私は普段から株式投資を行っていますが、老後に備えた資産運用では投資信託を利用しています。なぜなら、投資信託は株式投資よりもリスクが低く、時間をかけて安定的に資産を増やすことができるからです。

ただ、投資信託を買っている人の中には、少し損失を抱えただけですぐに解約してしまう人がいます。これはとてももったいない行為です。

そこで今回は、投資信託で損失が生じたときにすぐに解約する人の心理について解説していきます。また、その対策として長期の積み立て投資が有効である理由を述べていきます。今回の内容をしっかり理解して、せっかく買った投資信託をすぐに解約しないようにしましょう。

人間の脳は資産運用に向いていない

人間の脳は基本的に資産運用に向いていません。私は10年以上資産運用を行っていますが、それでも「人間の脳は資産運用に向いていない」と感じています。

その理由を「資産運用に慣れていない人」と「資産運用に慣れている人」に分けて解説していきます。

資産運用に慣れていない人は元本割れが嫌い

日本人は元本が保証された預貯金に慣れすぎています。

預貯金は基本的に元本割れをしません。あなたが銀行に預けた100万円が99万円に減ってしまうことはないのです。そのため、預貯金で損をすることはありません(物価の上昇を考慮すると損をする場合もありますが、ここでは省略します)。

一方、資産運用では元本割れすることがあります。そして、資産運用を始めたばかりの初心者は、元本割れにとても敏感です。これは「投資における恐怖心」とは少し意味合いが違います。初心者は「1円も損をしたくない」という気持ちで資産運用をしてしまうのです。

その背景には「元本割れするくらいなら、今まで通り銀行預金をしておけばよかった」という心理が働くからだと思います。「リスクを取るからこそリターンが得られる」という資産運用の基本原則を理解できていないのです。

このように、多くの初心者は「元本割れが嫌い」です。ただ、資産運用にリスクは付きものなので、このような心理は資産運用を行う上で弊害になってしまいます。

資産運用に慣れている人にも「恐怖心と欲」がある

資産運用に慣れている人は多少の元本割れを受け入れることができます。しかし、そのような人の心にも「損失を恐れる恐怖心」と「もっと儲けたいという欲」が同居しています。もちろん、私にも「恐怖心と欲」はあります。

そして、「恐怖心と欲」が強いと「高いときに買って安いときに売る」という非合理的な行動を取ってしまいます

例えば、Aさんがある投資信託に100万円を投じたとします。ところが、世界経済が不況に陥り、その投資信託が70万円に値下がりしてしまいました。このとき、多くの人は「大丈夫か?」「もっと損失が膨らむのでは?」という恐怖心に負けて、投資信託を解約してしまいます。つまり、安くなったときに売ってしまうのです。

逆に、世界経済が好調で投資信託が130万円に値上がりしたとします。このとき、多くの人は「この流れに乗り遅れたくない」「もっと儲けたい」という欲が出てきて、その投資信託を購入します。つまり、高くなったときに買ってしまうのです。

資産運用で利益を得るためには、株でも投資信託でも、「安く買って高く売る」ことが基本原則です。ところが、「恐怖心と欲」のせいで、まったく逆の行動を取ってしまうことがあるのです。

このような「恐怖心と欲」のことを「心理的な罠」と表現することもあります。いずれにしろ、これらの感情によって「高く買って安く売る」という非合理的な行動を取ることがあるため、人間の感情は資産運用に向いていないのです。

「感情の影響」を排除して資産運用を行う方法

ここまで、人の感情がいかに資産運用に向いていないか述べてきました。

しかし、これらの感情を無視して機械的に資産運用を行えば、大きな利益を得られる可能性があります。そのために有効なのが「長期投資」と「積み立て投資」です。以下、これらの運用方法について解説していきます。

長期投資

上述のとおり、初心者の多くは元本割れを嫌います。ただ、「投資信託による資産運用は10年以上の長期運用が基本」と認識しておけば、いちいち元本割れを気にしなくなります。

そして、優良な投資信託(世界経済に分散投資をする投資信託など)を10年以上の長期で保有すれば、高確率で利益を得ることができます。つまり、元本割れをほぼ確実に回避できるのです。

なぜなら、世界経済は今後も少しずつ発展することが予想されているからです。世界の株式や債券に分散投資をしておけば、世界経済の成長に合わせて長期的に利益を得られるのです。

実際、投資情報を提供しているIbbotson社の過去のデータによると、世界経済への分散投資を10年間続けた場合、必ずプラスのリターンが得られることが示されています。1999年~2008年の10年間(10年目にリーマンショックが発生)でも、約10%のリターンが得られているのです。

優良な投資信託の価格は上昇と下降を繰り返しながら少しずつ伸びていきます。そのため、投資信託を買った直後は元本割れをする可能性もあります。しかし、10年以上の長期で保有すれば、高い確率でプラスのリターンをもたらしてくれることを理解しておきましょう。

積み立て投資

上述のとおり、資産運用に慣れている人にも「恐怖心と欲」があります。これらの感情を排除して着実に資産運用を行うためには、「積み立て投資」が非常に有効です。

積み立て投資とは、定期的に定額を投資し続けることです。世界経済の状況に関係なく、淡々と機械的に投資を行うのです。そうすることで、感情の影響を一切排除することができます。

そして、定額を投資し続けることによって、運用成績もプラスになりやすくなります。なぜなら、このように投資することで、高値で買う口数を減らして、安値で買う口数を増やすことができるからです(今回は詳細を省きますが、このような運用法をドルコスト平均法といいます)。

実際、私も下記のような複数の商品やサービスを利用して積み立て投資を行っています。

<私が利用している積み立て投資>

  • オフショア(海外の非課税地域)の投資信託
  • ウェルスナビ(人工知能が運用してくれる投資信託)
  • THEO(同上)
  • iDeCo(個人型確定拠出年金)
  • プラチナ


実際にはここまで複数の商品を利用して積み立て投資を行う必要はありません。ただ、何か一つでも積み立て投資を行うことで、老後の資産作りの土台になるはずです。感情の影響を排除するためにも、あなたもぜひ積立投資を検討してみてください。

まとめ

  • 人間の脳は資産運用に向いていない。そのため、感情に左右されながら資産運用を行うと失敗しやすくなる。
  • 感情の影響を排除するためには、「長期の積み立て投資」がベストである。

今回は、資産運用と人の感情について詳しく述べてきました。どんなに資産運用に慣れている人でも「恐怖心と欲」がある以上、感情に左右されると資産運用で失敗する可能性が高くなります。

老後に備えた資産運用では、安定的な運用がとても重要です。そのため、長期の積み立て投資がベストであることをしっかりと理解しておきましょう。