投資信託は、インデックスファンドとアクティブファンドに大別することができます。そして、一般的には「インデックスファンドのほうが運用成績は良い」といわれています。ただ、非常に良い運用成績を残しているアクティブファンドがあることも事実です。
そこで今回は、インデックスファンドとアクティブファンドの運用成績について、金融庁のデータを用いて検証していきます。世の中には「インデックスファンド最強」という風潮がありますが、アクティブファンドの魅力も理解しておきましょう。
インデックスファンドとアクティブファンドの概要
インデックスファンドとアクティブファンドの運用成績を比較する前に、まずはそれぞれの投資信託について復習しておきましょう。
TOPIX(東証株価指数)や日経平均株価などの指数に連動した値動きをするように設計された投資信託のこと。指数に応じて投資先の銘柄が自動的に決まるため、信託報酬(投資信託を保有している間にかかる手数料)は安い。
アクティブファンド
TOPIXや日経平均株価などの指数を上回るように積極的な運用が行われる投資信託のこと。ファンドマネージャーが企業分析などを行った上で銘柄を選抜するため、信託報酬は高い。
このように、インデックスファンドとアクティブファンドは、目指す運用結果が異なるため、投資先となる銘柄の選び方がまったく違います。それに応じて、信託報酬の料率も異なるのです。
それでは、インデックスファンドとアクティブファンドでは、どちらのほうが運用成績が良いのでしょうか?
以下にその答えを述べていきます。
インデックスファンドとアクティブファンドの運用成績
インデックスファンドとアクティブファンドを比較すると、一般的には「インデックスファンドのほうが運用成績は良い」といわれています。
ただ、比較するファンドや比較した年の市場状況なども影響するため、一概にはいえません。このことを金融庁が2017年(平成29年)に発表したデータを用いて検証していきましょう。
以下の図を見てください。これは、インデックスファンドとアクティブファンドの「信託報酬」と「過去10年間の年間平均利回り」をグラフに表したものです。この図を詳しく読み解いていきます。
×:日経225ETF(日経平均株価に連動するインデックスファンド)
●:国内株式を投資対象としたアクティブファンド(281本)
横軸(信託報酬):右へ行くほど信託報酬が高い
縦軸(年間平均利回り):上へ行くほど得られる利益が多い
※ 金融庁資料を一部改変
「平均」で比較すると、運用成績はインデックスファンドのほうが良い
過去10年間における日経225ETFの年間平均利回りは2.76%でした(×は縦軸の2.76%のところにあります)。一方、281本のアクティブファンドの年間平均利回りを計算すると1.36%でした。
このように、平均値で比較するとインデックスファンドのほうが運用成績が良いのです。これには主に2つの理由があります。
理由1:プロでも長期的に勝ち続けることは難しい
どんなに企業分析などを行っても、予想通りに株価が動かないことがあります。私も普段から株式投資を行っているので、このようなことはよく経験します。
特に、「10年間」のような長期に渡って市場平均を上回る利益を出し続けるのはプロでも難しいのです。年によっては市場平均を下回ることもあるため、10年間の平均で比較すると、インデックスファンドに負けてしまうアクティブファンドが多いのです。
理由2:アクティブファンドの信託報酬が高い
もう一つの理由は「アクティブファンドの信託報酬が高いから」です。信託報酬は投資したお金から自動的に差し引かれます。そのため、信託報酬が高い投資信託は、運用成績が悪くなりやすいのです(グラフの年間平均利回りは信託報酬を差し引いたあとの値です)。
これらの理由があるため、平均値で比較するとインデックスファンドのほうがアクティブファンドよりも運用成績は良くなるのです。
好成績を残すアクティブファンドもある
先ほど、「平均値で比較するとインデックスファンドのほうがアクティブファンドよりも運用成績は良い」と述べました。一方、特定の投資信託に着目してみると、インデックスファンドよりも好成績を残しているアクティブファンドがたくさんあることも事実です。
※ 金融庁資料を一部改変
特に、〇で囲ったアクティブファンドに注目してみてください。年間平均利回りが10%を超えているアクティブファンドが2つ、年間平均利回りが8~10%のアクティブファンドが4つあることは特筆に値します。
日経225ETFの年間平均利回りが2.76%であることを考慮すると、これらのアクティブファンドの運用成績がずば抜けてよいことがわかります。
ただ、このような投資信託を事前に見極めるのは簡単ではありません。また、過去10年間の成績が良かったからといって、今後も同じような好成績が続く保証はありません。ただ、このような好成績を残しているアクティブファンドがあることも覚えておいてください。
世の中には「インデックスファンド最強」という風潮があります。特に、インデックスファンドへの積立投資は、リスクを抑えて長期的に資産を増やせる有力な投資方法なので、私も実践しています。
一方、「リスクを許容できるのであれば、アクティブファンドを利用してもよい」と私は考えています。優良な投資信託を選ぶ目利きが必要になりますが、インデックスファンドを凌駕する運用成績が得られるはずです。
信託報酬の高いアクティブファンドはハイリスク・ハイリターンになりやすい
※ 金融庁資料を一部改変
今度はこのグラフに描かれている黒い点線に着目してください。アクティブファンドの信託報酬が高くなるほど、利益と損失がどちらも大きくなっていることがわかると思います。つまり、信託報酬が高いアクティブファンドはハイリスク・ハイリターンなのです。
このように、信託報酬が高いアクティブファンドを選ぶときは、「リスクも高い」ということを覚えておいてください。
まとめ
- 年間平均利回りは「インデックスファンド 2.76%」「アクティブファンド 1.36%」である。したがって、一般的には「インデックスファンドのほうがアクティブファンドよりも運用成績が良い」といわれている。
- ただ、中にはインデックスファンドを凌駕する運用成績を残すアクティブファンドもある。
- 信託報酬の高いアクティブファンドはハイリスク・ハイリターンである。
今回は、インデックスファンドとアクティブファンドの運用成績について、金融庁のデータを用いて検証してきました。
着実なリターンを目指すのであれば、インデックスファンドへの積立投資をおススメします。一方、ある程度のリスクを覚悟して大きなリターンを目指すのであればアクティブファンドを利用しましょう。私は両方の投資信託を利用して将来に向けた資産形成を行っています。