「信用取引は気になるけどちょっと怖い」と感じている投資家はたくさんいます。

信用取引とは、「証券会社からお金を借りて行う株取引」のことです。借金をするため、私自身も株式投資を始めた頃は信用取引に抵抗がありました。ただ、信用取引には「現物取引(自分のお金だけで取引すること)」にはないメリットがあります。

そこで今回は、信用取引の3大メリットである「レバレッジ」「空売り」「つなぎ売り」について解説します。また、小さなメリットである「売買手数料を安くする方法」についてもお伝えします。

もちろん信用取引にはデメリットもありますが、今回はメリットについて理解を深めていきましょう。これらのメリットを理解すれば、信用取引に対する抵抗も小さくなるはずです。

信用取引の概要

上述のとおり、信用取引とは証券会社からお金を借りて株取引を行うことです。

自己資金だけで行う「現物取引(現物)」では、手持ち資金の範囲内でしか株式を購入できません。もし手持ち資金が少なければ、大きな投資にチャレンジすることができないのです。しかし信用取引を利用すれば、少ない手持ち資金でも大きな投資にチャレンジすることができます。

ただ、いくらでも借金できるわけではありません。実際には、自分の資金や株式などを担保(たんぽ)にして、借金をすることになります。ここでは細かい計算方法は省略しますが、証券口座にある残高の約3倍の借金ができると理解しておいてください。

信用取引をうまく使えば大きな利益を得ることができます。一方、損失も大きくなるリスクがあります。つまり、信用取引はハイリスク・ハイリターンな取引なのです。

また、信用取引で株を買った場合、お金を返すまでの期間は金利がかかります。借金をしている期間が長いとその分余計な費用がかかることになるのです。

このように損失が生じるリスクもあるので、初心者のうちは現物取引を中心に行い、慣れてきてから信用取引をするのがよいでしょう。

それでは、次からは信用取引の3大メリットである「レバレッジ」「空売り」「つなぎ売り」について順に解説していきます。

信用取引のメリット1:レバレッジを効かせて投資できる

手持ち資金よりも大きな金額を取引することを「レバレッジを効かせる」といいます。 レバレッジは「てこ」という意味です。てこを使えば、少しの力で大きなものを動かせます。株式投資においても同じように、少しの資金で大きな取引をすることができるのです。

レバレッジを効かせることにより、大きな投資にチャレンジできます。これが信用取引の最大のメリットです。その効果を、以下の例で確認してみましょう。

<レバレッジの例>
・証券口座への入金額:60万円
・A社の株価:5,000円
・A社株の単元(取引単位):100株

A社株は100株単位でしか買えないので、現物取引なら100株(50万円分)しか買えません。しかし、信用取引を使うと手持ち資金の約3倍まで借金できます。つまり、約180万円までの取引が可能になるのです。そのため、信用取引ではA社の株を最大300株(150万円分)買うことができます。

その後、株価が上がって1株6,000円になったときに売却したとします。現物取引であれば、100株(60万円分)を売って10万円の利益です。一方、信用取引で300株買っておけば、利益は3倍の30万円になります。

このように、信用取引を利用すれば、少ない手持ち資金でも大きな利益を得られる可能性があります。ただ、大きな取引にチャレンジしているので、リスクも同じだけ大きくなっている点には注意しましょう。

ちなみに、信用取引で株を買うことを「信用買い」や「買い建て」といいます。株取引の場面ではよく出てくる言葉なので覚えておきましょう。

信用取引のメリット2:空売りができる

普通、株取引は「株を買う → 売る」の順番で行われます。ところが、信用取引では「株を売る → 買い戻す」という取引が可能なのです。

意味がわからないと思うので、もう少し詳しく説明していきます。

信用取引では、証券会社からお金だけではなく株を借りることもできます。そして、借りた株を株式市場で売ってしまうのです。その後、株を買い戻してその株を証券会社に返却します。

このように、借りた株を売ることを「空売り信用売り売り建て)」といいます。空売りのメリットは株価が下がったときに儲けられることです。つまり、下落相場で利益を得られるのです。逆に、株価が上がってしまったら損をすることになります。

<空売りの例>
・1株50万円のA社株を3株空売り(50万円×3株=150万円分の空売り)。
・株価が40万円に下がったところで3株買い戻し(40万円×3株=120万円分の買い)。

このとき、差額の30万円(150万円-120万円)が利益になります。

現物取引の場合は「株を買う → 売る」しかできません。この場合、下落相場で利益を得るのは難しいです。しかし、空売りを使えば下落相場でも儲けられます。つまり、投資の機会が増えることになります。

ただし、すべての銘柄を空売りできるわけではありません。空売りできる銘柄は、証券取引所や証券会社が定める基準(株主数や業績などの基準)を満たした銘柄に限られます。空売りしたくてもできない場合があることを覚えておきましょう。

ちなみに、私自身は滅多に空売りをしません。

私は「成長株を買って数ヶ月~数年保有してから売却する」という中長期の投資スタイルを確立しており、そのスタイルでうまくいっているからです。また、「空売りでは大きく儲けられない」ことも理由の一つです。

例えば、100万円分の株を空売りしたとしましょう。この場合、利益は最大で100万円です。一方、100万円で株を買った場合、株価が上がり続ける限り利益に上限はありません。

このような2つの理由から、私は空売りをあまりしませんが、空売りそのものを否定しているわけではありません。数日~数週間の短期間のトレードで利益を得る手法としては、とても有効な手段だと思っています。

信用取引のメリット3:わずかな手数料で株主優待を入手できる

自社のファンや株主を増やすために、多くの企業が株主に株主優待を贈呈しています。株主優待の内容は「自社製品」「クオカード」「お米」など企業によってさまざまです。

そして、株主優待を目当てに株を買う主婦や学生、個人投資家もいます。このとき、株主優待をもらうためには「現物」で株を買っておかないといけません。信用取引で買っても株主として認められないのです。

また、株主優待を得るためには、会社が定める権利確定日(月末が多い)に株主名簿に名前が記載されている必要があります。具体的には権利確定日の3営業日前までに株を買っておかなければなりません。

ここまでをまとめると、株主優待を得るためには、「権利確定日の3営業日前(月末の26日あたり)までに現物買いをしておく」ことが条件になります。

ただ、株主優待の権利確定後は株価が下がりやすいです。株主優待狙いの人は、権利が確定するとその銘柄をすぐに売って現金化するからです。この場合、株主優待はもらえるけれど株価が下がってしまうため、トータルでは損をしてしまう可能性があります。

しかし、株価の下落をカバーする方法があります。事前に「空売り」をしておくのです。

具体的には、まず目的の銘柄を現物買いします。それと同時に、同じ銘柄に空売りを入れます。これによって、株主優待の権利を得つつ、株価下落による損失をカバーすることができるのです。

このように、現物買いと空売りをセットで行うことを、「つなぎ売りクロス取引)」といいます。ネット証券の普及により売買手数料が下がったことで、人気が出た投資手法になります。売買手数料だけで株主優待を入手できるため、私もよくやっています。

信用取引のプチメリット:株式投資の手数料を節約できる

最後に、信用取引の小さなメリットについて紹介します。

信用取引は、現物取引に比べて売買手数料が安いです。つまり、信用取引を使えば安い手数料で株式を入手できるのです。私が使っているSBI証券の場合、100万円の株を現物買いするときの手数料は525円です。一方、信用買いだと手数料は378円です。

しかし信用買いの場合は、借金を返すまでの間は金利が発生してしまいます。そこで、金利が発生しないように信用買いをしたらすぐに借金を返してしまうのです。

信用買いの借金返済方法には2通りあります。「返済売り」と「現引き」です。

「返済売り」は信用買いした銘柄を売って借金を返すことです。ただ、信用買いしたものをすぐに返済売りしたのでは何がしたいのかわかりません。

ここで使うのは「現引き」です。「現引き」は自己資金から借金を返すことです。そして、信用買いした株を現物として受け取るのです。これにより、「信用買い」から「現物買い」に変わります。

現引きの手数料は無料です。したがって、現物買いしたいときでも、いったん信用買いをしてすぐ現引きしたほうがお得なのです。わずかな手数料の差ですが、私もよく使っている手法です。

まとめ

  • 信用取引とは、自分の資金や株式などを担保にして、証券会社からお金を借りて株取引をすることである。
  • 少ない資金で大きな取引をすることができます(レバレッジを効かせられる)。
  • 「株を売る → 株を買い戻す」という手順で取引することができる。これによって、下落相場でも儲けられる(空売り)。
  • 株主優待をわずかな手数料で手に入れることができる(つなぎ売り)。
  • 現物取引で株を買いたいときでも、いったん信用買いすることにより、安い手数料で買うことができる。

今回は信用取引のメリットを中心に説明していきました。ただ、信用取引はハイリスク・ハイリターンの取引なので、損失も大きくなりやすいというデメリットもあります。そのことも忘れないようにしましょう。