株式投資をしている人にとって、株主優待はとても魅力的です。実際、私も株主優待を目的に株を買うことがあります。

当然ですが、株主優待を受け取るためには株を買わなければなりません。それでは、いつまでに買えばよいのでしょか? またいつ売ればよいのでしょうか?

売買のタイミングについて「何日までに買えばよい」や「何日以降に売ればよい」のように、「日」単位で理解している人はたくさんいます。ところが、「その日の何時までに買えばよい」や「何時以降に売ればよい」のように、「時間」単位で理解している人は意外と少ないです。

そこで今回は、株主優待を手に入れるための売買のタイミングについて、「日」単位と「時間」単位の両方で解説していきます。発注のタイミングに迷っている人は、今回の記事でその悩みを解決してください。

権利確定日・権利付き最終日・権利落ち日

「時間」単位の解説に入る前に、まずは「日」単位の復習をしておきましょう。株主優待をもらうためには、権利確定日権利付き最終日権利落ち日をしっかりと理解しておく必要があります。それぞれ順に説明していきます。

権利確定日
株主としての権利が確定する日です。この日にあなたの名前が株主名簿に記載されていれば、配当金や株主優待を受け取ることができます。

権利確定日は企業によって異なりますが、通常は月末に設定されています。例えば、私が長年保有しているビックカメラ(銘柄コード:3048)は2月末と8月末が権利確定日です。また、同様に長年保有している銀座ルノアール(同:9853)は3月末が権利確定日です。

多くの企業は3月決算なので、それに合わせて3月末や9月末(上半期末)が権利確定日に設定されていることが多いです。

権利付き最終日
権利確定日に株主名簿に名前が記載されているためには、権利確定日の3営業日前に現物株を保有しておく必要があります。権利確定日当日に株を買っても間に合わないのです。

権利確定日の3営業日前のことを「権利付き最終日」といいます。暦によりますが、だいたい月末の26日前後が権利付き最終日になります。

権利落ち日
権利付き最終日の翌営業日のことです。権利付き最終日に現物株を保有しておけば株主の権利が確定するため、権利落ち日は株を売っても構いません。実際、この日に株を売る人が多いため、株価は下落する傾向にあります。

念のため、2018年3月のカレンダーを使って確認してみましょう。

権利確定日など

通常は3月30日(金)が権利確定日です。この場合、3営業日前の3月27日(火)が権利付き最終日、翌営業日の3月28日(水)が権利落ち日になります。まずはこれらの日程について理解しておいてください。

また、株主優待を得るためには現物取引(自己資金だけで行う取引)で株を買う必要があります。信用取引(証券会社から借金して行う取引)で株を買っても株主として認められないのです。

以上をまとめると、株主優待をもらうための条件は「権利付き最終日(月末の26日頃)に現物で株を買っておくこと」になります。

では、権利付き最終日の何時までに現物株を買えばよいのでしょうか? また、権利落ち日の何時以降に売ればよいのでしょうか? 以下では、発注する時間について、「現物株を売買する場合」と「つなぎ売りをする場合」に分けて説明していきます。

※ ほぼすべての投資家は東京証券取引所(東証)の銘柄を売買しているので、東証の取引時間(9:00~11:30、12:30~15:00)を使って説明します。その他の証券取引所では取引時間が微妙に異なるので注意してください。

現物株の買い注文と売り注文はいつ発注すればよいか?

まずは単純に現物株を売買する場合について述べていきます。この場合、「現物株の買い注文 → 株主の権利確定 → 現物株の売り注文」という流れで発注することになります。

※ 株を売らずに保有し続けても構いません。私もビックカメラなどの複数の銘柄を保有し続けています。

現物株を買うタイミング

株主の権利を得るためには、権利付き最終日の取引終了時(15:00)までに株を買う必要があります。極端な話、14:59に買っても大丈夫です。ただ、取引終了間際の指値注文(株価を指定する注文)は約定しない可能性が高いので、余裕をもって発注するようにしましょう。

現物株を売るタイミング

次に、株を売るタイミングについて説明します。通常、取引終了後に出された現物株の売買注文は翌営業日扱いになります。そのため、取引終了後であれば売り注文を出しても構いません。ただ、証券会社によって注文を受け付けていない時間帯があります。

例えば、私が使っているSBI証券であれば、取引終了後15分間は注文を受け付けていません。そのため、SBI証券の場合は15:15以降に発注することになります。

買い注文も合わせて考えると、SBI証券であれば、株の保有時間がわずか16分(14:59に買って15:15に売る)でも株主優待の権利が得られることになります。

なお、取引終了後の注文受付時間は証券会社によって異なります。株主優待目的でよく利用される楽天証券の場合、15:00~17:15の間は注文を受け付けていません。そのため、17:15以降に発注することになります。松井証券の場合は17:00以降です。

このように、売り注文に関しては証券会社によって発注可能時間が異なります。もし権利付き最終日に売り注文を出す場合は、各証券会社の受付時間を事前に確認しておく必要があります。また、翌営業の権利落ち日に売り注文を出す場合は、何時に発注しても構いません。

つなぎ売りと現渡しはいつ発注すればよいか?

次に、「株主優待のタダ取り」ともいわれる「つなぎ売り(クロス取引)」を行う場合について述べていきます。

<つなぎ売り>
株式の現物買いと空売り(証券会社から借りた株を売る→買い戻して返却する)を組み合わせることです。空売りは「売る→買い戻す」の順なので、株価が下がったときに儲けられます。

これらを組み合わせることにより、株主の権利を得つつ、株価が下がって損をするリスクを回避することができます。つまり、ノーリスクで株主優待を手に入れられるのです。

通常、空売りした場合は、株式市場で株を買い戻してから証券会社に返却します。しかし、現物株を保有している場合は、その株を返却しても構いません。このように現物株を返却することを現渡し(品渡し)といいます。

つなぎ売りをする場合は「現物買い注文 & 空売り注文 → 株主の権利確定 → 現渡し」という流れで発注することになります。それぞれの発注タイミングについて順に確認していきましょう。

現物買いと空売りを発注するタイミング

上述のとおり、現物株は権利付き最終日の取引終了時までに買わなければなりません。ただ、空売りを組み合わせるときは注意が必要です。

株価が下がって損をするリスクを回避するためには、現物買いと空売りの取引が「同じ株数」かつ「同じ株価」で成立しなければなりません。

そのためには、取引時間外に成行(株価を指定しない注文)で発注する必要があります。そうすることで、それぞれの注文をほぼ確実に同じ株価で約定させることができます。

また、取引時間内に同一銘柄の買い注文と売り注文を繰り返すと「仮装売買」という不正取引を疑われる可能性もあります。それを避けるためにも、発注するタイミングには気を付けてください。

※ 仮装売買:株式の売買が活発に行われているように見せて、他の投資家の参入を促すこと

上述のとおり、東証の取引時間は9:00~11:30と12:30~15:00です。11:30~12:30は取引時間外(お昼休み)です。

以上を踏まえると、現物買いと空売りは、権利付き最終日の12:30まで(ただし取引時間外)に行う必要があることがわかります。

多くのインターネットサイトでは「権利付き最終日の朝9:00まで」と記載されていますが、これは誤りです。「権利付き最終日の11:30~12:30」に発注しても間に合うことを覚えておきましょう。

現渡し(品渡し)のタイミング

最後に、現渡し(品渡し)のタイミングについて述べていきます。

結論をいうと、現渡しのタイミングに関しては証券会社によって異なります。また、現物株の売り注文とは少しタイムラグがあることにも注意が必要です。

例えば、SBI証券の場合、現物の売り注文は15:15以降であれば大丈夫でした。ところが、現渡の場合は15:30以降に発注する必要があります。15:30までに発注するとその日の注文として扱われてしまい、株主の権利を得ることができません。

現物株の売り注文の場合は、買い手がいないと取引が成立しません。そのため、取引終了後に出した注文に関しては、翌営業日に取引が成立することになります。一方、現渡しの場合は買い手がいなくても取引が成立します。自分の持っている現物株を証券会社に返却するだけだからです。

そのため、現物株の売り注文と同じように15:15に発注すると、当日中に約定してしまい、株主の権利が得られなくなります。

このように、SBI証券の場合は15:30以降に現渡し注文を出す必要があります。また、楽天証券の場合は17:15以降、松井証券の場合は17:00以降であれば大丈夫です。

現物株の売り注文と同じように、権利付き最終日に現渡し注文を出す場合は、何時以降であれば大丈夫か各証券会社に確認するようにしましょう。また、権利落ち日に現渡し注文を出す場合は、何時に発注しても大丈夫です。

まとめ

  • 株主優待を手に入れるためには、権利付き最終日の取引終了時までに現物株を買っておく必要がある。
  • つなぎ売りをする場合は、権利付き最終日の12:30まで(の取引時間外)に現物買いと空売りをしておく必要がある。
  • 権利付き最終日であれば、現物株の売り注文や現渡し注文は何時に出してもよい。

今回は、株主優待を受け取るための売買のタイミングについて「時間」単位で解説してきました。「SBI証券では株を16分間保有するだけで株主優待がもらえる」ということに驚いた人もいるでしょう。現物株を手放すタイミングについては各証券会社で異なりますが、権利落ち日であれば何時に発注しても構いません。今回の内容を踏まえた上で、株主優待取りにトライしてみてください。