投資信託の中には、「ファンド・オブ・ファンズ」という方式の投資信託があります。特に、国内株式や海外債券などに幅広く投資する「バランス型」の投資信託にこの方式のものが多いです。

ファンド・オブ・ファンズのように、一つの投資信託で幅広く分散投資できるのはとても魅力的です。しかし、この方式にもいくつかのデメリットがあります。

そこで今回は、ファンド・オブ・ファンズの仕組み、メリット、デメリットについて詳しく解説していきます。ファンド・オブ・ファンズ方式の投資信託を買いたくなったときは、必ずデメリットを把握するようにしてください。

投資信託とは

ファンド・オブ・ファンズの話を進める前に、通常の投資信託の仕組みを復習しておきましょう。

投資信託とは「投資のプロ(ファンドマネージャー)にお金を預けて、資産運用をお任せする金融商品」です。

例えば、「国内株式を中心に投資する投資信託」があったとします。Aさんがこの投資信託を買うと、ファンドマネージャーはAさんが預けたお金を複数の国内株式に分散投資してくれるのです(下図では3社にしか投資していませんが、実際は数十社以上に投資します)。

通常の投資信託

投資信託は便利な金融商品ですが、投資信託を買うときに購入時手数料(販売手数料)がかかります。また、プロに運用を任せるので、その分の費用(信託報酬)が必要となります。

これらの手数料が投資信託の販売会社(証券会社など)やファンドマネージャーが所属する運用会社の収益源となるのです。

ファド・オブ・ファンズの仕組みとメリット

ファンド・オブ・ファンズとは、下図のように「複数の投資信託に投資をする投資信託」のことです。”Fund of Funds” の頭文字をとって、「FOF方式」と呼ばれることもあります。

FOF方式

ファンド・オブ・ファンズ方式の投資信託を買えば、自動的に複数の投資信託を買ったことになります。

一般的に、資産運用で失敗するリスクを下げるためには、複数の金融商品に分散して投資する必要があります。ファンド・オブ・ファンズ方式の投資信託を買えば、かなり幅広い金融商品に分散投資できるため、資産運用で大損するリスクを抑えることができるのです。

また、「株式運用が得意なA社の投資信託1」と「債券運用が得意なB社の投資信託2」のように、優良な投資信託が組み合わされていると、運用成績が良くなりやすいです。

このように、ファンド・オブ・ファンズには「一つの投資信託だけで分散投資できる」「優良な投資信託が組み入れられているときは、資産価値の上昇が期待できる」というメリットがあるのです。

ファド・オブ・ファンズのデメリット

ここまでの説明で「ファンド・オブ・ファンズは魅力的な投資信託」と思った人が多いと思います。ただ、ファンド・オブ・ファンズにはいくつかのデメリットがあります。

代表的なデメリットは、「手数料が高い」「資産運用の実態がわかりにくい」「売れない投資信託の在庫処分に使われることがある」です。以下、順に説明していきます。

手数料が高い

投資信託を買うと必ず手数料がかかります。上述のとおり、手数料が証券会社や運用会社の収益源になるからです。

下図のように、ファンド・オブ・ファンズ方式の投資信託では、投資先のすべての投資信託で手数料が発生します。つまり、投資家としては「手数料の二重取り」をされていることになるのです。

FOF方式_手数料の二重取り

そのため、ファンド・オブ・ファンズ方式の投資信託では手数料がどうしても高くなってしまいます。中には、年間で「預け入れ資産の3%」もの信託報酬を取るものもあります。

このように、ファンド・オブ・ファンズ方式の投資信託は、手数料が割高になることを理解しておいてください。

資産運用の実態がわかりにくい

通常の投資信託の場合、ファンドマネージャーは資産運用が成功するように、株式や債券の売買を行っています。そして、投資信託の中身が大きく変化したときは、定期的に作成される運用報告書に記載されるようになっています(すべて記載されるわけではありません)。

ところが、ファンド・オブ・ファンズ方式では、投資信託に投資しているため、実際にどの株式や債券に投資しているのかを把握するのがとても難しいです。

仮に、あなたが投資しているファンド・オブ・ファンズの価格(基準価額)が下がったとします。このとき、ファンド・オブ・ファンズに組み入れられているどの投資信託に問題があったかはわかります。しかし、その先のどの銘柄に問題があったかまでは簡単にはわからないのです。

このように、ファンド・オブ・ファンズ方式の投資信託には、「資産運用の実態がわかりにくい」というデメリットがあります。

売れない投資信託の在庫処分に使われることがある

さきほど、「優良な投資信託が組み入れられているときは、資産価値の上昇が期待できる」と述べました。しかし、必ずしも優良な投資信託を組み込んでくれるとは限りません。

中には、「手数料が高く、運用成績もよくない自社系列の投資信託」が組み込まれている場合もあります。つまり、A社が売っているファンド・オブ・ファンズの中に、A社の投資信託を入れていることがあるのです。

このような場合もあるため、ファンド・オブ・ファンズは「売れない投資信託の在庫処分をしている」と批判されることもあるのです。

もし、あなたがファンド・オブ・ファンズを買いたくなったときは、「人気のない自社系列の投資信託が入っていないか?」という観点で、そのファンド・オブ・ファンズを評価するようにしてください。

まとめ

  • ファンド・オブ・ファンズ方式の投資信託とは、「複数の投資信託に投資する投資信託」である。
  • ファンド・オブ・ファンズ方式の投資信託には、「簡単に分散投資できる」「優良な投資信託が組み入れられているときは、資産価値の上昇が期待できる」というメリットがある。
  • 一方、「手数料が高い」「資産運用の実態がわかりにくい」「売れない投資信託の在庫処分に使われることがある」などのデメリットがある。

今回は、バランス型投資信託で採用されることのあるファンド・オブ・ファンズについて詳しく解説してきました。ファンド・オブ・ファンズの中には魅力的な投資信託があるのも事実です。そのため、しっかりとデメリットを把握した上で、購入を検討するようにしてください。