「セル・イン・メイ(Sell in May)」

長年、株式投資をやっている人であれば、この言葉を聞いたことがあるかもしれません。直訳すると「5月に売れ」という意味になります。

ただ、この言葉の解釈には注意が必要です。単純に「5月は株価が下がるから売れ」という意味ではないのです。

そこで今回は、「セル・イン・メイ」の本来の意味やその真偽について解説していきます。世の中には正しく理解されていない言葉がたくさんあります。「セル・イン・メイ」もその一つなので、今回の記事を読み、正しく解釈できるように理解を深めてください。

セル・イン・メイの概要

セル・イン・メイ(Sell in May)という言葉には続きがあります。全文は以下のとおりです。

Sell in May, and go away; don’t come back until St. Leger day. (5月に売って立ち去るがいい。そして、セント・レジャー・デーまで戻ってくるな)

セント・レジャー・デーは9月の第二土曜日を指します。つまり、「5月に売って、9月半ばまで売買するな」が本来の意味になります。

ところが多くの人は、セル・イン・メイを「5月は株価が下がるから早めに売って6月以降に買い戻せばいい」と誤解しています。株式投資のスクールを運営している人の中にも誤って理解している人がいます。

実際はそうではなくて、「5月から9月までは株価が下がりやすいので、5月のうちに売っておけ」と解釈するべきなのです。決して5月だけを指しているわけではありません。

セル・イン・メイの真偽

それでは、セル・イン・メイは本当に正しいのでしょうか? ここからは、その真偽を検証していきます。

誤って解釈した場合

まずは、セル・イン・メイを間違えて解釈した場合です。つまり、「5月だけ」で相場はどのように変化したか検証してみましょう。検証方法は以下のとおりです。

  • 検証期間:1990~2017年の28年間
  • 検証方法:4月最終営業日の日経平均株価の終値と5月最終営業日の日経平均株価の終値を比較

この方法で検証した結果、上昇が15回、下落が13回(15勝13敗)でした。つまり、「5月だけ」を見ると、株価の変動に規則性はないことがわかります。

上昇した年:1990年、1992年、1994年、1997年、1998年、2002年、2003年、2005年、2007~2009年、2014~2017年

下落した年:1991年、1993年、1995年、1996年、1999~2001年、2004年、2006年、2010~2013年
日経平均プロフィルのデータを元に検証

正しく解釈した場合

次に、セル・イン・メイを正しく解釈した場合です。今度は「5月~9月」の期間に日経平均株価がどのように推移したかを見ていきます。

  • 検証期間:1990~2017年の28年間
  • 検証方法:4月最終営業日の日経平均株価の終値と9月最終営業日の日経平均株価の終値を比較

検証した結果、上昇が9回、下落が19回(9勝19敗)でした。「5月だけ」の場合とは異なり、大きく負け越しているのです。

上昇した年:1992年、1995年、1999年、2003年、2005年、2009年、2013年、2014年、2017年

下落した年:1990年、1991年、1993年、1994年、1996~1998年、2000~2002年、2004年、2006~2008年、2010~2012年、2015年、2016年
日経平均プロフィルのデータを元に検証

このように、セル・イン・メイを正しく解釈すると、株価は格言のとおりに推移する傾向にあることがわかります。このことから、セル・イン・メイは相場の動きをある程度正しく言い表した格言であるといえるのです。

セル・イン・メイの根拠

それでは、なぜこのように株価が推移するのでしょうか? 

セル・イン・メイの格言が生まれた背景には、「米国ではファンドの解約が4月~5月に多い」「夏場は夏季休暇などの影響で相場が閑散となる」などの根拠があったといわれています。ただ、これらの根拠がどの程度正しいかははっきりしていません。

このように、明確な根拠はないがよく当たる経験則のことを金融用語でアノマリーといいます。セル・イン・メイには明確な根拠がないため、アノマリーに該当します。

また、ほぼ同じ意味のアノマリーとして「ハロウィンで買って桜で売れ」があります。ハロウィンは10月末なので、セル・イン・メイとほぼ同じ意味で使われます。

いずれにしても「春から秋にかけて株価は低調に推移することが多い」と理解しておきましょう。

なお、私自身はセル・イン・メイを少しだけ意識して株式投資を行っています。具体的には、9月末頃と10月末頃(ちょうど株主優待取りを検討する時期)は意識的に株を買うようにしています。

一方、売却時期についてはこの格言をあまり参考にしていません。私の場合は、「株価が伸びている銘柄を格言だけを信じて売るのはもったいない」と考えているため、4月になっても保有し続けることが多いのです。

まとめ

  • セル・イン・メイの本来の意味は「5月から9月まで株価は下がりやすいので、5月のうちに売りなさい」である。決して「5月だけ下がる」といっているわけではない。
  • 過去の日経平均株価で検証した結果、セル・イン・メイは株価の推移をある程度正しく言い表している。

今回は、株の世界で有名な「セル・イン・メイ」という言葉について解説してきました。この言葉は誤解されることが多いですが、正しく解釈すると、株価の値動きをある程度正しく反映した言葉であることがわかります。数週間~数ヶ月間株を保有する運用スタイルの人は、このような言葉を意識しておくとよいでしょう。