現役で働く日本人の中には、老後の生活に不安を抱えている人がたくさんいます。国の財政問題が原因で、増税や社会保障の削減が加速する可能性があるからです。
そのため、若い頃から資産運用をして老後の資産を構築している人がいます。このサイトを読んでいるあなたも資産運用に興味があるのではないでしょうか。
ただ、資産運用といっても株、FX、債券などさまざまな投資対象があります。やみくもに投資をしていては、思ったようなリターンを得られないどころか損をしてしまう可能性もあります。
そこで今回は、日本の現状を復習した後、老後に備えた資産運用を行うときの考え方について過去の歴史を紐解きながら解説していきます。数十年にわたる資産運用を行う上でとても大切な考え方なので、内容をしっかりと理解するようにしましょう。
預貯金だけでは老後の生活は安心できない
まずは日本の現状について確認しておきましょう。
日本は1,000兆円以上の借金を抱える借金大国です。借金の規模は、他の国々と比較しても群を抜いています。
他国と借金の規模を比較するとき、借金の金額だけでなく、その国の経済規模も指標にします。経済規模はGDP(国内総生産)で表します。そこで、「借金÷GDP」を計算して「借金がGDPの何倍にあたるか?」を他国と比較するのです。
IMF(国際通貨基金:金融の安定化を目的とした国連の機関)が2017年に発表したデータによると、日本の借金はGDPの約2.5倍になります。この値は断トツで世界一位です。ちなみに、2位のギリシャは約1.8倍、3位のレバノンは約1.5倍です。世界経済の中心であるアメリカは約1.1倍で15位です。
このように、日本は世界一の借金大国なのです。
これほどの借金大国でありながら、なぜ日本は破綻しないのでしょうか? その理由は、国民が預貯金を通じて日本の国債を買いまくっているからです。
日本国民の総資産は約1,800兆円といわれています。国民が国債を買い支えているため、1,000兆円を超える莫大な借金にも耐えることができているのです。
しかし、このまま借金問題を放置するわけにはいきません。国の借金が国民の総資産を上回る日がいずれ訪れてしまうからです。
そうならないように、日本政府は今後も「増税」や「社会保障の削減」など、さまざまな政策を実行せざるをえません。当然、国民の生活は徐々に苦しくなっていくでしょう。
老後に備えた資産運用ではリスクを取りすぎてはいけない
このような将来を容易に想像できるため、老後に備えた資産運用を検討している人が増えてきています。ただ、「資産運用」といっても、株、投資信託、FX、仮想通貨、不動産などさまざまな投資対象があります。
老後に備えた資産運用では、ただやみくもに投資をしてはいけません。私は普段から株式投資をしていますが、老後のための資産運用では、株式投資とはまったく違った考え方で資産運用をしています。
現役世代と違って、老後は定期収入が減ってしまいます。そのため、老後に備えた資産運用ではリスクを取りすぎてはいけないのです。また、数十年という先を見据えた長期の資産運用になります。したがって、リスクを抑えた上で長期的に値上がりするような投資対象を選ぶことが重要です。
それでは、具体的にどのような投資先を選べばよいのでしょうか? そのヒントは歴史を紐解くことで見えてきます。
歴史に学ぶ投資戦略
これからの長期投資を見据えたとき、私たちが参考にしなければならないのはイギリスの歴史です。
日本と同じ島国のイギリスは、18世紀に産業革命を迎え、世界経済の中心として栄えていました。しかし第二次世界大戦後、世界経済の中心はアメリカに移り、イギリスの経済は少しずつ衰退していきました。
イギリスが衰退する一方、同じ時期に急速に経済を発展させたのが日本です。日本は戦後、高度経済成長期(1954年~1973年)を経て、アメリカに次ぐ世界2位の経済大国になったのです。
1954年の日経平均株価はわずか350円でした。ところが、高度経済成長期を経た1989年には38,915円を記録しました。35年間でなんと112倍になったのです。もちろん物価も上がっているので、単純に資産価値が112倍になったわけではありませんが、それでも経済が大きく発展したことがわかります。
また、「日本の繁栄」と「イギリスの衰退」が影響して、日本円の価値がイギリスポンドに比べて大きく上昇しました。1954年の為替レートは「1ポンド=1,000円」でしたが、1989年の為替レートは「1ポンド=250円」です。つまり、ポンドに対する円の価値は約4倍になったのです。
もし、当時のイギリス人が100ポンドを日経平均に投資していたらどれくらいの利益を得られたでしょうか?
- 1954年の投資資金は100ポンド(=当時の為替レートで10万円)です。
- 1989年には日経平均が112倍になったので、10万円 × 112 = 1,120万円になります。
- 1989年の為替レートでポンドに戻すと、1,120万円 ÷ 250 = 44,800ポンド になります。
つまり、最初の投資資金の448倍に膨れ上がったことになります。
このように、日本の経済発展と為替レートの影響で、資産価値は大きく膨れ上がるです。
現代の日本の状況は当時のイギリスに似ています。そのため、当時のイギリス人の立場に立つことで今後の投資戦略が見えてくるはずです。
数十年後を見据えた資産運用のポイントは「国際分散投資」である
当時のイギリス人の立場に立てば、「外貨を準備して、これから経済が発展する国に投資する」という考え方が重要であることがわかります。
経済が発展する国は人口が増える国です。人口が増えれば、必然的に人々の消費活動や生産活動が活発化するため、経済が活性化するのです。そのため、今後人口が増える国や地域を主な投資対象にすればよいのです。
このように考えると、日本は投資対象としてあまり魅力的ではありません。少子高齢化の影響で、人口が減っていくからです。国立社会保障・人口問題研究所の報告によると、2053年には1億人を割って9,900万人(65歳以上の老年人口 38%)になると予測されています。
日本は人口減少に伴って国力も低下していくでしょう。そのため、第二次世界大戦後のイギリスが経験したように、今後は円安になる可能性が高いです。
一方、世界の人口は今後も増え続けます。2060年には100億人を超えると予測されています。そのため、日本とは違って世界経済は今後も順調に発展していくと予想されています。特に、東南アジア、南アメリカ、アフリカなどの新興国は、将来的に経済が成長していくでしょう。
ただ、投資をするときは一つの国に集中して投資をしてはいけません。集中投資は資産運用においてとても危険な行為だからです。その国が紛争などに巻き込まれたら、経済が発展するどころか停滞する可能性もあるのです。
そのため、さまざまな国や地域を投資対象とした国際分散投資を行いましょう。資産運用全般にいえることですが、「分散投資」は、失敗するリスクを低く抑えるための重要なキーワードなのです。
また、経済の発展を見据えて投資するため、投資期間は当然長期になります。1年や2年くらい投資したからといってたいしたリターンは期待できません。20~30年後のリターンを楽しみにして長期で運用するようにしましょう。
まとめ
- 日本は世界一の借金大国である。今後も「増税」や「社会保障の削減」が行われるため、国民の生活は徐々に苦しくなっていく。
- 日本人である私たちがこれから資産運用をするときは、第二次世界大戦後のイギリスの状況が大いに参考になる。
- 世界経済に対して長期的に分散投資(国際分散投資)を行うことで、将来大きなリターンを得られる可能性がある。
今回は第二次世界大戦後のイギリスを例に、世界経済に投資するメリットについて説明してきました。実際、私自身も海外の投資信託やロボアドバイザー(AIが資産運用をしてくれるサービス)を利用して、長期的な国際分散投資を行っています。数十年後のリターンを楽しみに、あなたもこれらの資産運用を検討してみてはいかがでしょうか?