「最近は景気が良い」とか「景気が悪くて困っている」のような会話が行われることがあります。しかし、そもそも「景気がいい or 悪い」はどのような基準で決まっているのでしょうか?
実は、景気の判断には「あいまいな指標」と「明確な指標」があります。
あいまいな指標とはアンケートのことです。国民や企業に景気に関するアンケートを取って、その回答から景気の良し悪しが判断されるのです。
一方、明確な指標とは、有効求人倍率や東証株価指数などから算出される景気動向指数のことです。また、GDP(国内総生産)も景気の動向を判断する指標になります。
そこで今回は、景気の明確な指標となる「景気動向指数」や「GDP」について解説していきます。経済ニュースを読み取る際に役立つ知識になるので、概要を理解しておきましょう。
景気動向指数とは
景気動向指数は、内閣府が毎月発表している経済指標です。景気に敏感に反応する29種類の指標を統合して算出される数値で、日経新聞に毎週掲載されています。
日経新聞の該当箇所を見てみると、「先行」と「一致」と表記されて、それぞれの数値が記載されています。「先行」と「一致」の意味を確認しておきましょう。
- 先行:先行指数のこと。景気を先取りして動く「新規求人数」や「東証株価指数」など11の指標をもとに算出される。
- 一致:一致指数のこと。景気と並行して動く「鉱工業生産指数」や「有効求人倍率」など10の指標をもとに算出される。
どちらの数値も100を超えていれば、景気が良いと判断できます。実際、リーマン・ショック後の値は、どちらの指数も100を大きく割り込んでいました。
ただ、リーマン・ショック以降は順調に景気が回復していることがわかります。アベノミクスの影響で日経平均株価が上昇し始めたのは2012年末頃でしたが、景気動向指数はその1~2年前から100前後になっていたのです。
景気動向指数に関しては、これくらいの内容を把握しておけば問題ないでしょう。そうすれば、「5月の景気一致指数が4ヶ月ぶりに低下」のようなニュースを目にしても、あまり抵抗なく読み進められると思います。
GDP(国内総生産)とは
景気動向指数だけでなく、GDP(国内総生産)も景気の動向を把握する上で重要な指標になります。
GDPとは「日本国内で1年間に生産された付加価値の合計」を表した値です。「付加価値」がわかりにくいと思いますが、「付加価値=企業や個人が生み出した利益」と考えて問題ありません。
GDPが大きいということは、それだけ企業が儲かっているということです。つまり、昨年と比べてGDPが大きくなっていれば、景気が良くなっていると判断できるのです。
ちなみに、GDPは日本国内で生産された価値から算出されるので、「外国人労働者が生み出した価値」も含まれます。あくまで「日本国内」を重視しているのです。
※ 景気の動向を判断する際は、GNPではなくGDPを用います。
名目GDPと実質GDP
GDPには「名目GDP」と「実質GDP」があります。この際、これらの言葉の意味もしっかりと理解しておきましょう。携帯電話の手数料「実質無料」よりは理解しやすいはずです。
- 名目GDP:国内で生産された付加価値の合計
- 実質GDP:名目GDPから物価変動の影響(通貨価値の変動の影響)を補正した値
例えば、去年と比べて名目GDPが10%上昇したとします。一見すると、国内で生まれた利益が増えているので、国民の生活が豊かになっているように思うかもしれません。
ところが、物価も同じように10%上昇していた場合、国民の生活が豊かになったとはいえません。給料などの利益が増えても、出費も同じように増えるため、生活の水準は変わらないのです。
このような物価変動の影響を補正して算出されるのが実質GDPです。実質GDPを用いることにより、過去のGDPや他国のGDPと正確に比較することができるのです。
なお、日本の実質GDPは約500兆円です。リーマン・ショックの影響で2008~2009年は前年比マイナスの値となりましたが、それ以降はわずかに右肩上がりのカーブを描いて推移しています。
まとめ
- 景気動向指数には、景気を先取りして動く「先行指数」と、景気と並行して動く「一致指数」がある。いずれの数値も100以上であれば、景気は良いと判断できる。
- GDPが昨年より大きくなっていれば、景気は良くなっていると判断できる。ただし、昨年と比較する際は、物価変動の影響を補正した「実質GDP」で比較するべきである。
今回は、景気の良し悪しを判断する際の指標となる景気動向指数やGDPについて解説してきました。資産運用を行っていると、経済ニュースが気になるようになります。経済の話は難しいと思うかもしれませんが、身近なところから慣れていけば、抵抗なく知識が身についていくと思います。