投資信託を評価するポイントの一つに「資金の流出入」があります。そして、タイトルにも示したように、「資金の流出入が激しい投資信託」には注意が必要です。特に、資金が流出し続けている投資信託は買わないほうがいいです

そこで今回は、投資信託における「資金の流出入」について述べていきます。投資信託は長期保有が基本なので、安定して運用できる商品を選ぶようにしましょう。

投資信託とは

まずは投資信託という金融商品について復習しておきましょう。

投資信託とは、複数の顧客から集めた莫大な資金をファンドマネージャーと呼ばれる投資のプロが運用する金融商品です(下図参照)。私たち顧客は「ファンドマネージャーにお金を預けて資産運用を任せている状態」といえます。

投資信託のイメージ図

特に、「複数の顧客から集めた莫大な資金」というところがポイントです。例えば、山田さんが100万円を投資信託に投資したとします。山田さんとしては大金を投じたつもりですが、ファンドマネージャーが扱う金額としては100万円では少なすぎます。

しかし、10,000人が100万円を投資すると、その総額は100億円になります。これほどの資金が集まれば、ファンドマネージャーはかなり幅広い銘柄に分散投資することができます。分散投資はリスクを抑えた資産運用の基本なので、たくさんの資金が集まれば安定的な資産運用が期待できるのです。

このように、基本的には「資金が集まる投資信託=良い投資信託」と考えることができます。

月次資金流出入額とは

上述のとおり、私たちは投資信託を購入することで、ファンドマネージャーにお金を預けます。しかし、中には投資信託を解約してお金を返してもらう人もいます。

つまり、投資信託における資金の流出入とは、投資信託の購入と解約のバランスを表しているのです。

  • 資金の流入:投資信託を買う人が多い
  • 資金の流出:投資信託を解約する人が多い


また、資金が流入したからといって、投資先の株価が上がるわけではありません。逆に、資金が流出したからといって、投資先の株価が下がるわけでもありません。そのため、少しくらい資金の流出入があっても投資信託の運用成績には影響しません。

そして、一ヶ月間で資金がどれくらい流出入したかを表しているのが月次資金流出入額です。

私たちは、月次資金流出入額の推移を見ることによって、投資信託にどの程度資金が集まっているか把握することができるのです。

例えば、下の図は「SBI中小型割安成長株ファンド ジェイリバイブ」という投資信託の月次資金流出入額の推移です。2017年は他の年に比べてかなり多くの資金が集まっていますが、2018年に入ると流出し始めていることが読み取れます。

月次資金流出入額の例

このように、月次資金流出入額を見れば、どれくらい資金の流出入があったか確認することができるのです。

資金の流出が続いている投資信託は買わないほうがよい

先ほど、「少しくらい資金の流出入があっても投資信託の運用成績には影響しない」と述べました。

しかし、資金の流出入が激しい場合は、運用成績に影響することがあります。特に、「資金が流出し続けている投資信託」は運用成績に悪影響を与えることがあるので避けたほうがよいです。

資金が流出しているということは、解約している人が多いということです。そして解約する人が多い場合、「基準価額(投資信託の時価)が思うように上がらない」「繰上償還(くりあげしょうかん)になる」などのリスクがあります。以下、順に解説していきます。

基準価額が思うように上がらない

投資信託を解約する人がたくさんいた場合、ファンドマネージャーは大量の現金を用意して返金しなければなりません。現金が足りないときは、株式や債券を売却して現金化する必要があります。

ただ、ファンドマネージャーは値上がりを期待して株式や債券を保有しています。それなのに、解約する人が多いと「本当は売りたくないのに売らなければならない」という状況になってしまいます。

そのため、解約が続いている投資信託では、安値で株式を売却するケースも出てきます。その結果、投資信託の基準価額が思うように上がらないことがあるのです。

繰上償還になる

繰上償還とは、投資信託の運用を途中で終わらせて顧客に返金することです。返金される金額は、そのときの基準価額をもとに計算されるため、場合によっては元本割れをして返金されることがあります。

通常、投資信託には「繰上償還になる基準」があらかじめ設定されています。

例えば、上記の「SBI中小型割安成長株ファンド ジェイリバイブ」の場合、「受益権の口数(顧客が購入した口数の合計)が10万口を下回った場合などは繰上償還となる」と目論見書に記載されています。

繰上償還になるとその時点で運用は終わります。長期運用のメリットを得られないだけでなく、元本割れして返金されることもあるため、顧客としてはあまり嬉しくありません。

このような理由があるため、資金の流出が続いている投資信託は買わないほうがよいのです。

資金の流入が激しい投資信託は様子を見たほうがよい

継続的に資金が集まっている投資信託は、基本的に良い投資信託です。資金が潤沢にあれば、株価が下がった局面で株式を追加購入できるため、株価が上昇に転じたときに大きなリターンが得られるのです。

ただ、短期的に急激に資金が集まっている場合は様子を見たほうがよいです。

例えば、下の図は「ひふみ投信」という投資信託の月次資金流出入額を表しています。2017年3月頃から急に資金が流入していることがわかります。

ひふみ投信の月次資金流出入額

ひふみ投信は藤野英人さんという有名なファンドマネージャーに運用されています。そして、2017年2月に「カンブリア宮殿」というテレビ番組で藤野さんが紹介されたことがきっかけとなり、「ひふみ投信」が大量に買われたのです。

ただ、テレビ番組を見て投資信託を買う人はあまり良い投資家とはいえません。ブームに乗って投資をしているので、少し損失が出ただけですぐに解約する可能性があります。

つまり、短期的に激しく資金が集まっている場合は、すぐに資金が流出していく可能性があるのです。そのため、資金が急に集まっている投資信託の場合は、すぐに購入せずにしばらく様子を見たほうがよいのです。

※ ひふみ投信の場合は運用成績が良かったためか、資金が流出することはありませんでした

※ 今回は詳しく述べませんが、「中小型株に集中投資する投資信託」などの場合は、資金が集まりすぎると運用方針に沿った運用が難しくなります。そのため、そのような投資信託では運用中に販売を停止することがあります。

月次資金流出入額の調べ方

最後に「月次資金流出入額」の調べ方を紹介します。

通常、販売会社(証券会社や銀行)のHPを見れば、自分が調べたい投資信託の月次資金流出入額を確認できます。ただ、販売会社が扱っていない投資信託の場合は調べることはできません。

そこで、ここではあらゆる投資信託を取り扱っている「モーニングスター」というウェブサイトでの確認方法を紹介します。

モーニングスターのウェブサイトの検索窓で目的の投資信託を検索します。今回は「ひふみ投信」を例に調べていきます。

モーニングスターで投資信託を検索

次に、下図のようにファンド名をクリックします。

モーニングスターで月次資金流出入額を調べる

次に、「リターン」をクリックします。

モーニングスターで月次資金流出入額を調べる

すると「月次資金流出入額」の文字が出てくるので、それをクリックして完了です。

モーニングスターで月次資金流出入額を調べる

このように、モーニングスターのウェブサイトを使うとあらゆる投資信託の月次資金流出入額を簡単に調べられます。モーニングスターではさまざまな情報を取り扱っているので、投資信託を買うときは有効活用するとよいでしょう。

まとめ

  • 資金の流出が続いている投資信託は「基準価額が思うように上がらない」「繰上償還になる」などのリスクがあるため、買わないほうがよい。
  • 資金の流入が激しい投資信託は、すぐに資金が流出する可能性があるため、しばらく様子を見たほうがよい。
  • モーニングスターのウェブサイトを利用すれば、簡単に月次資金流出入額を調べられる。

今回は、投資信託における資金の流出入について詳しく解説してきました。特に、資金が流出し続けている投資信託は損をする可能性があるので買わないほうがよいでしょう。逆に、継続的に資金が流入している投資信託であれば、長期的に安定した資産運用を期待できます。