投資信託の中には、購入するときに注意が必要なものがいくつかあります。その中の一つに、「社会貢献につながる」という良いイメージを持たれやすいSRI(社会的責任投資)ファンドがあります。

今回は、SRIファンドの概要とSRIファンドに注意が必要な理由について述べていきます。「投資信託で将来の資産を構築したい」という目的がある場合は、SRIファンドに手を出さないようにしてください。

SRI(社会的責任投資)ファンドとは

SRIは「Socially Responsible Investment」の略で、「社会的責任投資」と訳されます。「社会的責任」という言葉から、なんとなくイメージできるかもしれませんが、SRIファンドは以下のような企業を投資対象としています。

  • 法令順守を徹底している企業
  • 環境問題に積極的に取り組んでいる企業
  • 女性の雇用や役職登用に積極的な企業
  • 仕事と生活を両立して柔軟な働き方を推奨している企業
  • 地域でのボランティア活動に積極的な企業


特に、「環境問題に取り組んでいる」や「地域でのボランティア活動に積極的」などの良いイメージが先行しやすいことがSRIファンドの特徴です。

SRI(社会的責任投資)ファンドを買う前に投資先を確認しよう

「社会貢献活動を行っている企業に投資する」のように、SRIファンドには素晴らしい理念があります。そして、そのような理念に共感してSRIファンドに投資するのはよいことです。

ただ、「投資信託を買って資産を増やしたい」という明確な目的がある場合は注意が必要です。なぜなら、SRIファンドでは資産を増やしにくいからです。端的にいうと、SRIファンドの実態は「手数料の高いTOPIX連動型インデックスファンド」である場合が多いのです。

TOPIX連動型インデックスファンド:TOPIX(東証株価指数)に連動した値動きをするように設計された投資信託のこと。TOPIXに影響を与える銘柄が組み入れられており、信託報酬(手数料の一種)が安いのが特徴。

以下の図を見てください。これは、某SRIファンドとTOPIX連動型インデックスファンドの組み入れ上位銘柄を比較したものです。

SRIファンドとTOPIX連動型インデックスファンド

上位10銘柄のうちなんと7銘柄が両者で共通しているのです。また、残りの3社(日立製作所、東海旅客鉄道、三菱電機)はいずれも有名な大企業です。

このように、SRIファンドの投資先は大企業が中心となっていることが多いのです。そのため、その値動きはTOPIX連動型インデックスファンドとほぼ同じになります。

そして、私が「SRIファンドでは資産を増やしにくい」という理由は、SRIファンドの信託報酬にあります。

図で示した某SRIファンドの信託報酬は1.62%(税込み)です。一方、TOPIX連動型インデックスファンドの信託報酬は0.1%(税込み)です。つまり、ほぼ同じ投資先に投資しているのに手数料がまったく異なるのです。

インデックスファンドの魅力は手数料が安いことです。それなのに、わざわざ高い手数料を支払ってインデックスファンドと同じ銘柄に投資しているのがSRIファンドなのです。

※ すべてのSRIファンドがTOPIX連動型投資信託と同じ企業に投資しているわけではありません

このような理由があるため、SRIファンドを買いたいときは、必ず信託報酬投資先の企業を確認するべきなのです。

SRI(社会的責任投資)ファンドの投資先が大企業になる理由

SRIファンドの運用を行う会社は、企業にアンケートなどを実施して、その結果をもとに投資先の企業を選ぶことが多いです。

ただ、時価総額の大きな会社(大企業)は、ほぼ確実に何らかの社会貢献活動を行っています。そのため、アンケートのように、企業に回答を求める形で調査をした場合、必然的に大企業が選ばれてしまうのです。

私はサラリーマン時代に某有名企業に勤めていました。その企業は、法令順守の徹底はもちろんのこと、ISO14001(環境への配慮が認められた組織に与えられる認証)を取得して環境への配慮を地域にアピールしていました。

また、社員に有給の取得を奨励していましたし、地域でのボランティア活動にもかなり積極的でした。実際、私も数ヶ月に一度、休日に地域の小学校で課外授業を行っていました。さらに、子会社を通じて身体障害者を積極的に採用していたため、各事業所に数名は配属されていました。

このような活動は、私が勤めていた会社だけが行っていたわけではありません。同じ規模の同業他社も似たようなことを行っていました。

このように、大企業はさまざまな社会貢献活動を行っているのが実情です。そのため、企業アンケートのような形で投資先を選んでいるSRIファンドは、投資先が大企業に偏ってしまうのです。

まとめ

  • SRIファンドとは、社会貢献活動や法令順守、環境への配慮などに積極的な企業を投資対象とした投資信託である。
  • SRIファンドには良いイメージを抱く人が多い。そのため、イメージだけで投資してしまう人がいる。
  • しかし、SRIファンドの実態は「手数料の高いインデックスファンド」であることが多い。そのため、SRIファンドに投資しても資産を増やしにくい。

今回は、SRIファンドについて解説してきました。SRIファンドの実態が「手数料の高いインデックスファンド」であることに驚いた人もいるでしょう。

「投資信託で資産を増やしたい」という目的がある人は、イメージや商品名(愛称)だけで判断して投資するのではなく、投資信託の中身をしっかりと確認する癖を付けましょう。そのような確認作業は、投資信託に限らずあらゆる資産運用で重要になります。