投資信託を購入するときは、事前に交付目論見書(投資信託の説明書)を確認しなければなりません。ただ、ネット証券などで投資信託を購入する場合、交付目論見書をほとんど見ない人もいます。実際、私も昔はそうでした。

そこで今回は、交付目論見書の見方について順に解説していきます。今回の記事を読むことで、一連の流れを把握できるようになるはずです。投資信託には大金を投じることもあるので、その内容を把握してから投資するようにしましょう。

目論見書とは

目論見書とは「投資信託の説明書」のことです。目論見書には交付目論見書と請求目論見書の2種類があります。このうち、投資信託を購入する前に読まなくてはならないのは「交付目論見書」です。

一方、「請求目論見書」はより詳しく知りたい人が読む説明書なので、ページ数や情報量は交付目論見書よりも多くなっています。今回は、交付目論見書に絞って解説していきます。

交付目論見書を見るときは、投資信託の評価機関である「モーニングスター」(下記リンク参照)を利用すると便利です。私も目論見書を確認するときはいつもモーニングスターを利用しています。

モーニングスター

交付目論見書の記載内容や記載項目の順番などは統一されています。また、ページ数は10ページ前後なので、慣れてくれば読むべきポイントをすぐに把握できるようになります。

交付目論見書の流れ

上図のとおり、交付目論見書の構成は「商品分類・属性区分」「ファンドの目的・特色」「投資リスク」「運用実績」「手続き・手数料等」となっています。これらの項目を順に確認していきましょう。

なお、今回は私が子供の将来のために、子供名義で積み立てている「SBI・全世界株式インデックス・ファンド(愛称:雪だるま)」の交付目論見書を例に示しながら解説していきます。

商品分類・属性区分

商品分類属性区分は、交付目論見書の1ページ目か2ページ目に掲載されている下記のような表のことです。

「雪だるま」の商品分類および属性区分

商品分類は投資信託の概要を大雑把に示した表です。そして、商品分類の内容をより詳しく示しているのが属性区分です。これらの表を確認するだけでも、どのような投資信託なのかある程度把握することができます。私が交付目論見書を見るときも、まずはこれらの表を確認するようにしています。

ファンドの目的・特色

「ファンドの目的・特色」の項目には、投資信託の運用方針や運用プロセスなどが記載されています。「どこの何に投資するのか?」といった投資先に関する情報が書かれているのでしっかりチェックしておきましょう。

また、ファンドの仕組みについても大雑把でよいので確認しておきましょう。例えば、「雪だるま」の場合は、下図のような仕組みで運用されることになっています。

「雪だるま」の仕組み

SBI・全世界株式インデックス・ファンド(愛称:雪だるま)の交付目論見書より抜粋

私が投資したお金は最終的に3つのETF(株式市場に上場されている投資信託)を介して、「米国の株式」「米国を除く先進国の株式」「新興国の株式」に投資されることがわかります。

ただ、ファンドの仕組みを正確に理解するためには、ファミリーファンドファンド・オブ・ファンズという運用形態に関する知識が必須になります。深く理解したい人はこれらの形態についても学んでおくとよいでしょう。


投資信託に慣れてきたら、「雪だるま」の仕組みを見たときに、「ファミリーファンド形式で最終にETFに投資しているから、信託報酬(手数料の一種)は安いんだな」と解釈できるようになります。

次からは、インデックスファンドとアクティブファンドに分けて、「ファンドの目的・特色」の確認方法を解説していきます。

インデックスファンドの場合

インデックスファンド(日経平均株価などの指数に連動した値動きをする投資信託)の場合は、どのような指数に連動するか確認しておきましょう。

例えば、「雪だるま」の場合は、連動する指数について以下のように記載されています。

※連動する指数のことを「ベンチマーク」といいます

「雪だるま」のベンチマーク

このように書かれていることから、「雪だるま」は先進国および新興国の株式(約8,000銘柄)を対象とした株価指数に連動することがわかります。いいかえると、「雪だるま」に投資することにより、世界中の約8,000社に(ごく少額ずつ)投資したことになるのです。

なお、「雪だるま」の投資先は3つのETFでした。そのため、「3つのETFを組み合わせることで、FTSEグローバル・オールキャップ・インデックスに連動した値動きをする」ということになります。

アクティブファンドの場合

アクティブファンド(インデックスファンド以上の運用成績を目指す投資信託)の場合は、インデックスファンド以上に運用方針や運用プロセスが重要です。

なかには、非常に複雑な仕組みのアクティブファンドもあります。そのような複雑な仕組みを理解して魅力を感じるのであれば購入しても構いません。逆に、仕組みが理解できないくらい複雑な投資信託であれば、無理に買う必要はありません。

なお、複雑な仕組みのアクティブファンドは信託報酬が高くなることも留意しておいてください。

投資リスク

基準価額の変動要因としてどのようなリスクがあるのか記載されています。主に、以下のようなリスクが記載されているはずです。

株価変動リスク 経済情勢や企業業績の影響で株価が変動します。
為替変動リスク 海外資産に投資する場合は、為替変動の影響を受ける場合があります。一般的に、円高になると基準価額にマイナス、円安になるとプラスの影響があります。
流動性リスク 取引量が少ない株式に関しては、機動的に売買できずに損失を被る可能性があります。

運用実績

「運用実績」の項目では、基準価額や純資産総額の推移を確認することができます。

特に、純資産総額の推移は重要です。基本的には、純資産総額が少しずつ増えている投資信託を購入するようにしましょう。なぜなら、そのような投資信託は「①運用成績がよい」あるいは「②契約数(総口数)が増えている」と考えられるからです。

① 運用成績
運用成績が良ければ、必然的に純資産総額は増加します。運用成績については、基準価額の推移から把握することができます。

② 契約数(総口数)
投資信託を買う人が多ければ、運用成績が悪くても純資産総額は増加します。そのため、基準価額があまり上昇していないのに純資産総額が増えている場合は、「新たに投資信託を購入している人が多い」ということになります

「雪だるま」に関しても、純資産総額はまだ少ないですが、順調に右肩上がりに伸びていることがわかります。

「雪だるま」の運用実績

「SBI・全世界株式インデックス・ファンド(愛称:雪だるま)」の交付目論見書(2018.9.5)より抜粋

また、基準価額や純資産総額の推移だけでなく、具体的な投資先の銘柄も見ておきましょう。「雪だるま」の投資先は上述の3つのETFだけでしたが、具体的な企業名(「トヨタ自動車」など)が書かれていることも多いです。

ただ、組入銘柄は変更されるので、投資先を確認する際は、最新の交付目論見書や運用報告書を見るようにしましょう。

手続き・手数料等

「手続き・手数料等」の項目には、「お申込みメモ」「ファンドの費用」などの表が掲載されています。

お申込みメモ

「お申込みメモ」では、まず信託期間を確認しましょう。信託期間とは、投資信託の運用期間のことです。

投資信託の中には、信託期間は「20○○年○月○日まで」と記載されているものがあります。その日になると運用が終了されてしまうので、購入前には必ず信託期間を確認しましょう。投資信託は長期運用が基本なので、運用終了まで10年未満しかないときは、購入は控えておいたほうがよいでしょう

ただ、どうしても購入したいときは運用会社に延長予定があるか確認してみてください。信託期間があらかじめ設定されていても、状況に応じて延長される場合があるからです。

また、繰上償還(くりあげしょうかん)の条件についても確認しておきましょう。繰上償還とは、純資産総額や総口数(契約数)が減少しすぎたために、信託期間の途中で運用が強制的に終了することです。

繰上償還されると、そのときの時価で換金されるため、運用成績が悪ければ損失が確定することになります。逆に、運用成績が良ければ利益が確定します。ただ、運用が強制終了されることで長期投資のメリットを得られないため、顧客にとってはデメリットになります。

ファンドの費用

「ファンドの費用」では、購入時手数料(販売手数料)、運用管理費用(信託報酬)、信託財産留保額などの手数料を確認しておきましょう。

販売手数料に関しては、「○%を上限として販売会社が~~」としか書かれていない場合が多いです。そのため、実際には、購入を予定している証券会社や銀行などに直接確認したほうがよいでしょう。

また、信託報酬は投資信託を保有している間ずっと発生する手数料です。そのため、同じような特徴の投資信託であれば、信託報酬が安いほうを選ぶようにしましょう。

また、信託財産留保額は投資信託を解約するときに発生する手数料のようなものです。無料のものが多いですが、なかには解約時に信託財産留保額を徴収するものもあります。盲点になりやすい項目なので、購入前に確認しておくようにしましょう。

まとめ

  • 投資信託を購入する前には必ず交付目論見を確認しなければならない。
  • 交付目論見書の構成は「商品分類・属性区分」「ファンドの目的・特色」「投資リスク」「運用実績」「手続き・手数料等」となっている。すべての投資信託でこの構成となっているため、慣れてくれば読むべきポイントをすぐに把握できるようになる。

今回は、交付目論見書の読み方について詳しく解説してきました。慣れないうちは読むのが大変かもしれませんが、いくつかの交付目論見書を読み比べるうちに、少しずつ理解が深まっていきます。

投資信託は一度買うと長期で保有することになります。また、大金を投じることもあるので、購入前は交付目論見書を読んでしっかり読むようにしてください。