私は株式投資と投資信託をメインに資産運用を行っています。ただ、株式投資と投資信託では、資産運用をするときの考え方が大きく異なります。

特に、含み損(=買ったときより価格が下がっている状態)を抱えているときは、まったく違う考え方をします。

そこで今回は「投資信託における含み損」について、株式投資の場合と比較しながら解説していきます。株式投資と違って、投資信託では含み損を気にしなくてもよいことを理解しておきましょう。

株式投資では損切り(ロスカット)をする必要がある

株式投資は投資信託に比べてリスクが高いです。そして、もっとも大きなリスクは、投資先企業の倒産です。投資先が倒産すると、当然、投資したお金は1円も返ってきません。

実際、私も過去に「投資先の倒産」を経験したことがあります。過去に私が投資していたサンシティ(銘柄コード:8910)という会社が、リーマンショックの影響で倒産してしまったのです。

当時の私は投資初心者だったため、株価が下がり続けても「きっと回復するだろう」と根拠のない予想をしていました。そのため、損切り(ロスカット)(=それ以上株価が下がる前に売ってしまうこと)をせずに、株を保有し続けたのです。

結局、サンシティ社は倒産してしまい、私が投資した約50万円はパーになってしまいました。

このように株式投資では、投資先が倒産して資金が1円も戻ってこなくなるリスクがあります。

また、倒産しなくても、業績不振が続いて株価が低迷し続けることもあります。そのような場合、貴重な運用資金を不良銘柄に拘束されてしまいます(いわゆる「塩漬け」です)。そして、他に優良銘柄があっても「運用資金がないため投資できない」という状態になってしまうのです。

このように、株式投資においては、倒産リスクを避けたり運用資金を確保したりするために、損切りが必要になります。むしろ、損切りできない投資家は、株式投資には向いていないのです。

優良な投資信託は損切り(ロスカット)をしなくてもよい

一方、優良な投資信託を買っている場合、含み損を抱えても損切りをする必要はありません。

<優良な投資信託>
①国内外の株式や債券に分散投資をしている投資信託
②株式相場の暴落時に「暴落しない仕組み」がある投資信託
※ この記事では、主に①について記載しています

投資信託は10年以上の長期で保有することが基本です。そして、優良な投資信託に投資している限り、10年以上保有しておけば高確率で利益をもたらしてくれます。

もちろん相場は常に変化しているため、基準価額(投資信託の時価)が短期的に値下がりすることはあります。しかし、優良な投資信託の価値が下がり続けることはありません。その理由は、「世界経済は成長し続けているから」です。

世界の人口は今後も増えることが予想されています。人口が増えると、それに応じて消費や生産などの経済活動が活発になります。そのため、世界の経済は今後も発展することが予想されているのです。

実際、1990年以降、世界経済は年間3~5%の割合で成長し続けています。そして、この成長率は今後も続くと予想されています。そのため、世界経済に分散投資をしている優良な投資信託であれば、短期的にマイナスになることはあっても、長期的にはプラスのリターンをもたらしてくれるのです。

このような理由から、優良な投資信託であれば、損切りをせずに保有し続けて問題ありません。

ただ、そうはいっても、含み損を抱えていると不安になる人もいると思います。そこで、投資信託で含み損を抱えているときの考え方について「積み立て投資」と「一括投資(一括購入)」に分けて述べていきます。

積み立て投資の場合

投信積立などを利用して積み立て投資を行っている人も多いと思います。実際、私も以下の商品やサービスを利用して積み立て投資を行っています。

<私が利用している積み立て投資>

  • オフショア(海外の非課税地域)の投資信託
  • ウェルスナビ(コンピューターが運用してくれる投資信託)
  • THEO(同上)
  • iDeCo(個人型確定拠出年金)

※ プラチナの積み立て投資も行っていますが、投資信託ではないのでここでは省略


積み立て投資の場合、含み損を抱えていてもまったく気にする必要はありません。むしろ私は、「リーマンショックのような金融ショックが起こって、どんどん価格が下がってほしい」とさえ思っています。

なぜなら、積み立て投資であれば、そのような状況でも淡々と投資信託を購入し続けることができるからです。そして、いずれ相場が回復したときに大きな利益をもたらしてくれることがわかっているからです。

世界経済は、好景気と不景気を繰り返しながら成長しています。一時的に不景気になったとしても、いずれ必ず回復します。そのため、運用の途中で景気が大きく悪化してもまったく気にする必要はないのです。

一括投資の場合

投資信託に一括投資している場合は、積み立て投資とは少し事情が異なります。なぜなら、一括投資の場合は「安くなったときに買う」ということができないからです。

ただ、優良な投資信託(世界経済に分散投資をする投資信託)であれば、やはり損切りをする必要はありません。

投資情報を提供しているIbbotson社の過去のデータによると、世界経済への分散投資を10年間続けた場合、必ずプラスのリターンが得られることが示されています。1999年~2008年の10年間(10年目にリーマンショックが起こっています)でも、約10%のリターンが得られているのです。

リーマンショックのような短期的な暴落に耐えられる精神力が必要になりますが、一括投資においても、長期で保有すれば含み損はいずれ利益に変わるのです。

また、今回は詳細を省きますが、「暴落しない仕組みのある投資信託(上記の②)」も優良な投資信託に該当します。例えば、株式相場の下落時に、現金比率を増やしたり株の空売りをしたりする投資信託があります。

このような投資信託を買っておけば、株式相場が下落しているときでも損失をかなり低く抑えることができます(私もこのような投資信託に一括投資しています)。初心者向けではありませんが、このような「含み損が大きくならない仕組みの投資信託」があることも知っておいてください。

損切り(ロスカット)をしたほうがよい投資信託

投資信託の中には、長期で保有しても資産価値が上昇する確信を持てないものがあります。そのような投資信託はそもそも買ってはいけません。また、買ってしまった場合は早めに損切りをしたほうがよいでしょう。

例えば、「毎月分配型の投資信託」「ブームに乗ったテーマ型投資信託」「通貨選択型投資信託」などが、そのような投資信託に該当します。

これらは上述の「優良な投資信託」ではありません。そのため、長期で保有しても資産価値が上昇するとは限りません。

また、投資信託の純資産総額が減少し続けているもの(≒ 解約数が増えているもの)も要注意です。このような投資信託は繰上償還のリスクがあるため、長期で保有できない可能性があります。

※ 繰上償還(くりあげしょうかん):投資信託の運用を途中で終わらせて顧客に返金すること。長期投資のメリットを得られないため、顧客としては嬉しくない。

もしこれらの投資信託を買って含み損を抱えている場合は、勉強代だと思って早めに損切りすることをおススメします。

まとめ

  • 株式投資の場合は、倒産リスクを避けたり運用資金を確保したりするために、損切りをしたほうがよい。
  • 投資信託は10年以上の長期運用が基本である。そのため、短期的な含み損は気にしなくてよい。
  • 優良な投資信託(世界経済に分散投資をする投資信託)であれば、10年以上の長期で保有することで、リターンを得られる可能性が高い。

今回は、株式投資と比較しながら、投資信託の「含み損」について解説してきました。世界経済に分散投資をしている投資信託であれば、基本的に損切りをする必要がないことを理解できたと思います。投資信託は長期保有が基本なので、短期的な値動きに一喜一憂しないようにしましょう。