銀行や証券会社の窓口に行くと、「新商品」「当社厳選」「おすすめ」などのフレーズが記載されたパンフレットが置いてあります。そして、それらの投資信託を勧められることがあります。また、最近は電話で投資信託の勧誘を受けるケースも増えています。

ただ、販売会社(銀行や証券会社のこと)が積極的に勧める投資信託に関しては、その中身をしっかりと吟味する必要があります。そうしないと、高い手数料を取られて、結局損をする可能性があるからです。

そこで今回は、「新商品」や「当社厳選」の投資信託に注意が必要な理由を述べていきます。また、投資信託を利用した資産運用の基本も紹介します。営業マンのセールストークに流されずに、自分の目で良い投資信託を選べるようになりましょう。

新商品には2つの問題点がある

販売会社のホームページでは「新たに取り扱い始めた投資信託」を積極的にアピールしています。また、銀行の窓口で新しい投資信託を紹介されるケースもあります。

ただ、投資信託においては「新商品=良い商品」というわけではありません。むしろ、新商品には以下に示した2つの問題点があります。

流行に乗った「テーマ型投資信託」や「毎月分配型投資信託」が多い

販売会社にとって、投資信託を売ることで得られる購入時手数料(販売手数料)は重要な収益源です。そのため、販売会社は売りやすい投資信託を積極的に勧めてきます。

そして、売りやすい投資信託の代表格が、テーマ型投資信託毎月分配型投資信託です。しかし、残念ながらこれらの投資信託で長期的に資産を増やすのは難しいです。

テーマ型投資信託
人気のテーマを扱った投資信託のことを「テーマ型投資信託」といいます。

例えば、「中国株ファンド」「バイオ株ファンド」「シェールガスファンド」などの投資信託が該当します。これらは過去に流行したテーマ型投資信託です。

時代の流れに乗ったテーマ型投資信託は、メディアなどで紹介されることがあるため、販売会社としては非常に売りやすいのです。

しかし、テーマ型投資信託は一時的に人気が出ても、ブームが去ると基準価額(投資信託の時価)が急落する傾向にあります。そのため、長期の資産形成には適していないのです。

毎月分配型投資信託
毎月分配型投資信託では、投資信託で得た利益を分配金として毎月受け取ることができます。「毎月お小遣いをもらいながら投資できる」という理由で人気を集めている商品です。

しかし、投資信託で資産を増やしたい場合、分配金は一切必要ありません。分配金を受け取ると投資効率が落ちるため、最終的なリターンが小さくなってしまうのです。

さらに、運用で利益が得られないときは元本を切り崩して分配金が配られます。つまり、自分が預けたお金を返してもらっているだけの状態になるのです。それなのに高い手数料を支払い続けるのは明らかに損です。

このように、営業マンから紹介される新商品は、長期の資産運用に向いていないことが多いのです。

過去の運用実績がわからない

投資信託を買う上で、過去の運用実績は気になります。「基準価額の推移」だけでなく、「目論見書(投資信託の説明書)に記載されない実際の手数料」、「投資信託への資金の流出入」などは、投資信託を選ぶ上で重要な指標となるからです。

売り手にとって新商品は、「データや実績がなくても、営業トークだけで売れる良い商品」かもしれません。しかし、私たち顧客にとって、過去の運用実績のない商品にメリットはないのです。

もし、発売されたばかりの投資信託に魅力を感じた場合は、長く運用されている同じような投資信託がないか探してみるとよいでしょう。

おすすめ商品は「銀行や証券会社にとって都合のよい商品」である場合が多い

「新商品」とは別に、「当社厳選」や「おススメのセレクトファンド」などのようにアピールされている投資信託もあります。

ただ、これらの投資信託に関しても、基本的には疑って話を聞いたほうがよいです。なぜなら、このように推奨される投資信託は手数料が高い場合が多いからです。つまり、「顧客よりも販売会社にとって都合のよい商品」が勧められているのです。

ただ、中には優良な投資信託もあります。そのため、「当社厳選」や「おススメ」といわれている投資信託に関しては、どのような観点で選ばれているのか確認する必要があります。

投資信託は資産運用をプロにお任せする金融商品です。しかし、商品選びまで営業マンにお任せしていてはいけません。無駄な手数料を支払って損をしないように、投資信託の中身をしっかりと吟味する癖を付けましょう。

投資信託を利用した資産運用の基本

最後に投資信託を利用した資産運用の基本を復習しておきましょう。この基本を理解しておけば、「新商品」「当社厳選」「おススメ」などの言葉に惑わされなくなります。

投資信託を利用した資産運用の基本は以下のとおりです。

  • 長期で保有する(10年以上)
  • 手数料の安い投資信託を選ぶ(できれば販売手数料は無料、信託報酬 は1.5%以下)
  • 国内株式、国内債券、海外株式、海外債券など、複数の投資対象に分散投資する
  • できれば積み立てが可能な投資信託(積立投信)を選ぶ
  • 純資産総額が少しずつ増えている投資信託を選ぶ


他にもポイントはありますが、まずはこれらの項目を守っておけば大きく失敗することはないでしょう。そして、これらのポイントを意識すると、「銀行や証券会社で勧められる商品はダメ」と気づくはずです。

ただ、残念ながらこの基本を理解して投資信託を購入している人はあまりいません。特に、長期で保有できない人(=少し損失が出ただけですぐに解約してしまう人)がたくさんいます。

そして、そのような顧客の状況を利用して、次々と新しい商品を作っている金融機関にも問題があります。現状では、「雨後の竹の子」のように次から次へと新商品が作られています。実際、日本では年間500本以上もの投資信託が新しく作られているのです。

販売会社にとっては、投資信託の購入時手数料(販売手数料)が重要な収益源なので、このような状態になるのは仕方ないかもしれません。しかし、「投資信託で長期的に資産形成をする」という正しい考え方を浸透させるためには、金融機関の姿勢も改める必要があると思います。

まとめ

  • 投資信託は「新商品=良い商品」というわけではない。むしろ、長期の資産形成に向かなかったり、過去の運用実績を確認できなかったりするため、新商品は買わないほうがよい。
  • 「当社厳選」や「おススメ」の投資信託は、手数料が高い場合が多い。

今回は、販売会社から積極的にアピールされる投資信託について解説してきました。ただ、最後に紹介した「投資信託を利用した資産運用の基本」を理解しておけば、これらの商品には魅力がないことがわかるはずです。資産運用はプロに任せるとしても、商品選びまで任せないようにしましょう。