一般的に、「日本人は欧米人に比べて投資をしている人が少ない」といわれています。実際、私の親戚で積極的に投資をしている人はいません。あなたのまわりも同じような状況ではないでしょうか?
それでは、なぜ日本人は投資をしないのでしょうか? また、日本人と欧米人では、資産状況にどれくらいの差があるのでしょうか?
今回は、金融庁がまとめた「金融レポート」を使って、日本人の資産運用の現状を解説していきます。また、私が考える「日本人が投資をしない理由」と「日本人に投資を促す最善の方法」を紹介します。あなたの将来や日本の将来を明るくするためにも、ぜひ積極的に資産運用をしましょう。
日本人は欧米人に比べてあまり投資をしていない
まずは2016年(平成28年)に金融庁が報告した金融レポートのデータを紹介します。下のグラフは、アメリカ、イギリス、日本における一般家庭の資産状況の平均値を示したものです。
引用元: 金融レポート(平成28年9月)
アメリカの一般家庭では、金融資産のうち現金・預金がなんと13.7%しかありません。逆に、株式や投資信託(投信)の割合が29.0%もあります。株式や投資信託は現金・預金の2倍以上を占めているのです。この数値に驚いた人も多いでしょう。
それに対して、日本では現金・預金が51.9%、株式・投信は14.9%です。現金・預金はアメリカの約4倍もある一方、株式・投信はアメリカの約半分しかありません。
このデータを見て、「我が家は株式や投資信託なんて持っていない」という人も多いと思います。実際、株式や投資信託を保有している家庭は、4世帯に1世帯しかありません。(2015年の日本証券業協会の調査)。
つまり多くの世帯では、株式や投資信託すら保有していないのです。上記のデータはあくまで平均値であることを認識しておいてください。
いずれにしても、このグラフからは、「日本人は現金・預金は好きだけど、投資は嫌い」ということが読み取れます。
また、イギリスでは「株式・投信の割合は少ないが、保険・年金の割合が高い」という特徴があります。イギリスの保険会社は「保障」よりも「投資・貯蓄」を重視する傾向にあります。日本でも保険会社に預けたお金は保険会社によって運用されていますが、イギリスの保険会社のほうが積極的に運用しているのです。
そして、このような違いが積み重なって、日本の家庭の資産状況は欧米に比べてかなり寂しいものになっています。そのことを示したのが下のグラフです。
引用元: 金融レポート(平成28年9月)
このグラフは、1995年における世帯の平均資産を1として、その後の資産の推移を表したものです。アメリカやイギリスでは積極的に資産運用が行われているため、20年間で世帯の資産は約3倍に増えています。つまり、資産運用によって家計が潤っているのです。ところが、日本ではあまり資産運用が行われていないため、約1.5倍にしか伸びていません。
このように、資産運用に消極的な日本では、欧米の家庭に比べて世帯の資産増加率がかなり低いのです。このことからも、資産運用の重要性がわかると思います。
金融庁は国民に資産運用を推奨している
金融庁は、このような状況を改善し、国民に資産運用をしてもらおうと画策しています。例えば、「確定拠出年金」「NISA」「つみたてNISA」などの言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。このようなさまざまな制度を作って、国民に投資を促しているのです。
その背景には日本の年金制度の問題があります。日本の年金制度は破綻しつつあるため、今後、支給年齢の引き上げや支給額の減額などが段階的に行われていきます。老後の生活を送るには、年金だけでは不十分なのです。
このことは金融庁も認識しています。実際、金融レポートのp,49には「公的年金にも自ずと財政的な制約がある中で、勤労世帯の自助努力を促し、安定的な資産形成を進めることを実現していくことが重要」と記載されています。
このように、金融庁も「国民(特に働く世代)に資産運用をしてほしい」と考えているのです。金融庁からのメッセージを受け取り、老後に備えて資産運用をすることは正しい選択なのです。
投資に対する日本人の意識
上述のとおり、金融庁は働く世代に資産運用を行ってほしいと考えています。ところが、日本人の投資に対する意識はかなり低いです。
投資未経験者を対象に行ったアンケートでは、なんと83%もの人が「資産形成のための投資は必要ない」と答えています。
ちなみに、日本人の約80%は投資未経験者です(2015年の日本証券業協会の調査)。その中の83%なので、日本人全体では約65%(80% × 83%)の人が投資は不要と考えていることになります。
これと同じような結果が「投資教育に関する調査」でも得られています。
引用元: 金融レポート(平成28年9月)
日本人のうち、71%の人は過去に投資教育を受けたことがありません。そして、そのうちの67%の人は「今後も金融や投資に関する知識を身に付けたいと思わない」と答えています。
つまり、日本人全体では約50%(71% × 67%)の人は「投資教育を受けていないし、今後も必要ない」と考えているのです。このように考えている人たちは、投資を経験することなく一生を過ごすことになるはずです。
このように、多くの日本人が資産運用に興味を示すことなく、一生を過ごすことになります。今の状況では、金融庁が国民にメッセージを送っても、多くの人の心には響かないのです。
日本人が投資に消極的な理由
それでは、なぜ日本人は投資に対して興味がないのでしょうか? 私は「昔からの国の方針」と「日本人の国民性」という二つの理由があると考えています。
昔からの国の方針
日本では昔から預貯金が推奨されてきました。逆に、資産運用については「怪しい」「詐欺」などのイメージがありました。この背景には、金融や投資に関する国の教育方針があります。
アメリカでは小学生の頃から「投資の授業」を受けます。「アメリカ人はすべからく経済教育を受ける権利と義務がある」と教育法で決められているのです。しかし、日本ではこのような教育を受ける機会がありません。
このように、国の教育方針が日本人の投資意欲の低さにつながっていると考えられます。
日本人の国民性
日本人は「みんなと同じだと安心」と考える傾向にあります。この考え方に賛否両論はありますが、そういう国民性なのは間違いありません。
この国民性を端的に表した話があります。
- アメリカ人の客:「飛び込めばヒーローになれますよ」
- イタリア人の客:「海で美女が泳いでいますよ」
- イギリス人の客:「紳士はこういうとき海に飛び込むものです」
- ドイツ人の客:「規則なので海に飛び込んでください」
- 日本人の客:「皆さんもう飛び込みましたよ」
この話からわかるとおり、日本人の場合、「みんなと同じ」ということがその人の行動を決める要因になり得るのです。
上述のとおり、日本人の多くは投資に興味がありません。そのため、「みんな投資なんてしていないから私もしない」という理由で、投資から離れていくのです。
このように、「国の方針」と「日本人の国民性」が大きく影響して、多くの日本人は投資に興味を持たないのです。
日本人に投資を促す最善の方法
日本人が投資に消極的な理由の一つに「国民性」を挙げました。ただ、この国民性は強力な力を発揮することがあります。
なぜなら、まわりの人たちが急に資産運用を学んだり実践したりし始めたら、「投資に興味がない」といっている人の心境も間違いなく変わるからです。
私はこのサイトを通じて、多くの日本人に資産運用をしてほしいと考えています。少子高齢化で悲観的なイメージが広がる日本において、資産運用は明るい将来をもたらす可能性があるからです。将来に希望を持つ人が増えれば、日本も元気になるはずです。
ここまで読んだあなたは、ぜひ資産運用を始めてみてください。また、すでに始めている人は、まわりに資産運用をしていることをそれとなく伝えてください。それが日本を元気にする小さな一歩になると思っています。
金融庁も国民に向けてさまざまなメッセージを発しています。時間はかかりますが、金融庁やこのサイトからのメッセージが多くの人に伝わることを願っています。
まとめ
- 日本の一般家庭では、欧米の一般家庭に比べて株式・投信の保有割合が少ない。そのため、世帯の資産があまり増えていない。
- 日本人が投資に消極的な理由は「国の方針」と「国民性」である。
- 少子高齢化で悲観的なイメージが広がる日本において、資産運用は明るい将来をもたらす可能性がある。
今回は、日本の一般家庭の資産状況と日本人が投資に消極的な理由を解説してきました。また、日本人に投資を促す最善の方法についても述べました。
もちろん資産運用には損をするリスクがあります。ただ、リスクをコントロールすることは可能です。損をするリスクを抑えつつ、資産運用によって明るい将来を一緒に目指しましょう。