投資信託を買うとさまざまな手数料がかかります。その中でも代表的な手数料が、購入時手数料(販売手数料)と運用管理費用(信託報酬)です。

販売手数料と信託報酬は、他の手数料と比較して金額が大きいため、投資信託を選ぶときはこれらの手数料に十分注意する必要があります。

ただ、実際には販売手数料や信託報酬以外にもたくさんの手数料が発生します。そこで今回は、販売手数料や信託報酬以外の手数料について解説していきます。金額としてはそれほど大きくないかもしれませんが、どのような費用が発生するか把握しておきましょう。

販売手数料や信託報酬について詳しく知りたい人は以下の記事をご覧ください

>> 投資信託の販売手数料:概要、支払い方法、注意点などを解説

>> 投資信託の信託報酬:概要や運用成績への影響などを解説


販売手数料や信託報酬以外に発生する費用は意外とたくさんあります。それらの出費について「投資信託を保有しているとき」と「投資信託を売るとき」に分けて解説していきます。

投資信託を保有しているときに発生する費用

投資信託を保有している間、「売買委託手数料」「保管費用」「監査費用」などの費用が信託報酬とは別に発生することがあります。これらの費用は私たちが気づかないうちに、信託財産(私たちが預けたお金)から少しずつ差し引かれています。

売買委託手数料 株式などを売買するときに発生する手数料です。
保管費用 海外の株式や債券に投資する場合に必要となる費用です。
監査費用 投資信託では、運用や管理の仕方について監査法人の監査を受けることが義務付けられています。そのための費用が監査費用です(監査費用は信託報酬に含まれる場合もあります)。

これらの費用のうち、売買委託手数料と保管費用は運用の結果として発生する費用なので、いくらかかるか事前にはわかりません。実際の費用は定期的に発行される運用報告書で確認するしかないのです。

例えば、以下の図は「ひふみプラス」という投資信託の運用報告書の一部です。

運用報告書_費用明細

このように、運用報告書には投資信託を保有している間にかかった費用について細かく記載されています。信託報酬に比べると料率は低いですが、気になる人は運用報告書を確認するようにしてください。

投資信託を保有しているときに発生する税金

投資信託を保有しているときに分配金を受け取った場合、その分配金に対して20.315%(所得税 15.315%、住民税 5%)の税金がかかることがあります。通常、税金が源泉徴収された(天引きされた)あとのお金を受け取るため、確定申告をする必要はありません。

ここで分配金の種類について説明しておきます。分配金には普通分配金特別分配金の2種類があります。税金に関しては、これらの分配金の違いをしっかりと理解しておく必要があります。

普通分配金 投資信託の運用益から投資家に分配されるお金です。利益から支払われているので税金がかかります。
特別分配金 分配金は常に運用益から支払われるとは限りません。運用成績が悪いときは、元本を切り崩して分配金が支払われるのです。この場合、あなたが投資信託に預けたお金を切り崩しているだけなので税金はかかりません。

この「特別分配金」という名称は顧客に誤解を与えることが多いため、「元本払戻金(がんぽんはらいもどしきん)」と呼ばれることが増えています。

このように、利益が分配される普通分配金には税金がかかります。しかし、元本を切り崩している特別分配金には税金がかからないことを覚えておきましょう。

投資信託を売るときに発生する費用

投資信託を解約して売るときは、信託財産留保額と解約手数料がかかる場合があります。ただ、ほとんどの投資信託では解約手数料は無料になっているので、ここでは信託財産留保額について解説します。

信託財産留保額 投資信託を解約するということは、運用会社に株式や債券の一部を売却してもらうということです。そのとき、どうしても売買手数料がかかってしまいます。このときの売買手数料は信託財産(顧客が預けた資産全体)から支払われます。

解約する人の都合で信託財産が目減りすることになるため、その分のコストを補填するために信託財産留保額が徴収されます。通常、預け入れ資産の0~0.5%が投資信託の売却代金から差し引かれます(信託財産留保額がかからない投資信託もたくさんあります)。

なお、投資信託を売るときは「解約」の代わりに、「買取」を依頼することもできます。これを買取請求といいます。

買取請求とは、あなたが保有している投資信託を販売会社(銀行や証券会社)に買い取ってもらうよう依頼することです。投資信託を解約するわけではないので、運用会社は株式や債券を売却する必要がありません。

このように書くと「販売会社に買い取ってもらった場合、信託財産留保額を払わなくてもいいのでは?」と思うかもしれません。

しかし、残念ながら信託財産留保額は徴収されます。いずれ販売会社が解約するときに発生する信託財産留保額をあらかじめ私たちが負担する必要があるのです。

したがって、「解約」あるいは「買取」のいずれの場合でも、信託財産留保額は発生するのです(信託財産留保額がかからない投資信託もあります)。

投資信託を売るときに発生する税金

投資信託の運用で儲かった場合、つまり「投資信託に投資した金額」よりも「投資信託を売却して得た金額」のほうが大きい場合は、利益に対して20.315%の税金がかかります。

ただ、確定申告が必要かどうかはケースバイケースです。例えば、NISA口座(運用益が非課税になる口座)や特定口座(税金の源泉徴収をしてくれる口座)で投資信託を管理していた場合、確定申告は不要です。

もし、確定申告が必要かどうか迷ったときは、販売会社に問い合わせるようにしましょう。

まとめ

  • 投資信託を保有している間は、売買委託手数料、保管費用、監査費用などのコストが信託報酬とは別に発生する。
  • 普通分配金には税金がかかるが、特別分配金(元本払戻金)には税金はかからない。
  • 投資信託を解約するときに、信託財産留保額が必要となる場合がある。また、投資信託で利益を得た場合は、税金を支払う義務がある(ただし、NISA口座で投資信託を管理していた場合は税金の支払いは不要)。

今回は、販売手数料や信託報酬以外の費用について解説してきました。意外と多くの手数料があることに驚いた人がいるかもしれません。また、運用で利益を得た場合は必要に応じて確定申告をするようにしましょう。