数十年にわたる長期の資産運用を行う場合、定期的に一定の金額を積み立てて投資することが重要です。このように、お金を投じるタイミングを分散させる投資手法を「ドルコスト平均法」といいます。

数ヶ月や数年といった短期間の資産運用では、ドルコスト平均法を使うメリットはあまりありません。しかし、数十年という長期の資産運用においては、ドルコスト平均法は強い効力を発揮します。

ただ、すべての金融商品でドルコスト平均法が使えるわけではありません。そこで今回は、「ドルコスト平均法の概要」と「ドルコスト平均法で買える金融商品」について、私の実例を交えながら紹介していきます。今回の内容を参考に、あなたも老後の資産形成を考えてみてはいかがでしょうか?

ドルコスト平均法の概要

まずはドルコスト平均法について確認しておきましょう。冒頭に記したとおり、ドルコスト平均法は「定期的に一定の金額を投資すること」です。「毎月1万円ずつの投資」や「毎日500円ずつの投資」など、あなたのライフスタイルに合わせて投資条件を設定することができます。

ポイントは、「定期的」と「定額」です。この2つのポイントを守ることにより、投資信託などの金融商品を「安値でたくさん買い、高値ではあまり買わない」という理想の投資が可能となるのです。

例えば、「毎月1万円ずつ4ヶ月間投資する」と設定したとしましょう。また、金融商品の価格が2千円と5千円の間を行き来したとします。この場合、下記の表のとおり、4万円を投資して14口買うことができました。

1ヶ月目 2ヶ月目 3ヶ月目 4ヶ月目 合計
投資金額 1万円 1万円 1万円 1万円 4万円
金融商品の価格 2千円 5千円 2千円 5千円 --
購入した数 5口 2口 5口 2口 14口

毎月の「金融商品の価格」と「購入した数」を見てください。価格が安いときにたくさん買い、価格が高いときは少ししか買っていないことがわかります。このように、安値でたくさん買えているため、最終的に利益を出しやすいのです。

実際には、4ヶ月間という短期間で価格がこのように激しく変動することはありません。しかし、数十年という長期間においては、金融市場が低迷しているときもあれば、盛況なときもあります。

常に変動している金融市場において、ドルコスト平均法で淡々と定額投資を続けておけば、結果的に安値でたくさんの金融商品を買うことができます。これがドルコスト平均法の最大のメリットなのです。

ドルコスト平均法で購入できる金融商品と購入できない金融商品

それではドルコスト平均法で購入できる金融商品にはどのようなものがあるのでしょうか? 基本的には「定額で購入できるもの」に限られます。つまり、定額購入できないものは投資対象になりません。以下、ドルコスト平均法で買えないものと買えるものを順に確認していきましょう。

購入できないもの

購入できないものには「株」や「ETF(上場投資信託)」があります。

1. 株
株を買うためには「株価×単元(100株や1000株といった単位)」の資金が必要です。株価が500円の銘柄があったとしても、実際には50,000円や500,000円を投じないとその株を購入できないのです。そして、株価は常に変動しているため、いつも同じ金額を指定して買うことはできません。

2. ETF(上場投資信託)
ETF(Exchange-Traded Fund)は上場投資信託と呼ばれる金融商品です。その名の通り、投資信託を株式市場に上場したものになります。基本的には株と同じように取引されるため、ドルコスト平均法を使えません。

このように、株式投資ではドルコスト平均法は使えないので注意しておきましょう。

※ 「従業員持ち株会」のように、特殊なケースであればドルコスト平均法で購入可能です。また、「毎月1億円」のように非現実的な金額を投じるのであれば、株やETFでもドルコスト平均法で購入できます。

購入できるもの

購入できるものには「投資信託」「金・銀・プラチナなどの実物資産」「従業員持ち株会」などがあります。その中でも、投資信託が主流なので、ここでは投資信託を中心に解説を進めていきます。

1. 投資信託(すべての投資信託が買えるわけではありません)
投資信託とは、複数の投資家から集めたお金をファンドマネジャーと呼ばれる投資のプロが運用してくれる金融商品です。「ファンドマネジャーにお金を預けて資産運用をお任せする」と考えるとわかりやすいでしょう。

このような投資信託は、さまざまなサービス(制度)に組み込まれています。ここでは詳細は割愛しますが、「つみたてNISA」や「確定拠出年金」などが当てはまります。これらのサービス(制度)を利用する際には、積み立てが可能な投資信託を選ぶことになるのです。

また、あまり馴染みがないかもしれませんが、「海外の保険会社」や「ロボアドバイザー」などでも投資信託が利用されています。

海外の保険会社が取り扱う金融商品の中では、特にオフショアと呼ばれる非課税地域で運用されるものが有名です。運用期間中は非課税となるため、効率よく資産運用をすることができるのです。実際に私自身もイギリスにある保険会社の投資信託を毎月定額で購入して資産運用を行っています。

さらに、人工知能(AI)が投資先を選んで分散投資をしてくれる「ロボアドバイザー」も人気があります。AIが運用してくれるため、一般的な投資信託より手数料が安いのです。

2. 金・銀・プラチナなどの実物資産
投資信託ではありませんが、金・銀・プラチナなどの実物資産にもドルコスト平均法を活用できます。実際、私もプラチナを定期的に購入しています。

3. 従業員持ち株会
株はドルコスト平均法で購入できませんが、「従業員持ち株会」のような特殊なものは積み立て投資が可能です。ただし通常の株式市場では買えないため、勤務先に届け出て手続きする必要があります。

このように、積み立て投資が可能な金融商品やサービスはたくさんあります。税制面でのメリットがあるものや手数料が安いものもあるので、あなたも一度検討してみてはいかがでしょうか?

積立投資を始めるタイミング

ここまで読めば、ドルコスト平均法(積立投資)のメリットや金融商品の例についてはある程度理解できたと思います。

ただ中には、「どのタイミングで積立投資を始めればよいかわからない」と悩む人もいます。この問いに対する私の答えは「早いほうがよい」です。このように答えると、証券会社や金融機関の回し者のように思われるかもしれませんが、これは一人の投資家としての答えです。

冒頭に示したとおり、ドルコスト平均法は数十年にわたる長期の運用で効力を発揮します。そのメリットを最大限得るためには、運用期間は長いほうが良いのです。

積立投資を始める際に設定する項目(私の実例)

実際に積立投資を始める場合は、利用する金融商品やサービスに応じて条件を設定することになります。設定項目は金融商品によって異なりますが、参考までに私の例を簡単に紹介しておきます。

私は以下の表のとおり、海外(オフショア)の投資信託、2種類のロボアドバイザー、個人型確定拠出年金(iDeCo)、プラチナに積立投資をしています。

金融商品(サービス) 運用期間 購入間隔 購入方法
海外(オフショア)の投資信託 20年間 毎月 クレジットカード
ロボアドバイザー
(WealthNavi)
未定(自由に解約できる) 毎月 銀行口座から引き落とし
ロボアドバイザー
(THEO)
未定(自由に解約できる) 毎月 銀行口座から引き落とし
個人型確定拠出年金
(iDeCo)
60歳まで 毎月 銀行口座から引き落とし
プラチナ 未定(自由に解約できる) 毎日 プチチナ投資用の証券口座から引き落とし

どの金融商品に投資するにしても、最初に条件を設定する必要があります。その際は、自分のライフプランを見据えながら、どれくらいの金額を投資するかよく考えるようにしましょう。投資金額は途中で変更できるものが多いですが、ドルコスト平均法のメリットを活かすには、定額のほうが望ましいです。

いったん条件を設定してしまえば、あとは自動的に積立投資を行ってくれます。私は上記の5つの投資先に毎月合計約10万円を積立投資していますが、普段は何もしていません。定期的に運用成績を確認することと、銀行口座やプラチナ用口座の残高を確認するくらいです。

このように、ドルコスト平均法では機械的に淡々と積立投資をしてくれるため、投資家は何もしなくてもよいのです。

まとめ

  • ドルコスト平均法は数十年にわたる長期の資産運用において効力を発揮する。
  • ドルコスト平均法で購入できる金融商品は「常に定額で購入できるもの」に限られる。具体的には、投資信託や金・銀・プラチナなどである。
  • 「海外の投資信託」「ロボアドバイザー」「つみたてNISA]「個人型確定拠出年金(iDeCo)」などを利用すれば、簡単に積立投資を始められる。
  • 最初に運用期間や投資金額を設定すれば、あとは自動的に資産運用を行ってくれる。