「JASDAQ(ジャスダック)」などの複数の株式市場があります。

このうちマザーズとJASDAQは、多くのベンチャー企業(新興企業)が上場していることから、新興市場と呼ばれています。

ただ、同じ新興市場でも、マザーズとJASDAQには異なる特徴があります。JASDAQはマザーズよりもはるかに古い歴史があるため、「老舗企業も上場している」「上場している企業の数が多い」などの特徴があるのです。

今回はJASDAQ市場に焦点を当てて、その特徴を詳しく解説していきます。JASDAQはマザーズと同じように個人投資家に人気のある株式市場です。あなたもJASDAQ銘柄に投資する機会があるはずなので、その概要を把握しておきましょう。

日本にある株式市場

日本には東京、名古屋、福岡、札幌などの大都市に証券取引所があります。その中でもっとも活発に取引が行われているのが東京証券取引所(東証)です。東証は2013年に大阪証券取引所(大証)と経営統合してできた日本取引所グループの子会社になります。

東証の中には「一部」「二部」「マザーズ」「JASDAQ」など複数の株式市場があります。

大企業が多く上場している東証一部では、機関投資家(保険会社や銀行など)や海外投資家がたくさん参戦しています。そのため、毎日莫大な資金が動きます。実に東証の9割近くの取引が東証一部で行われているのです。

一方、東証二部や新興市場では、主に個人投資家が取引を行っています。そのため、東証一部に比べると一日の株の売買数(出来高)はかなり少ないです。出来高が少ないため、これらの市場では株価が動きやすいという特徴があります。

ちなみに、名古屋証券取引所には「セントレックス」、福岡証券取引所には「Q-BOARD」、札幌証券取引所には「アンビシャス」などの新興市場があります。ただ、東証のマザーズやJASDAQに比べると、これらの市場ではあまり活発な取引は行われていません。

このように、日本にはたくさんの新興市場があります。これらの新興市場の中で、上場している企業数が圧倒的に多いのがJASDAQ市場です。それでは、JASDAQ市場の特徴について詳しく述べていきます。

JASDAQの歴史

同じ新興市場のマザーズと比べて、JASDAQの歴史は古くて複雑です。まずはJASDAQの成り立ちについて紹介します。

1963年 日本証券業協会が店頭登録制度を制定した。これにより、上場基準に満たない中小企業の株を証券会社の店頭で扱えるようになった。
1976年 店頭売買の仲介専門会社として「日本店頭証券株式会社」が設立された。その後、ベンチャー企業向けの店頭登録市場として整備された。
2004年 店頭登録市場から株式市場に業態が変更された。

これにより、店頭登録市場の「株式会社ジャスダック」から証券取引所の「株式会社ジャスダック証券取引所」へと商号変更された。

2010年 大阪証券取引所(大証)がジャスダック証券取引所を吸収合併し、「新JASDAQ市場」が作られた。
2013年 大証と東証が統合されたことに伴い、新JASDAQ市場は「東証JASDAQ」として東証に運営されるようになった。

このように、JASDAQは日本証券業協会が1963年に作った「店頭登録制度」に由来する株式市場です。その歴史はかなり古く、複雑であることがわかります。このような歴史があるため、JASDAQとマザーズでは上場している企業の特徴が異なるのです。その違いについて以下に紹介します。

東証マザーズとの比較

マザーズとJASDAQはいずれも東証が運営する新興市場ですが、下記のように異なる特徴があります。

マザーズ JASDAQ
開設 1999年 1963年
経緯 東証が新興企業向けに開設した株式市場 日本証券業協会が作った「店頭登録制度」が発展して開設された株式市場
上場企業の特徴 東証一部へのステップアップを目指す若い企業が多い。

IT関連の企業が多い。

成長企業だけでなく老舗企業なども上場している。
上場企業の数 249社 スタンダード市場:702社
グロース市場:40社
(上場企業の数は2018年4月の数)



東証マザーズは1999年に東京証券取引所が開設した新興市場です。いずれは東証一部への市場変更を目指す成長企業(特にIT関連企業)が多いという特徴があります。

一方、上述のとおり、JASDAQの歴史は1963年にさかのぼります。歴史が長く複雑なので、成長企業だけでなく老舗企業も上場しています。例えば、秩父鉄道(銘柄コード:9012)は1963年に上場(当時は店頭登録)しています。

またJASDAQは、一定の事業規模と業績が求められる「スタンダード市場」と成長可能性があれば赤字でも上場できる「グロース市場」に分かれています。赤字企業が上場できるという点で、マザーズはJASDAQグロース市場に近いといえます。

JASDAQは複数の市場を統合してできた歴史があるので、上場している企業の数が多いです。2018年4月の上場企業数は以下のとおりです。JASDAQにはマザーズや東証二部よりも多くの企業が上場していることがわかります。

  • 東証一部 2084社
  • 東証二部 515社
  • マザーズ 249社
  • JASDAQスタンダート 702社
  • JASDAQグロース 40社

このように、同じ東証の新興市場でもマザーズとJASDAQは異なる特徴があります。JASDAQには成長企業だけでなく、歴史が古い企業もたくさん上場していることを覚えておきましょう。

JASDAQに上場するための条件

上述のとおり、JASDAQはスタンダード市場とグロース市場に分かれています。スタンダード市場は企業の安定性を重視しているため、上場するには一定の事業規模と実績が求められます。

一方、グロース市場は企業の成長性を重視した市場です。そのため、特徴的な技術やビジネスモデルを有し、成長可能性がある企業であれば、赤字でも上場することができます。

各市場への上場基準(審査基準)は下記のとおりです。ここでは細かい説明は省略しますが、このほかにも複数の条件が設定されています。また、比較のために、マザーズ市場の審査基準も並べました。

JASDAQ
(スタンダード)
マザーズ JASDAQ
(グロース)
株主数 200人以上 200人以上 200人以上
流通株式時価総額 5億円以上 5億円以上 5億円以上
時価総額 50億円以上
(または利益1億円以上)
10億円以上 基準なし
純資産 2億円以上 基準なし プラスであること

この表からもわかるとおり、マザーズの審査基準はJASDAQ(スタンダード)とJASDAQ(グロース)の中間くらいの厳しさです。したがって、東証の中では、「東証一部 → 東証二部 → JASDAQ(スタンダード)→ マザーズ → JASDAQ(グロース)」の順に審査基準が厳しくなっています

JASDAQ銘柄に投資してみよう

東証マザーズと同じく、JASDAQにも成長中の企業が上場しています。例年、JASDAQから複数の企業が東証一部や東証二部へと昇格しているのです。そのため、私のような成長企業を狙う投資家にとってJASDAQはとても興味深い市場です。

JASDAQ銘柄に投資するときは、自分なりのルールを設定しておくことが大切です。ここでは細かい説明は省略しますが、私の場合は、「一株あたりの利益」「一株あたりの配当金」「自己資本比率」「PER」「PBR」「ビジネスモデル」「一日の出来高」などに注意して銘柄を選んでいます(他にも複数の評価項目があります)。

特に、JASDAQはマザーズと比べると出来高の少ない銘柄が多い傾向にあります。出来高が少なすぎると値動きが激しくなります。また売買注文の数が少ないので、株を売りたくても希望の価格で売れないときがあります。そのため、ある程度出来高の多い銘柄を買うようにしましょう。

私の場合は、一日当たりの出来高が「自分が買おうとする株数の50倍」を最低ラインに設定しています。例えば、200株買いたいなら、一日の出来高は10,000株がギリギリのラインです。最低ラインを下回る銘柄は、業績が良くても買いません。

自分が設定した基準を満たす成長企業の株を買ったら、基本的には長期(数ヶ月~数年)で保有します。企業の成長に伴って株価が伸びることを期待しているので、短期的な値上がりはあまり求めないのです。

良い銘柄を選べば、企業の成長とともに自分の資産を増やすことができます。あなたもぜひ成長企業への投資を検討してみてください。

まとめ

  • 東証には、「マザーズ」と「JASDAQ」の2つの新興市場がある。マザーズに比べてJASDASは歴史が長く複雑であるため、成長企業だけでなく老舗企業も数多く上場している。
  • JASDAQには、一定の事業規模と実績が求められる「スタンダード市場」と成長の可能性があれば赤字でも上場できる「グロース市場」がある。
  • 成長企業を狙う投資家にとってJASDAQは興味深い市場である。よい銘柄を選べば、企業の成長とともに自分の資産を増やすことができる。

今回はJASDAQの特徴について詳しく解説してきました。JASDAQには老舗企業の他に成長企業もたくさん上場しています。成長企業の株を買って長期で保有しておけば、徐々に自分の資産が増えていきます。あなたもJASDAQの成長企業への投資をぜひ検討してみてください。